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OECD、パンデミックによる貿易退潮と脱グローバル化論に「根拠薄い」

登録:2023-06-10 06:27 修正:2023-06-10 10:05
OECD経済見通し「ソフトランディングに向けた長い道のり」
OECDの経済見通し//ハンギョレ新聞社

 コロナパンデミックを前後に、世界的に商品貿易取引量が次第に減っているという脱グローバル化論について、経済協力開発機構(OECD)が「実証的・経験的証拠が薄い」と診断した。昨年、世界の工業製品の貿易量はこの10年間の平均より0.6ポイント増加した。

 OECDが9日、「軟着陸に向けた長い道のり」(A long unwinding road)」という題で発表した「経済見通し」には、「主要国の相互間貿易パターンの変動」を取り上げた部分がある。これによると、グローバル商品の貿易量(物量ベース)は、2022年は世界総生産(GDP)の約22%に達している。これはこの10年間(パンデミック期間を除く)の平均より0.6ポイント高い数値。報告書は「米中貿易紛争とサプライチェーンの亀裂のような制約条件のもとでも、世界における工業製品の交易は2008年のグローバル金融危機以後、着実に増えている」と強調した。

 報告書はまた、貿易の開放度を示すグローバル貿易集約度(trade intensity・取引量ベースでみた対GDP比商品交易の比重)は多くのOECD加盟国で増加しているとし、「世界レベルで全般的にみれば国際貿易は安定した流れを維持している」と分析した。物量ベースで貿易集約度は、OECD加盟国でこの10年間に2.6%増加しており、欧州連合(EU)や日本、米国でそれぞれ6.9ポイント、2.5ポイント、1.0ポイント増加した。この10年間の商品貿易集約度をみても、「グローバルな貿易の下降傾向が現れている」という主張はその実証的証拠がほとんどないという指摘だ。ただし、中国経済の場合、貿易集約度が同期間で3.5ポイント低下した。報告書は「中国の貿易減少は国内自主生産・調達の増加で輸入が減少したことに伴うもの」だと説明した。

 最近の主な先進経済の貿易取引動向については、品目別および取引国別に貿易摩擦増加の影響を受けているが、全体的なグローバル貿易体制は最近の貿易摩擦を次第に吸収していると報告書は分析した。報告書は 「(様々な制約条件の中でも)商品、特に工業製造製品の貿易取引は金額ベースでも着実に成長している」と指摘した。多国間グローバル貿易・投資関係はサプライチェーンの亀裂と米-中貿易葛藤で脆弱になる転換期に入っているが、同時に二国間貿易では国家間連係がより一層強化されているとし、「世界各国の貿易での平均関税水準は、米中関税報復戦争を除けば全般的にこの5年間ほとんど変わっていない」と明らかにした。

 ただし、報告書は「様々な非関税の壁で貿易費用が高くなっており、各国が貿易開放度を減らそうとするリスクも増加している」とし、「各種指標からみて、国際貿易体制は安定性を示しているが、同時にこれらの指標は米中貿易摩擦のような国家レベルの貿易において最近起きている著しい変動を隠す原因になり得る」と指摘した。

チョ・ゲワン先任記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/1095235.html韓国語原文入力: 2023-06-09 16:38
訳H.J

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