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[コラム]半導体同盟? 習慣性「物乞い外遊」だ

登録:2023-12-13 07:37 修正:2023-12-13 09:04
オランダを国賓訪問する尹錫悦大統領とキム・ゴンヒ女史が11日、京畿道城南市のソウル空港で専用機「空軍1号機」に乗り込む前に、出国のあいさつをしている/聯合ニュース

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領夫妻の今年13回目の外遊となるオランダ訪問日程(首脳会談、ASML、李儁(イ・ジュン)烈士博物館)を見ると、少なくとも3つのことが分かる。特別な外交懸案がないこと、国内向けに企画されたこと、財閥が動員されたこと、だ。

 「半導体同盟の強化」という大義名分は実務陣が事後的に作り出した可能性が高いとみられる。7ナノメートル以下の最先端半導体を生産できる極端紫外線(EUV)露光装置を世界で唯一生産するASMLのクリーンルームは、サムスン電子のイ・ジェヨン会長が昨年すでに訪問している。国内企業との協力は政府がかかわらずとも進んでおり、米国の先端半導体の対中国輸出禁止方針にオランダ政府とASMLも同調しているので、「半導体同盟」は韓国政府があえて改めて強化する必要はないし、強化することもできない。ASMLが自社部品を修理してリサイクルする再製造センター(2400億ウォン投資)も、すでに京畿道華城市(ファソンシ)で建設中だ。大統領は企業を支援するために外遊を計画したというより、外遊するために半導体を利用したのではないかという疑問が生じるのは、自然なことだ。

 釜山(プサン)万博についても似たような疑問が生じる。昨年7月までは、開催に名乗りを上げた釜山市ですら担当組織が1チームに過ぎないほど事実上放置していたが、尹錫悦政権がなぜ急に国の力量を注ぎ込むように先頭に立ったのかということだ。これも外遊のための企画だったと疑うには規模が大きすぎて、あえてそうする気は起きない。だが、でなければ一体なぜ、サウジのリヤドが有力だという多くの外国メディアの報道を無視してまで、果ては自分たちまでだましながら大騒ぎしてブルースを踊ったのか、皆目見当がつかない。

 奇異なことが多く起こる尹錫悦政権だが、財閥の会長たちを一列に並べて釜山の市場で試食する写真は断然圧巻だった。万博誘致の失敗で総選挙を控えた釜山の有権者がざわついたことから、大統領は異例にも謝罪し、財閥の会長まで動員したのだ。事実上、国内政治に財閥を利用したのだ。新たな政経癒着が芽生えているのではないかと疑問を抱くのも当然だ。

 サムスン電子のイ・ジェヨン会長が「イ・ジェヨン」を連呼する市民に対して、人差し指を口に当てて「シッ」という仕草をしたのは、尹大統領と財閥会長たちの関係を推察させる歴史的なシーンだった。イ会長にとっては、尹大統領は自分の罪を赦免してくれたうえに、莫大な法人税も負けてくれる恩人なので、呼ばれれば駆けつけざるを得ないだろう。他の財閥会長たちも、民主化以降では最も強力に検察権を握っている大統領なのだから怖れざるを得ない。尹政権の発足後、カカオのような新興財閥はたたいても、10大財閥を捜査するという話は聞いたことがない。財閥の会長としては、協力する代わりに安全が保障されるわけだ。検事時代、遊興酒場で自分よりずっと年上の大企業の会長に、靴に爆弾酒を注いでやった(「TV朝鮮」で放送された内容だ!)という尹大統領だから、その息子筋の今の会長たちはどれほどかわいく見えるだろうか。財閥を習慣的に動員する行為そのものが、尹大統領の強調してやまない自由市場経済を侵害するものであることを直言する人間が今、尹大統領の周辺にはいない。

 映画「ソウルの春」の政治軍人たちを見て尹錫悦師団の政治検事たちを思い浮かべたという人は多いが、改めて思い出す違いが一つある。全斗煥(チョン・ドゥファン)政権はソウル五輪の誘致に成功したという点だ。臨時大統領の崔圭夏(チェ・ギュハ)が放棄を宣言した五輪招致カードを復活させ、目的を果たしたのは、公式申請からわずか4カ月後の1981年9月だった。同じ境遇にある第三世界の同情票を得た。また、すでに五輪開催経験のあるライバル日本の経済力がさらに強まることを懸念した米国と英国さえもソウルに傾かせた。逆に尹錫悦政権は釜山万博誘致合戦で財閥と韓流に頼って成金のように振舞い、イデオロギー的偏向外交によって中国の影響力の強い南米やアフリカなどの第三世界の支持を失った。全斗煥軍事政権よりも無能で安易だ。

 尹錫悦政権が何かにつけ財閥と韓流に手を差し出す「物乞い癖」を捨てられず、過去の成功を干し柿をとるように食いつぶすのに夢中になっている間に、潜在成長率や出生率をはじめとするあらゆる指標は、韓国がピークを過ぎつつあることを告げている。しかし尹大統領は関心がない。「月に一度外遊」と「大統領ごっこ」で浮かれているだけだ。

//ハンギョレ新聞社

イ・ジェソン論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1120054.html韓国語原文入力:2023-12-12 14:26
訳D.K

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