すべての人はいつか必ず死ぬということは自然の道理だが、人々が自殺を選ぶのはその社会と政治の病理のためだ。 崇礼門(スンネムン)復元に使われた材が国内産かを検証する仕事を請け負った木材年輪分野の国内最高権威者パク・某教授の自殺と、2008年当時に狂牛病の危険を知らせた獣医師パク・サンピョの自殺が私たちに衝撃を与えた。 私たちは彼らがなぜ自殺という道を選んだのか、まだよく分からない。 しかし彼らは自身の分野に並みはずれて深い専門的知識と強い所信を持つ人として良く知られていて、パク教授の場合には死ぬ前に2回も警察の捜査まで受けるなど、そのことで強い外部圧力を受けた疑いがある。
私はこの二人とも自然科学者という点に注目する。 通常、自然科学専攻者らは、人文社会科学者に比べて‘政治的’でない傾向があり、政治にも関心が少なく、世の中を単純且つ純粋に見る傾向がある。 医学・法学などの技術的知識を扱う人もそうだ。 またそうあるべきだ。 科学者や技術者は、自身の専門性で生計を立て、その専門性が自身の自尊心と人生の根拠であり生きがいだ。 彼らにとって自身の所信と判断を放棄して、権力の要求に服従しろという言葉は、自身の存在を否定しろということと同じだ。 だからこそ私たちは科学技術者の合理的疑問と判断に耳を傾けなければならず、彼らの所信が権力と資本の論理に屈折されないよう十分な装置を用意すべきであり、彼ら自身もまた金と自尊心を対等交換をしてはならない。
ところで我が国社会は政治社会的にきわめて敏感な事案に対する法学、医学、物理学、各種工学専攻者たちの正当な疑問や判断を傾聴するどころか、むしろ自身の所信に固執しつつ社会に警告を送る専門家たちを組織不適応者に追い立てたり、最近では従北というレッテルまで貼り付けている。 ファン・ウソク事態以後、4大河川、三星(サムスン)白血病事故、天安(チョナン)艦事故、原子力発電所事故など、科学技術者の専門性と判断が必要な事件が立て続けに発生したが、その事案の真実をよく知っている専門家たちは口を閉ざしている。 天安艦沈没の件に対しても国内すべての物理学者たちは沈黙したが、米国で活動する2人の専門家だけが疑問を提起し、そのことで当事者たちは入国時に当局の監視を受けるなど大きな困難を経験した。 専門家が事実を事実通り話したり、所信に従って発言すれば、未だに解雇、不利益、除け者にされて、さらには命まで賭けなければならない国が韓国だ。
特に李明博(イ・ミョンバク)・朴槿恵(パク・クネ)政府は、所信ある専門家たちの口を塞いだり席から追放し、その代わりに忠誠を捧げる似非専門家らに出世の道をパッと開けてやった。 それで、似非科学者・検察・公務員・医師・教授が横行する代わりに、良心に従って行動する人々が痕跡をなくした。 専門家たちが政府や大企業の虚偽報告書を見ても沈黙していたり、良心の葛藤に勝てずに自殺までする社会。 いんちき専門家たちが魂を売って出世する社会は、すでに柱が腐った家と同じだ。 専門家たちの潰された自尊心は、まもなくブーメランとなって社会に戻る。 大きな賞を受けて当然な宝石のような存在が、反対に苦悩して死を選ぶことになっている現実は、この社会の健康性と道徳性がどん底に達したことを意味する。
パク教授の自殺事件に対する徹底した真相究明を要求する。そして専門家が所信を表現しても不利益に遭わない法的・制度的装置を作らなければならない。 学会や協会などの専門家集団は、構成員を保護できる道徳的力を備えなければならない。
キム・ドンチュン聖公会大社会科学部教授