人工知能(AI)投資ブームでメモリー半導体市場に春の気配が漂い、企業も投資を大幅に増やしている。市場の需要の増加に合わせて数十兆ウォン台の投資資金を注ぎ込み、市場の主導権を握るための「銭の戦争」に突入したかたちだ。
29日の業界の情報によると、世界のメモリー市場シェア1~3位を占める韓国のSKハイニックス、サムスン電子、米国のマイクロン間の投資三つ巴戦が本格化している。メモリーのスーパーサイクル(大好況)を迎え、チップの供給能力を拡大し、先端技術競争でリードするために設備投資および研究開発(R&D)支出を増やしているということだ。韓国半導体産業協会のアン・ギヒョン専務は「AIチップに入る高帯域幅メモリー(HBM)を中心に需要が大幅に増え、企業が投資を拡大している」と述べた。
最も攻撃的な投資に乗り出した企業は、HBMの先頭走者であるハイニックスだ。同社の財務諸表を見ると、今年上半期(1~6月)の設備投資額は11兆2490億ウォン(約1兆2千億円)で、昨年上半期(5兆9670億ウォン)に比べて2倍ほどに急増した。これは上半期基準で過去最大の投資額だ。今年、米国のNVIDIA(エヌビディア)に対してHBMの供給量を早くも完売したうえ、来年は次世代メモリー(HBM4)市場も開かれると予想され、関連装備の購入などを増やしたためだ。
サムスン電子も上半期の半導体部門の設備投資額が20兆7261億ウォン(約2兆2千億円)で、前年に比べ5.9%増えた。2023年上半期(23兆2473億ウォン)には及ばないが、2年ぶりに増加傾向に転じた。
特に目につくのは研究開発費の支出額だ。サムスン電子が今年上半期に半導体をはじめ全体の研究開発に使った資金は18兆641億ウォン(約1兆9千億円)で、上半期基準で最大額。韓国政府の来年の研究開発予算(35兆3000億ウォン)の半分近くにのぼる規模だ。これは、昨年10月に半導体事業不振の余波でアーニングショックを記録し、チョン・ヨンヒョン副会長が自ら「反省文」を出し「技術の根源的な競争力の復元」を強調したことと無関係でないと思われる。サムスン電子は来年、米テイラー市に建設するファウンドリ(半導体受託生産)工場の稼動を控えているため、装備投資などは引き続き増える可能性が高い。
メモリー市場3位のマイクロンも大々的な投資拡大に乗り出し、韓国企業を追撃している。同社のマーク・マーフィー最高財務責任者(CFO)は23日(現地時間)、業績説明会で「設備投資など資本支出(CapEx)を今年の138億ドルから来年は180億ドルに増やす」とし、「投資額のほとんどはDRAM製造と装備などに使う予定」だと話した。AIチップ専用のHBM4だけでなく、一般メモリー製品全般で需要が拡大しているだけに、工場増設に積極的に乗り出すという話だ。
過剰投資の懸念もなくはない。最近、AIチップの筆頭企業であるNVIDIAが、AIモデルのChatGPTの開発会社であるOpenAIに最大1千億ドルの投資計画を発表し、この資金で再びNVIDIAのチップを購入することにするなど、いわゆる「循環取引」構造を組んだことが代表的な事例だ。現在のメモリー好況を導くAI投資ブームに人為的な需要創出などのバブルが生じたのではないかという懸念だ。しかし、漢陽大学融合電子工学部のパク・ジェグン教授(韓国半導体ディスプレイ技術学会長)は「ビッグテック(巨大技術企業)のAIチップ需要が増え続けているだけに、過剰投資とみなすことはできない」と述べた。