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[現地ルポ] 「これ以上の緊縮は耐えられない」不安と恐怖を乗り越えたアテネ広場

登録:2015-07-07 21:04 修正:2015-07-08 07:11
開票結果の知らせに“祝祭の場”に変貌
ギリシャ国旗を身にまとい反ナチの歌
「私たちにも責任はあるがEUの責任も大きい
働き口のない青年たちの情緒は頑強」
救済金融債権団の「緊縮」要求に対するギリシャの賛否国民投票で、「反対」が勝利した5日夜(現地時間)、アテネの議会前に集まった「反対論」を支持するある女性がギリシャ国旗を打ち振って喜びを表している=アテネ/AP 連合ニュース

 5日午後7時(現地時間)、国民投票が未だ終わらないうちから人々はアテネの中心街シンタグマ広場に集まり始めた。「憲法」という意味のこの広場は、アレクシス・チプラス首相が緊縮と年金削減を要求する債権団の協議案を国民投票に付すと宣言して以来、「反対(OXI<オヒ>)」票を投じようという側の集会場所になっていた。 「反対」が勝利するだろうという開票結果が伝わると、夜のシンタグマ広場は祭りの場に変わっていった。

 広場の一画では抱き合って「べラ・チャオ」(恋人よ、さようなら)を歌う人々が勝利の喜びを満喫していた。 ナチズムとファシズムに抵抗したゲリラ(パルチザン)の歌で、欧州や南米の左派が好んで歌う抵抗歌だ。 大学生のモハマド氏(21)は3人の友達と一緒に広場に出てきて歓呼した。 彼は「ギリシャが抱えている多くの問題の突破口を探すための決定的な時だ。これで代案と解決策を見出せる希望が生まれた」として、「今変えなければ私たちは今後もずっと欧州連合、特にドイツが望む全てに対して『イエス』と言いながら引かれて行くしかないだろう」と話した。 彼は「ギリシャには働き口がなく、若者達は大学を卒業しても職場を得ようとすれば私のように外国に行かなければならない」という苦悩を率直に話して変化を期待した。

 夜の12時を過ぎると広場の熱気は歓呼でいっそう熱くなった。 人々はギリシャの国旗を身にまとい、思いきり叫び歌った。 夫婦揃って広場に出てきた公務員出身の年金生活者エレクトラ氏(63)は「ほんとうにハッピーな一日だ」と話した。 彼は「投票を控えて露骨に『賛成(NAI<ネ>)』側を支援して投票結果は僅差となるだろうと報道したメディアのために気をもんだが、すべての地域で勝利して嬉しい」として、「この5年間に一層悪化した暮らしの質を考えれば、到底債権団の協議案に賛成する票を投じることはできなかった」と話した。 財閥(オリガルヒ)が掌握したギリシャのマスコミが、石油と薬品が底を突きつつあると不安感をあおり、年金生活者の困難を強調して国際債権団の救済金融延長協議案への「賛成」を誘導したが、これを克服したという話だ。 彼は「パートタイムなど非正規雇用を転々として辛うじて食いつなぎ、生存のために闘っている子供達を見ればかわいそうになる。ギリシャがこんなに惨めになったのには私たちの責任もあるが、欧州連合の責任も大きい。今日の投票結果が非正常的な現在を変えるきっかけになってほしい」と語った。

 予想をはるかに上回るギリシャ人が債権団の追加緊縮要求に反対票を投じた理由はそれぞれ違うだろうが、彼らの言葉の中に共通した一つの理由が見えた。 「もうこれ以上耐えられない。この5年間の緊縮政策等により生活は疲弊したが、こんな政策を続けるということは到底受け入れられない」という断固たる態度だ。 特に、働き口のない若者の間でこうした情緒が強く感じられた。 このような怒りが、ユーロ圏から離脱した場合に経験することになる経済的不安や恐怖を乗り越えさせたように見えた。 債権団はギリシャの国民投票で「反対」はすなわちギリシャのユーロ圏離脱(グレッグシート)を意味すると威嚇し、協議案を国民投票に付したチプラス政権とは信頼が崩れてこれ以上交渉はできないという態度を見せて来た。 このような債権者達に向かって「オヒ(反対)」と叫ぶことは「国家の尊厳を守ることだ」としたチプラス首相の主張が、ギリシャの有権者の心に深く染み込んだように見えた。

 チプラス首相は5日深夜のテレビ演説で「ギリシャ人は連帯と民主の欧州のために投票した」として、「明日にもギリシャは交渉場に復帰するつもりであり、私たちの最優先の関心事はギリシャの金融安定を回復させることだ」と述べた。 彼は今回の投票結果が欧州との決別ではないと強調した。 しかし債権団との交渉テーブルに付いた時、事態がどのように展開するかは分からない。

 賛成票を投じたというステファノス氏(35)は「反対票を投じた人々は、これ以上の緊縮には耐えられないとして、どんな暴風が襲ってくるかについては心配していなかった。しかし賛成票を投じた人々は、ポピュリズム政治のために国がさらに困難に陥るのではないかと憂慮している」と話した。 匿名を望んだ40代の男性は、「私は『オヒ(反対)』と『ネ(賛成)』の両方に投票して無効票にした。現執権勢力は言うことは華麗だが能力は信じられないし、以前の腐敗勢力に機会が再び与えられることにも反対だ」として「チプラス首相が対座したくないという債権団をテーブルにつかせる能力があるのか、ギリシャと債権団を喩えてみれば、一方は小型車で他方は超大型トラックなのだから結果は自明ではないか」と悲観的な反応を見せた。 国民投票という一つの峠を越えたギリシャ人の前には、債権団との交渉、さらに交渉決裂時のユーロ圏離脱の危機など、険しい峠が待ち構えている。

アテネ/キム・ボヒョプ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/europe/699099.html 韓国語原文入力:2015-07-06 20:36
訳A.K(2400字)

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