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中国G20、「オバマ冷遇」の真相は

登録:2016-09-07 02:05 修正:2016-09-07 07:54
儀式や警護、事前準備で整理がつかず混乱 
習近平、肝心の首脳会談ではオバマ「歓待」 
良い印象与えるため、杭州の交通状態など整え 
3日、主要20カ国(G20)首脳会議に向け中国杭州に到着したバラク・オバマ米大統領が飛行機から降りている=杭州/新華社、聯合ニュース

 中国・杭州で開かれた主要20カ国首脳会議(G20)2日目の5日、北京では外交部報道官の定例ブリーフィングがありました。毎日行われる行事ですが、この日最も多くの時間が割かれたテーマは、欧米メディアがすでに数多く報道した「オバマ冷遇」問題でした。

 華春瑩報道官の言葉です。「この2日間、米メディアがバラク・オバマ大統領の杭州空港到着当時、(中米)双方の実務者間で発生したエピソードを歪曲し、さらに若干の推測と連想まで加えた。私が思うには、各メディアは「ファクト」を明確に知っていながらニュースを編集し、推測や連想を付け加える方法は職業的でない。欧米の各メディアが傲慢で独善的という印象を与えるだけだ」

 振り返ってみます。オバマ大統領が搭乗した米国の「エアフォースワン」機が3日午後(現地時間)、杭州空港に到着しました。しかし、他国の首脳や首脳クラスに提供された移動式ステップがありませんでした。周知のとおり、オバマ大統領は機体の下の非常用格納式ステップで降りました。

 別途に車で運び飛行機につけるステップは、いわゆる「レッドカーペット」が敷かれていますが、機体付属のステップはただの鉄の塊です。機体のステップは胴体の下側に付いているので、地面までの距離も短いのです。そのため、オバマ大統領は飛行機のドアから出て手を振り、レッドカーペットを踏んでゆっくり降り、それを下にいる人々がじっくり見守るというプロセスがありませんでした。

 一方、他の首脳はすべて移動式ステップで杭州の地を踏みました。尖閣諸島(中国名・釣魚島)問題や歴史問題、南シナ海問題などで衝突を繰り返している日本の安倍晋三首相も、最近、高高度ミサイル防衛(THAAD)配備で緊張関係が形成された韓国の朴槿恵(パククネ)大統領も、中国が参加する原発建設計画の取り消しにより関係がぎこちなくなった英国のテリーザ・メイ首相も、みなレッドカーペットの上を歩きました。米共和党大統領選候補のドナルド・トランプ氏は、自分がそのような待遇を受けたら「友よ、私もあなたたちをとても尊重するが、ドアを閉めてください。早く出発しましょう」と言うだろうと述べました。

 その詳しい事情について、ニューヨークタイムズと香港のサウスチャイナ・モーニングポストが、それぞれ米国と中国当局者の話を引用して報道した記事が目立ちます。まず米国側の話です。米国は大統領の外国歴訪時、常に自主的に専用の移動式ステップ車を持ち運ぶとのことです。今回の杭州でもこのステップ車を使用する予定であり中国側も同意していたのですが、後に中国が態度を変え空港に用意されたステップ車を使うようにと指示したとのことです。しかし、米国側はステップ車の中国人運転手が英語ができなかったため、ホワイトハウス関係者と基本的な意思疎通ができなかったとし、このような状況で車がエアフォースワンに接近することに難色を示しました。英語が可能な運転者を要求しましたが、中国は拒否したといいます。そこへエアフォースワンが着陸し、中国は一歩引いて米国にいつも持ち運んでいるステップ車を使うよう言いました。しかし米国側は計画を転換する時間が足りなかったとのことです。

 今度は中国側の話です。中国当局は、今回の首脳会議出席のために杭州を訪問したすべての首脳と首脳クラスの要人に移動式ステップ車を提供したと強調します。ただ米国だけが運転手に対する不満を示し、中国は運転手の横に通訳士を座らせると言いましたが、米国がそれすらも断ったということです。双方の話を総合して整理すると、「オバマ大統領の杭州訪問を控え、儀式や警護など事前準備の段階で中米双方が互いのステップ車を使わなければならないと主張し、いざこざの途中でエアーフォースワンが到着し、議論が整理できていない状況で機体に付いている自分の階段を使った」といえるようです。

 実際考えてみれば、中国があえてあからさまにオバマ大統領を冷遇する理由はありません。オバマ大統領は到着後、習近平国家主席と首脳会談を持ち、そのときの習主席の表情は、今回の首脳会議期間に会った他の誰との会談よりも明るく見えました。華春瑩報道官が言うとおり「来た方々はみな客人」だが、オバマ大統領はその中でも特別な客人であることが明確になりました。

 中国はまた、今回の首脳会議を通じて、全世界に良い印象を与えるために非常に気を遣いました。当局は1~7日に休暇を実施し、杭州市内は閑散としており、普段は北京とともに全国1、2位を争う交通渋滞は完全に解消されました。近隣地域の工場稼動も中断し、空気もきれいにしました。新しい道路や歩道、よく見える建物、貧困層の住居地域など都市のあちこちをきれいに新しく整えました。こんなにも美しく準備を整えたのに、全世界が注目する米大統領にわざと恥をかかせたというのも説得力がないように思えます。

 オバマ大統領本人は、問題がこれ以上拡大解釈されないことを願うという立場を明らかにしましたが、全世界的に影響力の大きい欧米メディアがこの問題を集中して報道し、首脳会議そのものよりは「ハプニング」に近いこの事件がさらに注目を浴びることになります。国際関係の専門家である時殷弘・人民大学教授はこのように言います。「米国が大統領の外国訪問に関するすべてのセキュリティ問題を管理しようとするならば、それは正常な外交行為から外れている。そうしたとしても、中国現地の事情にはそぐわず、最善の結果を生み出すことはできないだろう」

 今回の事件を見ると、大きな行事を控えた中国も間違いなく緊張したようです。オバマ大統領の到着前、中国側のセキュリティ要員が空港で米国記者団や当局者と衝突を起こしたとのこと。逆に欧米メディアも浮上する中国を見て常に敏感になっています。欧米メディアの見解にはいつもそのような緊張感がにじみ出ているという話も時折出ます。中国と欧米がこのように緊張した状況で、中国を眺める私たちの見方ははたしてどうなのか、いろいろ考えさせられます。

杭州/キム・ウェヒョン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)

韓国語原文入力:2016-09-06 18:55

https://www.hani.co.kr/arti/international/china/760157.html 訳M.C

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