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EUの鉄鋼関税50%引き上げに韓国は非常事態…「炭素障壁」で二重苦

登録:2025-10-09 20:01 修正:2025-10-10 07:35
8日、京畿道平澤港に鉄鋼製品が積まれている/聯合ニュース

 米国に続き、欧州連合(EU)が輸入鉄鋼製品に対する無関税クォーター(割当量)を縮小し、品目別関税を25%から50%に引き上げる計画を発表し、韓国の鉄鋼業界は非常事態になった。鉄鋼業界は海外の現地製鉄所の運営とサプライチェーンの多角化などの対策作りに乗り出し、韓国政府はEUとの割当量交渉に総力を尽くすと明らかにした。

 EUは7日(現地時間)、従来の鉄鋼セーフガード(輸入制限措置)に代わる新たな低率関税割当(TRQ)導入計画を発表した。EUの輸入鉄鋼の年間割当量を昨年のセーフガードの総量に比べ47%減らした1830万トンに縮小することが骨子だ。割当量を超える輸入製品に対して適用してきた関税率を25%から50%に上方修正し、「粗鋼」(melt and pour)基準を導入してすべての輸入鉄鋼材の粗鋼の国家証明義務を負わせる内容も盛り込まれた。安価な中国製鉄鋼が第3国で最小限の加工を経て原産地を洗浄し欧州市場へと流入するのを防ぐための措置だ。新しい鉄鋼規制措置は立法手続きを経た後、現行のEUセーフガード措置の満了時点である2026年6月末頃に加盟国投票を経て導入される予定だ。

 これに先立ってEUは、2018年に輸入鉄鋼に対するセーフガード措置を2026年までの8年期限で導入した。第1次トランプ政権が輸入鉄鋼に25%の関税を課し貿易障壁を高め、安価な中国の鉄鋼製品が欧州市場に集中したことから、欧州内部の鉄鋼産業を保護するための装置だった。2050年までにカーボン・ニュートラルを達成するという目標を立てたEUは、炭素発生量の多い鉄鋼産業に対しても炭素排出量の報告義務化などの環境規制を強化してきた。欧州の鉄鋼企業が環境にエコ化に向けて莫大な資金を研究開発(R&D)に投資する間に、中国・インドから安い鉄鋼製品が欧州市場に流入し、欧州の鉄鋼産業界が枯死する危機に追い込まれた。世界市場に占めるEUの鉄鋼生産は、2014年の9%から最近は7%まで減り、この15年間で鉄鋼産業の雇用10万件が消えたと欧州の鉄鋼産業界は分析している。

 米国に続き欧州も鉄鋼貿易障壁を高め、韓国は大きな衝撃を受けざるを得ない状況に置かれた。韓国貿易協会の資料によると、昨年韓国が輸出した鉄鋼製品のうちEUへの輸出が44億8000万ドル、米国が43億5000万ドル規模と1、2位を占めている。韓国の鉄鋼輸出は今年に入って米国の「関税爆弾」の影響が本格化し、下り坂を歩んでいる。

 韓国の鉄鋼業界からは、欧州の鉄鋼貿易障壁が米国の関税より脅威になりうるとの見通しが出ている。産業研究院のイ・ジェユン炭素中立産業転換研究室長は9日、ハンギョレに「米国は鉄鋼産業が弱いので、関税を高めたとしても韓国の立場としては関税を負担しても輸出量自体は維持できる」として「欧州で来年から施行される炭素国境調整措置(CBAM)と今回の低率関税割当措置が合わさると、韓国の輸出規模はかなり萎縮せざるを得ない」と指摘した。炭素国境調整措置とは、欧州に輸入される鉄鋼などの高炭素製品に生産過程で発生した炭素分の費用(関税)を課す制度だ。

 米国や欧州だけでなく、全世界の主要国家が鉄鋼産業を保護するために動き、企業は欧州やインドなどの現地で工場を運営しサプライチェーンを多角化するなど、慌ただしく対策を探している。インドも今年4月から一部の鉄鋼輸入品に対して12%のセーフガードを適用するなど、非関税障壁を強化している。

 ポスコは8月、インド1位の製鉄企業であるJSWと年間粗鋼生産量600万トン規模の製鉄所を共同で建設することで合意し、主要条件合意書(HOA)を締結した。現代製鉄はトランプ政権が鉄鋼関税25%を発表した3月、ルイジアナ州に58億ドルを投資し年間270万トン規模の製鉄所を建設する計画を発表した。同社は今年初め、社内に「欧州営業室」を新設し、欧州地域のサプライチェーンの多角化も検討している。ポーランドに工場を保有している亜州スチールを昨年買収した東国CM(東国製鋼の系列会社)は、欧州での生産量拡大を検討している。韓国の鉄鋼業界関係者は「世界各国が米国の関税50%に歩調を合わせる方式で対応していくと、韓国企業は工場の現地化・サプライチェーン多角化に進むほかはない」と話した。

 韓国政府はEUとの協議を通じて無関税割当を最大限得ることに全力を尽くす計画だ。EUが「国別物量配分の際、自由貿易協定(FTA)締結国に対しては考慮する」と明らかにしたことに希望をかけている。国際貿易通商研究院のイ・ユジン首席研究員は「欧州に輸出する韓国の鉄鋼製品は、車両用鋼板と高付加価値製品の比重が大きいため、割当量を多く受ける余地がある」と指摘した。

 産業通商部は、ヨ・ハング通商交渉本部長が今後EUのマロシュ・シェフチョビッチ通商担当執行委員に会い、新たに導入される予定の低率関税割当措置について韓国政府の立場と憂慮を伝える予定だと明らかにした。また、10日に産業供給網政策官が「官民合同対策会議」を開き、鉄鋼産業の対応策を議論する計画だ。

イ・ジェホ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/1222568.html韓国語原文入力:2025-10-09 18:05
訳J.S

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