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[ハンギョレ21 2012.10.08 第930号] 釣魚島は第2の満州となるのか?

[焦点] 満州事変81周年に合わせて中国の反日デモが広がり「戦争も辞さない論」まで現れた釣魚島問題…
両国とも国内事情で以前のように適正な妥協点見つけづらく葛藤が深まる恐れ

北京(中国)=パク・ヒョンスク通信員 phschina@naver.com


9月18日、日本が満州事変を起こしてから81年になる日。中国人のフさんは一日「蟄居」することにした。下手に外出すると大きな災難にあうかもしれないと心配したからだ。数日前の週末、北京の清華大学のそばで仕事の打ち合わせを終えて帰る途中に大学生に見える青年2人が自分の「日本車」の前で交わす話の内容を聞いて悪寒が走ったからだ。「あっ、これ、日本車じゃん。むかつくからつぶしちゃおうか?」

動員デモを超えて歴代最高の熱気 
その日、北京を始めとして中国全域で日本の釣魚島(中国名ティアオユータオ、日本名尖閣)国有化に反発して大規模反日デモが起こっていた。フさんが蟄居している間、他の数多くの「日本車」の持ち主も、その日一日は車を「捨てて」公共交通機関を使ったり家に留まったりした。中国のメディアの報道を見ると、この日北京の道路状況は以前に比べて非常に円滑になったそうだ。道から日本車がすべて消えたためだ。

同じ日、中国の中学校に通っている息子の教材を買いに北京中関村書店に立ち寄った韓国人の高さん。すると店の入口で店員が立ちはだかった。「あなたは日本人か。日本人は立ち入り禁止だ!」北京に住んで7年になる高さんは「こんな呆れたことは初めてだ」と言う。この日市内でタクシーに乗って家に帰ろうとしていた別の韓国人金さんも同じような経験をした。タクシーの運転手に行き先を伝えるとこんなことを言われたそうだ。「日本人は乗せないから降りろ!」どうにか韓国人であることを伝えて無事帰宅でしたが、彼も北京に住むようになってこんな恐ろしい思いをしたことは初めてだったそうだ。

9月11日に日本が釣魚島の国有化を決定した後、中国全域で反日デモの嵐が吹き荒れた。北京、上海、広州などの大都市は言うまでもなく、全国100以上の地域で激烈な反日デモが絶え間なく行われた。西安、長沙、青島など日本企業と密接な関係のある地域ではデモ隊が暴徒化してデパートと工場などが襲われて略奪されたり大きく破壊されたりして当分の間営業ができない状態になった。

日本大使館のある北京でも9月15~16日の週末に日本大使館の周辺ではデモの隊列が途切れることがなく、様々な汚物が投げられるので掲揚された日章旗を降ろさざるを得ない辱めを受けた。満州事変81周年の9月18日には全国的に反日デモが頂点に達して、デモ隊の攻撃を恐れた全国の日本系商店、企業、レストランが一斉に休業した。

デモ参加者の内、相当数が私服警官やカネを受けとって組織されたデモ隊だという証拠があふれているが、日本に向けられた激昂した世論は「動員デモ」のレベルを超える異例な反日感情があらわになった。過去に日本の歴史教科書歪曲と釣魚島領土紛争などでも何度か深刻な反日デモが起こり世論が怒ったが、今回の反日デモはそのレベル、範囲、程度の面で歴代最高と言われている。
 
国営メディアの殺伐とした解決方法
領土や主権と問題と関連してはどのような形の妥協もないというのが中国外交政策の原則だ。ただ、過去には今と同じような問題が起きた時でも日本に対して事実上の政治的「言葉での脅迫」にとどめていた。つまり政治的には強硬な「言葉での対応」をするが、経済的にはお互いの実利を強化する政策を取った。「政冷経熱」が中日関係の核心だった。

しかし、日本の釣魚島国有化決定により触発された今回の争いは以前とは異なって雰囲気が殺伐としている。中国は過去の現状維持戦略の代わりに政治力、経済力、軍事力などを総動員して全方位から日本を圧迫するという意志を見せている。今までは日本の挑発的な動きさえなければ日本の釣魚島実効支配という現状を黙認して、維持してきたが今回は「世知辛い」ほどだ。

「人民日報」、「環球時報」、「新華社」など中国の代表的な国営メディアも先を争って好戦的な世論を煽って日本との一発勝負を求めている。9月17日の「人民日報」は「中国が経済の引き金を引くと日本を20年後退させられる」と強硬な口調の社説を掲載した。同紙は「問題が政治的に解決できなければ、日本は多方面で強力な経済戦争を準備しなければならない」とし、「中国が経済戦争の引き金をいつ引くかは日本次第だが、日本にはその準備はあるのだろうか」と警告した。

「環球時報」も9月20日「釣魚島の争いの3つの結論についての仮想」というタイトルの論評で同じような論調を繰り広げた。特に同紙は「今回の領土紛争を巡る中日間の争いは大きく分けて3種類の結論があるだろう」と予想した。1つ目は現在同様の日本による実効支配という現状維持だ。2つ目は妥協を通じて釣魚島の主権をお互いが釣魚島の主権を自分のものだと宣言しない方法だ。最後は中国が強力な政治、経済、軍事的物理力で日本を攻撃して釣魚島を取り戻す方法だ。「環球時報」は「今のところ、前者2つでの解決可能性が高い」としつつも「しかし、敢えて提案するがこの機会に中国は局地的な物理的衝突と経済制裁などを行なってでもこの問題を解決するという『決心』をしなければならない」」と求めた。いわゆる「戦争も辞さない論」だ。

満州事変81周年を起点にして中国国内の反日デモは政府の統制政策のおかげでそれまでのような激昂して組織的な街頭デモは姿を消した。燎原の火のように広がった反日デモには国内政治と社会問題を風刺するシュプレヒコールが混じっていて、毛沢東の肖像画と紅衛兵の格好をしたデモ隊まで登場して当局は慌てて抑制に乗り出したためだ。権力闘争に敗北した薄煕来の影響力が依然として存在する重慶では反日デモ隊が「釣魚島は中国のもの、薄煕来は人民のもの」という政治的なシュプレヒコールを叫んだりもした。反日デモが中国国内の政治闘争を加速させる火種にならう可能性も取り沙汰されているのもこのためだ。

お互い剣を抜いたが崖に阻まれ退くこともできず 
中国は10月末から11月初めに予定されている第18回党大会での権力の交代を目の前にしている。すでに2020年までの経済発展に邁進して、いわゆる「小康社会(基本的な生活が保証されて多少余裕がある社会)建設」という社会、経済目標を設定している。そのためには外部環境を安定的に管理しなければならない。日本との領土紛争に巻き込まれたら、周辺国家も中国の浮上を案じて、アメリカを中心とした「中国包囲戦略」が強化されるのは火を見るより明らかだ。だからといって、以前のような日本との適切な妥協も難しい。釣魚島問題に対する本質的な解決を引き出せなければ、国内の保守派と人民たちの不満を買って下手をすれば政治的立場が狭まりかねないためだ。

日本も「失った10年」と東日本大震災などを経験して、既に内外に対する自信の喪失している。もし今回の領土紛争でも中国に白旗を掲げることになると、日本国民の「士気」ももちろんのこと、日本全体の自信ももはや回復する方法がないだろう。それで日本の立場も剣を抜いたが崖に阻まれて退くこともできないオウンゴール状態になりかねない。果たして中国と日本はお互いに向けた引き金を引くことはできるのだろうか。

原文: http://h21.hani.co.kr/arti/world/world_general/32995.html 翻訳: Y.U.