オランダを国賓訪問中の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が「半導体同盟」を成果として掲げていることについて、国内の半導体業界の専門家の間では「成果をあげている企業が用意した食卓にスプーンだけのせたようなもの(便乗している)」との反応がみられる。政府があえて「半導体同盟」に言及したことについても、中国を刺激し、国内の素材・部品・装備産業に否定的な影響を及ぼすという懸念も示されている。
産業通商資源部は13日のブリーフィングで、尹大統領がオランダの半導体企業ASMLを訪問したのを機に両国の政府と企業同士の具体的な半導体協力事業の推進に合意したとし、これは半導体の超微細化技術の供給網の構築を通じて韓国の先端半導体の競争力確保に寄与すると評価した。12日(現地時間)、韓国政府とオランダ政府は、サムスン電子とASMLによる次世代半導体製造技術R&Dセンターの設立▽SKハイニックスとASMLによる極端紫外線露光装置の水素ガスのリサイクル技術の開発▽今後5年間で半導体専門人材を500人養成するための専門教育施設の新設の3件の業務協約を結んだ。ASMLは半導体の微細工程作業を支援する露光装置製造部門で、事実上の独占的地位にある半導体装置メーカーだ。
韓国の半導体業界内では、ASMLとサムスン、SKハイニックスの協力はかなり前から議論されてきた事案として知られている。ASMLにとっては、半導体製造大国である韓国にR&Dセンターを作ることは、次世代露光技術を確保するのに有利だ。サムスン電子も先端メモリ開発に必要な次世代露光装置を迅速に確保できるため、利害が一致する。ASMLが半導体ファウンドリ(受託生産)企業のTSMCのある台湾において、今年下半期から生産工場・研究開発センター建設プロジェクトに約300億台湾ドル(約1360億円)を投資することを決めたのと、同じ脈絡だ。一方、サムスン電子とASMLは韓国へのセンター建設に1兆ウォン(約1100億円)を投じることを決めたが、各社の投資金額は公開していない。
匿名の半導体専門家は「協力関係のなかった企業同士の業務協約なら政府の役割は大きいと考えるべきだが、サムスンやSKハイニックスはASMLに投資したり装置を多く購入したりしてきた協力会社だ。大統領の外遊の結果として宣伝するのは、自分たちでうまくやっている企業が用意した食卓にスプーンだけのせたようなもの」だと語った。そして「政府はうまくいっている半導体製造業に便乗して宣伝効果を狙うのではなく、ファブレス、素材・部品・装備などの半導体の底辺に関心を持つべきだ」と付け加えた。
尹大統領が「半導体同盟」を強調することに対する懸念もある。半導体産業構造先進化研究会のノ・ファウク会長は、「同盟という表現は、米国が中国をけん制することを目的とするチップ4(韓国、米国、日本、台湾)同盟のように政治的な文脈で使われるため、中国を刺激しうる」と述べた。韓国貿易協会の資料によると、今年1~10月の韓国の中国に対する半導体装備輸出額は6億9076万ドルで、昨年同期(11億3057万ドル)に比べて38.9%減少している。