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[ハンギョレ21 第959号] 極右の道の上で会う保守キリスト教と「イルベ」

登録:2013-06-09 08:13 修正:2013-06-10 10:17
[特集2] 差別禁止法 撤回させることで一つになった保守キリスト教と「イルベ」…相互敵対的だった彼らが同じ「敵」に対して手を握った

 「極端の信念」と「極端の嫌悪」は同じ穴の狢だ。信念が「聖」を僭称し、嫌悪が「俗」を自称しても、「聖俗」は一つのからだで育った二つの顔だ。民主統合党のキム・ハンギルと崔元植(チェ・ウォンシク)議員を屈服させて差別禁止法案を撤回させるにあたってキリスト教とイルベ(インターネットサイト『日刊ベスト貯蔵所』)は一つであった。

キリスト教に対して露骨な嫌悪をむき出しにしていた「日刊ベスト貯蔵所」(イルベ)会員たちが、差別禁止法政局で「夷を以て夷を制す」を展開し、保守キリスト教と連合する様相を示した。ハンギョレ パク・ジョンシク記者

「キリスト教活用論」を提起したイルベ

 保守キリスト教とイルベの「同志的関係」は例外的なケースだ。両者は普段は敵対的だ。イルベサイトでキリスト教は「ブサヨのパシリ」レベルの嘲弄と非難の対象だ。イルベ利用者は、保守キリスト教の露骨な善悪二分法と手のつけられない宣教布教行為を嫌悪する。ジェントルマンのミュージックビデオの中のPSYをサタンに比喩したキリスト教徒の書き込みは、イルベで繰り返しコピペされた。自分たちを低劣な言葉で蔑視するイルベを、キリスト教徒も好むわけがない。イルベは保守派キリスト教が警戒する「キリスト教蔑視勢力」の主犯の中の一つだ。

 活動方式も「陰」と「陽」のように対比される。「神聖な信頼」に基づいた保守キリスト教徒の闘争は公開的だ。彼らは法案撤回のために、議員室へ直接抗議電話をかけたし、素顔をさらして街頭でスローガンを叫んだ。「ゲイの平均寿命は、一般の人たちより25~30年短い」という新聞広告を出し、携帯メールを送って反対運動を促した。「倫理を威嚇して、伝統を解体し、いんちき宗教を助長する法案」との信念に基づき、彼らは堂々と行う。

 イルベはインターネットで匿名のみで動く。「俗物嫌悪主義」に基づく彼らは、自身がイルベ会員であることを隠す。会員たち自らも、イルベの行為が誇らしくないという点を認める側だ。大学病院医師と伝えられている運営者さえ、今後の教授任用での「否定的評判」を心配して、サイト売却を推進中という。「DCインサイド」から削除された「問題ある書き込み」を復元した独立サイトとして作られたイルベは、昨年の大統領選挙を経て、恐ろしいほど成長した。反民主的・反女性的・人種主義的な言葉とテロに近い攻撃性で、「極右反動の代表的な交流の場」へと成長しているところだ。 最近、アノニマスコリアのハッキングと組んだ「ウリミンゾクキリ(わが民族同士)」会員の個人情報暴露は、検察・警察・国家情報院と結合して、国家権力の下位暴力に変質する様相を演出した。イルベの成長から「韓国版ネオナチ」の兆候を読み取る声まで聞こえてくる。彼らにとって差別禁止法反対は、イルベを守るための「自衛手段」になりもする。差別禁止法が、性別、障害、皮膚の色、容貌、政治的見解、性的嗜好などにより「無差別的差別」を加えてきた彼ら自身を威嚇するという論理だ。「差別禁止法=イルベ閉鎖法」とのスローガンが、サイトで飛び交う理由だ。

 そのイルベが「キリスト教活用論」を提起した。「夷を以て夷を制す」なのは当然だ。危機に直面して「キリスト教徒までとも、反対勢力同士、連合しなければならない」という主張だ。 同じ「魔女」を前にして、反目していた保守キリスト教とイルベが、極右の道の上で手を取り合った姿だ。唯一真理を掲げる過激な信念体系と、他者に向けた暴力的欲望は、同じ養分を吸って育つ。誇張された恐怖と、恐怖が作ったスケープゴート。

自らに向かう差別として戻ってくると力説

 キリスト教とイルベはそれぞれ、「ケドク」[訳注:犬(ケ)とキリスト教(キドクキョ)が合わさったキリスト教への侮蔑語]と「虫」とも呼ばれる。ネットユーザーの嘲弄と嘲笑が込められた呼称だ。イルベ自身も自らを「チュン(蟲)」と称して、キリスト教を「ケドク」とけなす。インターネットでは差別禁止法案を撤回させた彼らを「これからは安心して、ケドクと虫を差別しよう」という非難まで飛び交う。「差別を前提とした差別禁止法反対」が自身に向けられた差別として戻ってくる逆説に、彼らは今、向き合っている。

イ・ムニョン記者 moon0@hani.co.kr

http://h21.hani.co.kr/arti/special/special_general/34444.html 韓国語原文入力:2013/05/06
訳J.S(1962字)

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