韓国新政権は発足してすぐに米国との関税交渉に乗り出さなければならない。米国が早期妥結を求めている状況で、失敗した交渉になった場合には経済的被害が発生し、発足初期から政権に批判の矛先が向けられるため二重の負担となる。4日、ハンギョレに意見を明かした専門家たちは、韓国も十分にレバレッジがあるので、焦りを捨てて堂々と臨むべきだと注文した。
貿易業界では先月の対米輸出が8.1%減少した点を挙げ、交渉の重要性を強調している。韓国貿易協会のチョ・ソンデ通商研究室長は、輸出がさらに早く縮小する可能性があるため「政府は被害の最小化のため、交渉に努力を傾けなければならない」と語った。また、以前は米国の輸入業者が在庫確保のために関税ショックを緩和させたが今は違うと言い、「不確実性が大きくなれば企業は経営計画を立てにくくなり、保守的な経営をする。そうなれば経済自体が厳しくなる」と話した。
このような状態で、米国は交渉が妥結しなければ、7月9日から相互関税を発効すると圧迫している。しかし専門家らは、時間に追われすぎると良い結果は期待できないと指摘する。ヨ・ハング元通商交渉本部長は「時間に追われる必要はない」として「米国内の政治・経済状況、相互関税に対する裁判所の無効判断などで不確実性が大きいため、新政権は善意で最善を尽くしつつも、堂々と交渉する必要がある」と語った。対外経済政策研究院のク・ギョンヒョン貿易投資政策チーム長は、米国の世界戦略などを考えれば中・長期的な対応の方がより重要であり、交渉妥結を「先送りする戦略は依然として有効だ」と述べた。
韓国が重要な協力パートナーになるという点を積極的に活用すべきという意見も続いている。ヨ元本部長は「米国と交渉中の主な貿易相手国と比較すると、韓国は交渉カードが多い」として「製造業復興、エネルギー、先端技術の開発協力などで米国にとって欠かせない重要なパートナーだという点で、交渉のレバレッジ(テコ)を探るべき」と述べた。ク政策チーム長も「米国が望むのは産業誘致による雇用創出と中国けん制であるため、韓国は活用の価値があると考える」とし、似たような意見を示した。
一方的な関税賦課に対し、過剰に譲歩することから解決策を見出してはならないという意見も出た。キム・フンジョン元対外経済政策研究院長は、「非関税障壁で解除できるものは解除しつつ、国内の抵抗が大きく問題が大きくなりうる分野は譲歩してはならない」とし、「相互関税だけでなく、品目別関税も自由貿易協定(FTA)が出発点だという点を明確にしなければならない」と述べた。FTAに従えば、ほとんどの品目は関税率が0%であるという点を根拠に対応しなければならないということだ。また、米国がFTAを結んでいない英国に対し自動車関税率を27.5%から10%に引き下げた点も、対応の論理にすべきだと語った。
米国側は先日の実務協議で、コメ市場の追加開放、牛年齢30カ月以上の牛肉の輸入の許容、自動車の環境規制緩和などを通じて、韓国の非関税障壁を大幅に解消すべきだと主張した。これに対し、交渉の推移によって被害が発生しうる農畜産業などの分野では、譲歩してはならないという主張もある。全国韓牛協会のソ・ヨンソク政策指導局長は「畜産と農業分野はFTAで最も大きな犠牲を払っている。いま韓牛農家は飼料価格など生産費の増大で赤字を出している」とし、牛肉の輸入制限は廃止してはならないと強調した。