登録 : 2015.10.13 23:28 修正 : 2015.10.17 12:01

在日朝鮮人小説家の金石範氏

在日朝鮮人作家の金石範氏 =キル・ユンヒョン特派員//ハンギョレ新聞社

 「解放空間の歴史をきっちり立て直さなければならない。そうでなければ4・3問題は解決しない。もう齢九十なのに、こんな老人がいつまでその話をし続けなければならないのか」

 10日午後、東京郊外のある居酒屋で会った在日朝鮮人小説家の金石範(キム・ソクボム)氏(90)は憤懣やるかたない様子だった。 彼は今週ソウル行き飛行機に身を乗せる予定だった。東国大日本学研究所が済州(チェジュ)4・3事件に関する彼の記念碑的大作『火山島』の翻訳作業を終え、16日に「在日ディアスポラ文学とグローバリズム」というタイトルの記念シンポジウムを開くことにし、招請を受けたからだ。 しかし今回が最後になるかも知れない彼の故国訪問はついに実現しなかった。「理由は私の推察だが、去年の春に私が済州『4・3平和賞』授賞式に参加して行った演説の内容が問題になったんだろう」

 彼は今年4月の授賞式の席上で「憲法前文は『大韓民国は3・1革命の偉大な独立精神を継承する』と標ぼうしたが、李承晩(イ・スンマン)政権は親日附逆派、民族反逆者勢力を基盤に構成され、3・1運動によって建設された臨時政府の法統を継承できるか』と“直撃弾”を飛ばした。この発言が公開された直後、ハ・テギョン議員(セヌリ党)が「左右の理念論争を超え、大韓民国の建国と存在自体を否定する反大韓民国的な発言」という報道資料を出し、これを受けて保守メディアが「(彼の受賞所感は)北朝鮮がしてきた主張そのまま」(朝鮮日報)、「大韓民国を“民族反逆者が作った政権”だと蔑視した人に国民の税金で賞金を与えることは見過ごせない」(東亜日報)などと猛攻を浴びせた。 韓国の近現代史で最も激しい理念対立の争点である「李承晩政権の正統性問題」に正面から触れ、朴槿恵(パク・クネ)政権の“心気”に触れたようだった。

16日の東国大シンポジウムに参加する予定
韓国政府の「入国拒否」で帰国できず
「4月の“4・3平和賞”受賞演説が理由」
「李承晩政権の正統性議論」は不敬罪?
1988年『火山島』出版以来13回訪韓
「国の度量がこんなでは…」ついに落涙

 金石範氏がこの問題を提起したのは、1945年の8・15解放後に4・3事件が起き、南北が分かれることになる48年までの「解放3年史を正しく見なくては4・3の悲劇を正しく理解できない」という彼の持論のためだ。

 「南韓のみの単独政府、反共が国是の大韓民国を世界に誇示するために、済州島をアカの島に追い立てた。我々は解放直後に親日附逆派の清算ができず、その土台の上に李承晩政権が成立した。そこへ親日派が親米派に変わり、済州で4・3という悲劇が起きた。 4・3は解放空間の歴史がよじれて発生したものなので、李承晩政権と結び付けて理解しなければならない」

 このような理解の延長線上で金錫範氏は「済州4・3は内外の侵攻者(米軍と親日附逆派)に対する防御抗争であり、民族独立解放闘争の精神に基づく祖国統一のための愛国闘争」という主張を曲げていない。

 事実、金石範氏の入国を巡る軋轢は1988年まで遡る。その年の7月、金石範氏は実践文学社で一次翻訳を終えた『火山島』の出版に合わせ訪韓を準備していた。 しかし韓国政府は彼が60年代末まで総連の機関紙の朝鮮新報の記者だった点を挙げ、また「わが祖国は南でも北でもない統一朝鮮半島」という信念を守るため朝鮮籍(日本では無国籍として扱われる)を維持しているという理由で入国を許可しなかった。 しかし、韓国社会が民主化されたことにより彼は今までに13回も故国の土を踏むことができた。 金石範氏の入国を基準として見るなら、韓国社会は再び軍事独裁がなされた88年以前に戻ったわけだ。

 金石範氏は自身に対する世間の誤解とは異なり、「現在の大韓民国の正統性を否認するものではない」と話した。 彼は「87年の“6月革命”以後に改正された憲法には『3・1運動で建設された大韓民国臨時政府の法統を継承する』という文言があり、盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領の2005年の3・1節演説には『上海臨時政府から今日の参与政府に至る大韓民国の正統性の根元になった」という話がある。 そのような意味で現在の大韓民国政府には正統性がある」と話した。 彼が否定するのは4・3を起こして済州島を血の海にし大韓民国を分断へと推し進めた親日附逆派勢力であって、韓国民衆の民主化闘争で生み出した現在の大韓民国ではないということだ。

 「昔、我々が若かりし頃には、こんなことになるとは思わなかった。畜生!(民族の分断が)すでに70年だね。私は4・3をなぜこれほど一生かけて深く掘り下げてきたのか?」。二時間にわたり熱情的に語った老作家の目には最後は涙があふれてしまった。「我々が解放されてからこんなに経つのに、その程度の話もできないとは。国の度量がそんなでは…」

 東京学芸大学の李修京(イ・スギョン)教授(歴史社会学)は「金錫範先生の入国を拒否した大韓民国の姿を見れば、偏見と差別の中でも韓民族を希望として眺めて生きてきた同胞たちの恨多き人生をいとも容易に無視したり捨ててしまえという姿に見えて残念だ。 大韓民国がこれほど器が小さくては、どうやって今後700万の海外同胞を抱えて韓半島の平和統一を準備できるのか」と話した。さらに李教授は「金石範先生のように総連から出てきた在日同胞や朝鮮籍を維持している若い同胞を大韓民国が抱えなければならない」として「金石範先生の意見に対する賛否と入国拒否は別の問題であり、私たちの同胞を再び棄民にするような不幸を繰り返してはならない」と力説した。

東京/キル・ユンヒョン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2015-10-13 19:20
http://www.hani.co.kr/arti/international/japan/712650.html 訳J.S(2564字)

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