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　講談社ノンフィクション賞は、日本ジャーナリズムにおいて権威ある賞の一つだ。2012年の対象作は、安田浩一の「ネットと愛国」に決まった。右翼団体である在特会の正体を暴いた内容だ。在特会は「在日特権を許さない市民の会」で、今、日本で熱い関心の中心にいる。

３月31日、東京新宿韓流通りで、右翼団体会員たちが街頭デモを行なっている。一方で彼らの人種差別主義と誤った歴史観を批判する市民たちが、歩道に集まり抗議している。 ハンギョレ チョン・ナムグ記者

　2007年に結成された在特会の主張を要約すると、このようになる。「日本には在日朝鮮・韓国人たちに対する特権的な措置が多く、これにより日本人が不平等に苦しんでいる」。在特会の主要な活動家たちは、デモ・集会などオフライン活動をしているが、彼らを支持する層は、ネット上にて匿名で韓国人や中国人たちに悪口を浴びせる「ネトウヨ」（ネット右翼）だ。例えば、ツイッターで在日韓国人を見つけた場合は「犬肉を食べる野蛮人」「早く韓国に帰れ」というふうにメンションを飛ばす。私も何度もその様なメンションを受けた事があるが、ほとんど、いや一つも漏れ無く、匿名アカウントだった。もし、そんな行動を批判する日本人が現われれば「お前、韓国人だろう」と対応する。「嫌韓流」という言葉があるが、彼らの言動を正確に表現しようとすれば「憎韓流」だ。顔が見えないネトウヨらの悪意に満ちた言動は、在日朝鮮・韓国人たちの恐怖の対象だ。

　最初、在特会会員が街頭で「在日韓国人は特権階級だ！」「在日韓国人たちが、マスコミを中心に、密かに日本を占領しようとしている」と叫んだ時、あまりにとんでもなく、注意を向ける人はほどんどいなかった。しかし、最近、ほとんど毎週、東京新宿と大阪のコリアタウンで行われる「韓国征伐国民大行進」デモに関心を向ける人が、ずっと多くなった。彼らはデモを繰り広げ「韓国人を殺せ」などの暴言を叫び、韓国人が営業するレストランの看板を足で蹴るとか、道を行き交う日本人に「早く目を覚ませ」と狼藉を働く。

　ネット上には、こんな在特会のデモに対抗しようと訴える人々が現われた。彼らは在特会のデモ隊が韓国人たちに暴力を振るわないよう見張り、「差別をしないで」「(韓国と日本は)仲良くしようぜ」などのメッセージを書いたプラカードを手に持ち、街頭に立った。結局、その数はデモ参加者を越えて、在特会のデモを無力化することに成功したりした。

　「イルベ」(日刊ベスト貯蔵所)の事例があったりはするが、大部分の韓国のネチズンは改革的指向を帯びている。一方、日本でネチズンと言えば、匿名のネトウヨが代表的だ。ところで最近ここ数年、本名を使うソーシャルネットワークサービス(ＳＮＳ)がシェアを伸ばしていき、匿名のネトウヨに疑問を持ったり、対抗する人々が現われた。

　在特会が言う在日韓国人たちの「特権」とは、主に在日韓国人たちに付与されている特別永住権、通名(日本で通用する名前)の使用などだ。日本に住む韓国人は、植民地期に連れて来られたのではなく、自発的に日本に渡って来たのだと主張しながら、無条件永住権を付与することは不当であり、彼らに「通名使用」を許容してはならないと言う。また、生活保護受給者の中に在日韓国人が多いことを問題視する。日本で年金制度が施行された当時、高齢の在日韓国人たちが排除されたので、彼らが老齢年金の代わりに生活保護給付を受けるようになった歴史的背景が厳然とあるのにも関わらずだ。「ネットと愛国」によれば、在特会会員には、非正規職や失業者などの低所得者層が多い。すなわち、社会に不満を持った者たちがネットで在日韓国人たちの「特権」を言い立てて、八つ当たりしているのだ。

　４月末、安倍晋三内閣の閣僚たちが列をなして靖国神社を参拜した。保守政治家たちのこの様な行動は、国民の不満を、政権ではなく他所へ回すことに成功したように見える。保守政治家たちがはじめから意識していたか否かは分からない。ところで安倍総理は自分の支持層にネトウヨが大きな比重を占めていることを認識しているようだ。その証拠に、自民党があれほど熱心に反対していた「インターネット選挙活動禁止」 解除を、政権を取るやいなや上程し、4月30日に通過させた。今夏行われる参議院選で主導権を取るのは、ネトウヨを中心としたインターネット守旧派だろうか、ＳＮＳを通じて連帯した新しい勢力だろうか、注目される。

東京(日本) キム・ヒャンチョン 在日韓国人３世 フリーライター