本文に移動
全体  > 経済

「不惑」迎えた韓国移動通信の歴史…「CDMA宗主国」のような神話は再びあり得るか

登録:2024-03-28 21:32 修正:2024-03-29 08:34
移動通信40年の歴史ふりかえり 
1984年3月29日「カーフォン」「ページャー」として出発 
「金の卵を産むガチョウ」と呼ばれ、政治的波風 
事業者数 1社→2社→5社→3社→4社に
1990年代半ばに使用されたモトローラの第2世代移動電話端末=資料写真//ハンギョレ新聞社

 韓国の移動通信(1990年代までは移動電話)サービスが29日で「不惑」(40歳)を迎える。民営化の過程を経て、今はSKグループ系列の移動通信会社「SKテレコム(SKT)」となった韓国移動電話が、1984年3月29日に自動車電話サービス(カーフォン)と無線呼び出しサービス(ページャー)事業を始めてからちょうど40年になる日だ。SKテレコムはこの日を創立記念日としている。

 その間に移動通信サービスは、「特別な人」だけが利用するものから、人々が日常生活をするのになくてはならない道具または生計手段に変わった。街頭や喫茶店、食堂などでレンガのような端末を持っていれば「特別な人」だとして羨ましがったのが、今や幼稚園児はもちろん「犬や牛やモノまで」使う(モノのインターネット)時代になった。1990年代半ばまでは移動通信網の供給が足りず「退勤前の携帯電話使用自制」キャンペーンまで行われたが、今は「通話無制限無料」(実際には定額料金に含まれているが)という言葉が一般化しているのも変化した風景だ。

 移動通信は第2移動電話事業者許可の過程で「金の卵を産むガチョウ」と煽られ、どの業種よりも政治的波風を強く受け、それだけ多くの紆余曲折を経た。盧泰愚(ノ・テウ)政権末期、SKグループ(当時は鮮京グループ)は第2移動電話事業権を獲得。金泳三(キム・ヨンサム)政権下で「姻戚企業特恵」(鮮京グループのチェ・ジョンヒョン会長の息子であるチェ・テウォンと盧泰愚大統領の娘であるノ・ソヨンの結婚)をめぐる議論が起きて事業権を返上したが、再び韓国移動通信を譲り受けた。その後、金泳三政権の下半期に「PCS(個人携帯通信サービス)不正」で移動通信事業者が突然5社に増え、構造調整で3社になったことが代表的だ。

 移動通信事業の利権を巡る二つの事件は、文字どおり韓国の財閥企業を上下させることになり、その過程が誰かにとっては「チャンス」になった。盧泰愚政府は「政権後半だから次の政府に任せるべきだ」という指摘にもかかわらず、第2移動電話事業者の選定を強行し、大統領の姻戚企業SKグループが獲得した。次の大統領選挙の過程でこの問題が浮上すると、SKグループは災いになる可能性があると判断して事業権を返上し、この事業権はポスコに回され、第2移動電話事業者の新世紀通信が作られた。

 しかし、移動通信事業に未練を捨てられなかったSKグループにとって、これが災い転じて福となった。SKグループに第2移動電話事業権を返上するよう圧迫したことに負い目があった金泳三政権を煽り、韓国通信公社(現在はKT)の子会社だった韓国移動電話を民営化させ、買収する戦略を展開して成功した。第2移動電話事業権を持ってサービスを始めていたならば後発事業者だったが、韓国移動電話を譲り受けて一躍先発事業者になったのだ。韓国移動電話の民営化当時、加入者が急速に増え、株価が文字通り一夜あければ暴騰している状況が続くと、韓国通信公社は可能なかぎり民営化を遅らせようとし、SKグループは一日も早く買収契約を結ぶために全力を尽くした。

 SKグループはまた別の「チャンス」もつかんだ。第2移動電話事業権の返上によって、移動電話事業の許可を受けて推進するためにグループ系列会社の投資と人材派遣で作った「大韓テレコム」は抜け殻だけの会社になったが、チェ・テウォン会長(当時は部長)は系列会社が持っていたこの会社の持分を1株当り400ウォン(額面価格は5千ウォン・買収総額が4億ウォン)で全量買い取った。その後、大韓テレコムは韓国移動電話の電算システム購入およびソフトウェア開発代行などのサービスを遂行し、急速に成長した。

1997年11月17日、ハンギョレが1面で報じた公取委の「鮮京の不当インサイダー取引調査」関連記事紙面//ハンギョレ新聞社

 1997年にハンギョレが独自報道した「SKテレコムの不当な差別的取り扱い行為に対する公正取引委員会審査報告書」によれば、大韓テレコムは主要系列会社から事業の機会と仕事を譲り受け、通行税を取る方式で急速に企業価値を高め、チェ会長は大韓テレコムを利用して継承の基盤を設けた。大韓テレコムはその後、SKグループ系列のシステム統合会社などと相次いで統合する過程を経て、SK C&Cに社名を変えた後、グループの持ち株会社に合併された。チェ会長は、大韓テレコムの持分をもとに持ち株会社の持分を確保し、現在の経営権を持つようになった。持分投資で最高の収益率を上げたと言われている。

 その後、大統領の息子までがかかわった「PCS不正」が起きる過程で移動通信は再び大きく揺れ動いた。当初、政府(当時は情報通信部が主務省庁)はPCSを移動電話と同じサービスとみなし、事業者を一つだけ許可して移動電話業界を3つの事業者の構図にする計画だった。第2移動電話事業権の返上問題の影響で重要な移動電話子会社を奪われた韓国通信公社に事業権を与える考えだった。ところが、大統領府の経済首席出身者が情報通信部長官に任命され、方針が変わった。PCSを移動電話ではない別途の新しいサービスとみなし、3つの事業者を選定するように政策が変更された。

 PCS事業者許可プロモーションのために、通信装備事業を営む大企業は通信サービス市場に進出できないようにしていた規制も解かれた。これによって、通信装備事業を展開していたサムスン、LG、現代までがPCS事業に乗り出し、韓国通信、LG、ハンソルにそれぞれ事業権が与えられた。その後、金大中(キム・デジュン)政権になってPCS不正疑惑に対する検察捜査と聴聞会が開かれ、前大統領の息子と事業者選定当時の情報通信部の政策当局者らが刑務所に送られたり、国外逃亡する事態が起きた。

大統領の息子まで巻き込んだ「PCS不正」関連のハンギョレ1998年報道紙面//ハンギョレ新聞社

 韓国政府は再びPCSを「周波数だけが違う移動電話」と規定し、にわかに国内の移動電話事業者が5社になった。文字通り「戦国時代」になり、移動通信の歴史上、利用者が最ももてなされた。端末は無料で、料金も安かった。一方、事業者には苦しい時だった。何よりマーケティング費用の負担が大きかった。SKテレコムを中心に「これでは事業者の成長はもちろん、産業としての発展も期待しがたく、究極的には利用者にも損」という共通認識が作られ、政府に事業者間の買収合併を通じて事業者数を減らす政策を展開することを要求した。

 情報通信部もやはり各サービス別に3つの事業者体制が最も適正だという考えだった。これに先立って政府は、韓米通信交渉とウルグアイラウンドの交渉結果で通信市場の開放が避けられなくなると、内部的に国内企業に通信事業を大勢許可し、外国事業者が「韓国通信市場に入ってもうまみがない」と思わせる戦略を立てた。通信市場を市内・市外・国際・移動電話とポケベル・周波数共用通信・発信専用携帯電話などに細分化し、各サービス別に3事業者が競争するようにしたのも、このような戦略に従ったものだった。情報通信部のチョン・ホンシク情報通信政策室長(当時)は記者団に対し、「3事業者体制を作ってこそ、談合せずにうまく戦うことができる。サービス別市場が飽和化したら、買収合併を通じて3つの総合通信会社体制に持っていくだろう」と話した。

 政府の戦略と移動電話事業者の利害が合致し、移動電話事業者間の買収合併が続いた。SKテレコム(011)が新世紀通信(017)を買収し、移動電話用に使うのに最も良い帯域である700MHz帯域周波数を独占し、韓国通信(016)はハンソルテレコム(018)を合併した。PCS不正でゆがめられた移動電話市場が、当初の計画通り3事業者体制に戻ったわけだ。この時からサービス名も移動電話から「移動通信」に変わった。当時に解かれた通信装備と通信装備業界間の仕切りは、約20年後にLG電子が携帯電話事業を放棄したことにより自然と戻った。

 以後、移動通信事業者は5事業者が「無限競争」をする経験を二度としないということに共感し、時を同じくして政府も「管理競争」に乗り出し、移動通信3社の独寡占体制が作られた。ついに、産業発展と利用者保護を名目とした政府の管理競争政策は「事業者だけを保護」という罠に陥り、第4の移動通信事業者を選定し「オトリ」として使うという脅迫にもびくともしないほど移動通信3社の独寡占体制は固まった。

韓国が初めて商用化したCDMA方式の第2世代携帯電話の試演の様子=SKテレコム提供//ハンギョレ新聞社

 韓国の移動通信の歴史では、政府と韓国電子通信研究院(ETRI)の主導で1996年1月にCDMA(符号分割多重接続)方式の移動電話サービスを世界で初めて商用化した経験が欠かせない。「神話」として記録されている。これが世界標準の一つに挙げられ、新しい(第2世代)移動電話時代を開き、韓国が「CDMA技術宗主国」になった。だが、移動通信3社がすぐには金にならないとして28GHz帯域周波数を放棄し、政府が引きずられていく現在のようすでは、韓国でCDMA世界初商用化のような神話は再びあり得るのか、疑問に思う。

キム・ジェソプ先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/it/1134239.html韓国語原文入力:2024-03-28 14:56
訳J.S

関連記事