慰安婦問題に対する安倍政権の本格的な攻勢が始まったのは昨年10月だった。 当時『産経新聞』は河野談話の作成過程で日本政府が韓国人慰安婦ハルモニ16人を相手に記録した証言録を入手し、証言に弱点が多いという点を挙げて「歴史的な資料としては使い難い」と主張したためだ。 以後、菅義偉官房長官は2月28日に衆議院予算委員会で「河野談話に対する検証調査を始める」と公式宣言する。
その時点で韓日関係の悪化を憂慮した米国が介入する。 バラク・オバマ米国大統領は3月24日、オランダのハーグで開かれた核安保首脳会議で韓米日首脳会談を持つという強い意志を明らかにし、事実上日本に対する圧迫に乗り出した。 結局、安倍首相は3月4日に参議院予算委員会で「安倍内閣でこれ(河野談話)を修正することは考えない」と宣言する。 河野談話を修正すれば、慰安婦問題を女性に対する甚大な人権侵害と認識している米国世論を決定的に悪化させかねないという戦略的判断をしたものと見られる。 実際、米国下院は2007年7月に全員一致で「日本政府が若い女性たちを強制的に性的奴隷にした事実を認め、歴史的な責任を負わなければならない」という決議案を採択した経緯がある。 慰安婦問題と関連して、日本が越えてはならない韓国側の下限線として“河野談話”が確認された瞬間だ。 しかし、これは韓国自らの力ではなく米国など国際社会との共助を通じて勝ち取ったものだ。
以後、日本では河野談話を大きな枠組みで維持させるための事後措置が続く。安倍政権は6月20日、当初予告した「慰安婦問題を巡る日韓間のやりとりの経緯」と題した河野談話検証報告書を発表する。 この報告書の性格について、韓国では「河野談話を否定しようとするもの」という評価が支配的だったが、日本では逆に「河野談話をきわどく生かしたもの」という見解が主流となっている。 報告書がこれまで日本右翼が河野談話を攻撃するために掲げた種々の論点を逐一除去しているためだ。
代わりに報告書は、内容の三分の一程度を河野談話が出た後、日本政府が提示した解決策であるアジア女性基金に対する説明に割いている。その過程で韓国政府が当初は慰安婦問題に対する日本政府の“道義的責任”のみを認めた女性基金に対して「歓迎する」立場を明らかにしたと強調している。 慰安婦問題解決のための誠意ある先行措置を要求している韓国政府の主張を無力化するための緻密な構成と解釈される。 以後、菅官房長官は「河野談話を修正しなさい」という自民党内一部の圧力に対して「河野談話を修正する意思はない。 慰安婦問題に対して追加的な措置を出す意思もない」という立場を繰り返し明らかにしている。 慰安婦問題が3年間の長いトンネルを越えて、再び原点に戻ったのだ。 別の見方をすれば、慰安婦問題は李大統領が豪語したように「日本政府が認識を異にすれば直ちに解決できる問題」ではなく、解放後69年が過ぎても真の和解を成し遂げられずにいる韓日関係の実体を象徴的に見せる非常に深淵な問題かもしれない。
11月の首脳会談で「留保」結論の可能性
今や残っているのは朴大統領の決断だ。 朴大統領が11月に安倍首相に会うなら、慰安婦問題を事実上“留保”する方向で結論を残すように見える。 その場合、朴大統領は「安倍首相に会って慰安婦問題の解決を直接促す」という論理を駆使するだろうが、安倍政権が韓国が納得できるような措置を出す可能性は全くない。 そしてほとんどが高齢な慰安婦被害者の状況を考えてみる時、このような“留保”は事実上慰安婦問題解決の放棄を意味するかも知れない。 反対に朴大統領が安倍総理に会わないなら、韓日関係の冷却期間は更に続かざるをえない。 その間に日本との関係改善を要求する米国の圧力が続くだろうし、両国関係の悪化を通じて甘受しなければならない国益の損失も少なくないだろう。
個人的な感想を言えば、韓国の保守政権が持っている根源的な親日性を考慮してみる時、結局、朴大統領は安倍首相に会う方向で結論を出す可能性が高く見える。 最近3年間の教訓は、韓国が日本との関係で二者の枠組みだけで問題を解こうとすれば、勝算は殆どないという点だ。 慰安婦問題の根本的な解決のためには“人権”という人類普遍的な価値に基づいて世界の世論と日本を説得していく、長く至難な過程を踏まざるをえない。朴大統領にそのような長期的で遠大なビジョンを期待できるだろうか。