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ウォン安ドル高が精油、鉄鋼、航空「直撃」…石油化学や物流も心配=韓国

登録:2025-11-26 08:11 修正:2025-11-26 08:56
1ドルが1470ウォン台を記録した24日午後、ソウル中区明洞のある私設両替所の前を観光客が通り過ぎている=チェ・ヒョンス記者//ハンギョレ新聞社

 「鉄鋼業界のある実務者は、頻繁に取引のある米国現地のバイヤーから近ごろ『大丈夫か』と心配されたそうだ。ウォン安ドル高の影響で事業負担が重くなっているのではないかという趣旨だ。関税に中国の低価格ダンピング問題まで重なり、業界の雰囲気が重い」(ある貿易振興機関の企業支援担当者)

 ウォン安ドル高が続いていることで、韓国産業界の困難が深刻化している。通常はウォン安ドル高が好材料として働いていた一部の輸出企業も、関税負担や景気低迷まで加わり、コストの増大から自由ではないようだ。鉄鋼業界の負担が特に深刻で、輸出規模の大きい物流や石油化学業界も負の影響を受けている。

 ウォン安の継続は産業界の負担を増大させている。24日に韓国銀行と国際決済銀行(BIS)の資料を確認したところ、今年10月末時点の韓国の実質実効為替レート指数は89.09。これは2009年8月(88.88)以来、約16年ぶりの最低水準だ。2021年8月に100を下回り、4年あまり下落が続いている。これは、グローバル金融市場でウォンの実質購買力が低下していることを意味する。

 ウォンの購買力が落ちれば精油、鉄鋼、航空などの外貨決済の割合が高い業種が大きな影響を受ける。精油業界は、年間10億バレル以上の原油を全量ドルで購入している。ドル高が直ちに原油購入費の増加へと直結する構造だ。ただし同業界は為替リスクが存在してきただけに、内部で比較的よく対策されている。Sオイルの関係者は「(輸出代金として受け取った外貨で主な原材料を購入する)ナチュラルヘッジ方式を活用し、為替の影響を最小化する方向へと一貫して推進中」だとして、「今のように為替レートが急変する状況では、よりいっそう綿密にモニタリングをおこなっている」と語った。

 問題は鉄鋼業界だ。関税、景気低迷、原材料価格の上昇など、近ごろは様々な負担を抱えているからだ。米国に生産法人を置いているため為替損失が相殺されたという世亜製鋼は、「現地生産が思わしくないか、原材料の輸入規模より製品の輸出規模が小さい鉄鋼会社は、ウォン安の打撃が大きいはず」だとして、「(現在は50%の)米国の関税のせいで鉄鋼業界の業況そのものが良くないのも悪材料」だと指摘した。韓国鉄鋼協会によると、今年10月の鉄鋼材の対米輸出は5万6千トンで、前年同月に比べ約8.2%減少。特に変圧器やモーターの重要素材である電磁鋼板の対米輸出は、同期間に4千トンから1千トン未満へと75%以上も減少している。

 東国製鋼の関係者は「主な原料を国内に頼っているため為替レートの変動が直ちに脅威になることはないが、その他の原料で一部影響がありうるため、状況を見守っている」と話した。同社は、昨年末と比べてドルが10%ほど上昇すると、当期純利益が51億ウォン(約5億4300万円)ほど減る可能性があると分析している。

 航空業界、食品業界などでも困難を訴える声が高まっている。ある格安航空会社の関係者は「航空機のレンタルからはじまって整備コスト、空港使用料、油類費、固定費と、すべてドルで決済しなければならない」として、「ドルが高いので旅行需要も萎縮しており、実績が悪化している」と訴えた。原料のほとんどを輸入に頼っているあるフランチャイズ外食業界の関係者は、「ウォン安ドル高によってコストがかさんでも(政府の物価管理基調によって)消費者価格にすぐには反映できないから(損失に)耐えている」とし、「この期間が長引くと人件費など他でコストを削減せざるを得ない」と説明した。

 輸出規模が大きいためウォン安ドル高が通常は好材料として作用する企業も、困難に直面しているのは同じだ。米国発の貿易障壁のせいで世界的に需要そのものが減っており、輸出規模の縮小で原価負担が相殺できずにいるのだ。売上の70%ほどを輸出に依存しているある石油化学企業の関係者は、「一般的な状況ではウォン安ドル高は得になるが、今のように国際的に供給が過剰になっている状況では、輸出がうまくいかず原価負担が重い」と語った。ある大企業の系列物流会社の関係者も、「貿易障壁が存在し、かつ韓国企業の輸出競争力が悪化している中でウォン安が続くと、総物流規模が縮小して売上に悪影響を及ぼすとみている」と話した。

 専門家は、ウォン安ドル高基調が当面は続くとの見通しを示している。漢陽大学経済金融学部のイ・ジョンファン教授は「来年初めまで、ドル供給の改善要因は多くない」として、「短期間にドルが大きく下がることはないと思われる」と語った。

 韓国貿易協会国際貿易通商研究院のチャン・サンシク院長は、「最近、米中への輸出が減少している中、韓国企業は輸出を多角化しようとしているが、全世界的にドル高・自国通貨安の流れを示しているため、グローバルサウス(南半球の発展途上国)などの他国の輸入余力が弱まっている」として、「保護貿易強化基調によって鉄鋼、石油化学が為替レートの変動に最もぜい弱。コストの価格への転嫁が難しい消費財も、成長が鈍化する可能性は排除できない」と語った。

ユ・ハヨン、イ・ジェホ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/1231017.html韓国語原文入力:2025-11-24 19:07
訳D.K

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