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「南北の住民たちの暮らしを向上させる過程で統一がなされるべき」

登録:2014-07-08 18:01 修正:2014-07-09 07:14
キム・ドンチュン聖公会(ソンゴンフェ)大社会学科教授
金東椿(キム・ドンチュン)教授

「南北統一以後の社会統合はドイツの場合よりはるかに難しい」
「北朝鮮の体制と現実・北の住民アイデンティティ理解が先行する必要」

 1989年にベルリンの壁が崩れてから25年の歳月が流れた。 翌年に公式に‘ドイツ統一’がなされてから45年間、離れていた彼らは一つになったのだろうか。 実践的社会学者であるキム・ドンチュン聖公会大社会学科教授は、去る2月から3ケ月間ドイツ ベルリンに留まり、ドイツ統一以後の社会統合について研究した。 特に旧東ドイツ地域の住民たちに会い、彼らが統一以後に抱いている心理的負担と現実を調査した。 キム教授は「統一以前にもお互いに疎通があったし、相手方の体制に対してある程度知っていたドイツでも、初期社会統合は困難だったし、今も心に凝りが残っている。 現在の南北関係を見れば、韓国の統一以後の社会統合はドイツとは比較にならないほど大変だろう」と話した。 キム教授のインタビューは去る5月18日、ベルリン5月民衆祭行事会場で行われた。

■統一、その後 ‘頭の中の障壁’

 キム教授はドイツに滞在しながら、教授、労働者、自営業者、記者、学生など多様な職業群の旧東ドイツ住民たちに会った。 彼は「私が会った人々が東ドイツ住民全体を代弁するわけではない」としながらも「統一以後、東ドイツの記憶、過去の大切なものなどを否認するよう要求されたことに対する心の恨、凝りが残っていた」と語った。 統一以後、自由民主主義の優越性を立証するために、東ドイツ体制に対する徹底した過去の清算がなされたが、それが東ドイツ住民たちに不愉快な感情として残っているという説明だ。 特に秘密警察体制のような東ドイツの‘旧悪’を強調して、各種記録と身上などを逐一公開した博物館などがその例だ。

 キム教授は「旧東ドイツ住民たちは統一すべきでないと考えてはいないが、統一以後に法的、制度的に自身が生きてきた社会と過去の経験を総体的に否認させたことに対しては拒否感があった」として「現在、東ドイツ地域で左派政党が高い支持率を得ているのも否認されたアイデンティティを取り戻したい気持ちの現れ」と解釈した。 キム教授は、統一前からすでに往来があったドイツでも統合に困難を経験しているのに、現在の徹底した敵対関係として残っている南北の状況では、より一層大きな困難に直面すると憂慮した。 「ドイツのように滑らかに統一をしても心に凝りが残っているのに、私たちの社会は今準備もできておらず、準備する意志もありません。 賎民資本主義の視角から北朝鮮の住民たちを‘貧しから醜い人’と見ているが、統一以後の南北住民たちの葛藤はドイツとは比較にならないほど大きくなるでしょう。」キム教授は「北の住民たちは経済的に貧しく閉鎖的だが、対外自主性などの問題で彼らが感じている道徳的優越感と自尊心は東ドイツ住民たちよりはるかに強い」として「南北統一以後、北の住民たちのアイデンティティを完全に否認するならば、社会統合は期間も二倍以上かかり、北の住民たちが受ける傷も東ドイツとは比較にならないほど大きいだろう」と話した。 相互の体制と現実を知り理解しようとする努力が先行しなければならないという説明だ。 彼は「統一は、南北の住民たちの暮らしの向上に寄与する過程で自然になされることであり、それ自体が最終目的になってはならない」と語った。

■「ナチ清算はドイツ アイデンティティの問題」

 キム教授は去る2007年にも‘真実と和解のための過去事清算委員会’常任委員を務めながらドイツを訪ねた。 全世界でドイツほど過去の清算が上手くできた国はないというのが彼の評価だ。 その中でも最初に挙げられるものが、まさに法的規制、いわゆる‘ホロコースト否定禁止法’だ。 「ドイツではナチ党が合法的に登場できず、公開的な場所でナチの過去を否定する発言をすることも全て処罰対象です。 内心ではそのような感情や意見を持つことができるかも知れないが、公論の場で話した瞬間にようやく成就した‘文明’が後退すると見たのです。」キム教授は「その他にも人種差別的な発言など合理的で正常な市民社会のコミュニケーションを不可能にするものなどもダブー視されている」として、「現在も韓国社会にある‘アカ’とか‘従北左派’、湖南(ホナム)地域卑下発言などが、ドイツ社会では出て来ることはできない」と指摘した。 68革命を通じたナチズムへの反省と社会全般的な‘記憶闘争’も続いている。 キム教授は「第2次世界大戦以後に脱ナチ化が徹底できずに、過去のナチ附逆勢力が再びもぞもぞと息を吹き返し始めた」として「68革命を通じてそんなことが改めてひっくり返った。 青年たち、すなわち下からの清算が再度なされた」と説明した。 ‘68世代’と呼ばれる人々は‘ナチ政権の時に自分の父親は何をしたか’という質問を投じ、より一層徹底したナチ清算と自己の省察を促したという説明だ。 ドイツはそれ以後、ドイツ各地に建てられたユダヤ人収容所現場、博物館、記念塔等を通じて粘り強い省察を続けた。

 「ドイツは学校でも過去事に関する教育を徹底的に行っています。 ヒットラーだけが過ちを犯したのか、その当時に平凡なドイツ人たちが何をして、どのように犯罪に加担したかを教え、これを自制できる市民文化を作っています。 市民的次元で過去清算作業と教育が継続されたということでしょう。」

 ドイツの過去清算は、ナチの清算と、統一以後の東ドイツ共産主義の過去清算に分かれる。 統一以後、この二つの過去清算に対する緊張はなかったのだろうか。 キム教授は「統一以後、東ドイツの共産主義清算を強調すれば、相対的にナチ清算の重要性が減りかねない」とし「ドイツのナチ清算問題を担当した教授に同じ質問を投げかけてみた」と話した。 社民党の過去事政策を担当して、西ドイツの脱ナチ化に大きな影響を及ぼしたBernd Faulenbach ボーフム大学教授の答えは簡単だが断固としたものだったという。 「ナチ清算の問題はドイツ アイデンティティの問題」ということだ。 今も続く‘記憶闘争’にもかかわらず、徹底した過去清算がなされうる背景だ。

 ベルリン/文 イ・ユジン ハンギョレ社会政策研究所客員研究員 heyday1127@gmail.com、写真 キム・ポンギュ記者 bong9@hani.co.kr チェ・ヘジョン記者 idun@hani.co.kr

https://www.hani.co.kr/arti/international/europe/645983.html 韓国語原文入力:2014/07/08 15:33
訳J.S(2827字)

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