米議会が船舶法(SHIPS for America Act)を再発議した。従来の法案より中国船舶に対する牽制が強化され、韓国の造船会社の反射利益が期待される。しかし、同時に米国内での船舶建造を義務付ける条項も増え、現地投資に対する企業の苦悩も膨らむ見通しだ。
先月30日(現地時間)、米国119代上・下院には「米国の繁栄と安保のための造船業と港湾施設法」(SHIPS for America Act・以下船舶法)が再発議された。同法案は昨年12月に発議されたが、議会会期(118代)の終了により自動的に廃棄された。同日、民主党と共和党の一部議員は、マーク・ケリー上院議員(民主党)主導で法案を共同で再発議した。
法案には以前と同じく商船拡大の内容が盛り込まれた。国際運送に使用できる船舶を現在の約93隻から最大250隻まで増やし、米国の造船業を再建するということだ。このための主要機関の設立、ファンド基金造成、戦略商船団(SCF)新設、支援プログラム導入、人材開発、税制優遇などを推進する内容が法案に盛り込まれた。
法案は250隻の船舶を確保するために外国で建造された船も戦略商船団に含めることにした。韓国の造船所で建造した船舶も関連受注を獲得できるということで、韓国の造船会社への恩恵が予想される。外国製船舶の戦略商船団編入を認める期間は当初2029年までだったが、新法案では2030年に変更された。
再発議された法案には新しい内容も追加された。中国の国営造船会社の中国船舶工業グループ(CSSC)と有意な取引をする船主に対しては罰則を科すというもの。この罰則は、米国通商代表部(USTR)が先月17日に発表した中国製船舶の入港手数料制裁とは別に賦課される可能性があるとみられる。CSSCの傘下には36の造船所が存在する。入港手数料の制裁にCSSCとの取引制裁案まで加わる場合、グローバル海運会社は中国製船舶をさらに避けるようになるものとみられる。韓国の造船会社にとってはこれも恵みとなりうる。海運会社が中国の代わりに韓国の造船会社に目を向け、発注を増やす可能性が高い。
新しい船舶法には、米国の造船業の自立を図る条項も以前より増えた。短期的には外国で建造された船舶を購入するが、長期的には米国で建造された船舶だけを使うということだ。USTRが入港手数料制裁案に含めた、米国産液化天然ガス(LNG)船の義務化条項が船舶法にも盛り込まれた。入港手数料政策には2028年から米国産LNG輸出量の一部は米国で建造された船舶だけで運送されなければならないという内容が含まれた。3年後からは米国で建造された船だけを使うということだ。
また船舶法は、造船業税制優遇などのインセンティブ関連条項の全てに「米国内で建造」(US-Built)という条件を明示した。米国内で船を建造しなければ支援できないという意味だ。米国外の造船会社の立場としては、米国内の造船所を買収などで確保する必要性が大きくなるということだ。
米国の造船業への現地投資の圧力はますます強まる様子だ。韓国の造船会社の苦悩も深まる見通しだ。米国内の造船所は施設が立ち後れているだけでなく、協力業者、専門人材などの供給網まで崩れている。大きな投資費用とリスクがある状況だ。
ひとまずハンファグループは昨年米国のフィリ造船所を買収しており、米国の造船所を保有している豪州の造船会社の持分買い入れも推進している。HD現代は、米国最大の防衛産業造船会社であるハンティントン・インガルスと了解覚書(MOU)を交わし、造船所の直接買収よりは協業から段階的に推進していく動きだ。