原子力発電所から出た使用済核燃料を再処理する“夢の技術”として韓国で宣伝され、韓国と米国が共同研究中の「パイロプロセシング」技術が、4大河川に次ぐ費用が投入される反面、利益はなく、新たな問題を生むだけだと批判されている。
米国の非営利団体「天然資源防御委員会」(NRDC)で活動する核物理学者カン・ジョンミン研究委員は5日(現地時間)、ワシントン特派員懇談会などを通して「いくら保守的に捉えても、現在韓国で計画しているパイロプロセシング関連施設には18兆~22兆ウォン(1.6~1.9兆円)かかるだろう」とし「4大河川に次ぐブラックホールになるだろう」と見通した。カン氏は、パイロプロセシングで博士学位を受けたこの分野での最高の客観的な専門家の1人に挙げられる。
パイロプロセシングは、軽水炉などの原子力発電所で燃焼して出される燃料(使用済核燃料)から残ったウラニウムとプルトニウムを抽出する技術で、抽出過程を経て作った燃料を「次世代原子炉」と呼ばれる高速炉で再燃焼させリサイクルする。このため再処理過程(パイロプロセシング)施設、核燃料製造施設、高速炉が不可欠だ。現在、韓国政府は使用済核燃料100トンを処理できるパイロプロセシング施設を2025年までに、ナトリウムを冷却材として使うナトリウム冷却高速炉を2028年までに竣工することを計画している。
カン氏は政府が計画する規模のパイロプロセシング施設に5千億~1兆ウォン(430~870億円)、核燃料製造施設にも5千億~1兆ウォン、高速炉に3兆ウォン(2600億円)、約30年間の運用費用に12~15兆ウォン(約1~1.3兆円)、廃炉費用に2兆ウォン(1700億円)以上かかると推算した。カン氏は「これは設計費用と推算したものだけ」とし「海外の事例を見れば、実際の施設建設と廃炉にはより多くの費用が必要になる」と強調した。
カン氏は、パイロプロセシングと高速炉を活用する場合、放射能毒性を1000分の1水準に減らすことができ、高水準廃棄物処理場の面積も100分の1に縮小できるという政府と原子力界の広報性主張にも、こう反論する。「使用済核燃料処理場の面積を減らすには、放射性物質汚染の主原因であるセシウム137とストロンチウム90を分離しなければならないが、これを保管するための施設を作る過程で費用はもちろん危険性がはるかに高まる」。セシウム137は1986年のチェルノブイリ事故で総放出放射能の3分の2以上を占めた極めて危険な放射性核種に分類される。カン氏は「韓国の原子力学界の内部議論でも、パイロプロセシングの長所として挙げられている事項に対して異見が出されている」と紹介した。
カン氏はさらに、「米国では90年代以後、パイロプロセシング研究を事実上中断した」と語り、「高速炉も過去60年間にわたり米国、英国、フランス、ドイツ、日本が100兆ウォン(約9兆円)以上の費用を投資したが、商用高速炉の開発には失敗した」と指摘した。にもかかわらず、韓米が2011年から2020年までの10年間、パイロプロセシングを共同研究することで合意したことに対して、カン氏は両国政府および原子力界の利害関係が合致したためと判断していると明らかにした。