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「TikTok問題」に悩む韓国政府…「個人情報の国外移転」通商圧力にどうするか

登録:2023-04-21 06:53 修正:2023-04-21 09:10
国内法の上に存在する協約…米国・EUが主導 
「『データ通商』圧力激しいが、判断の基準がない」
1日、EU欧州委員会のディディエ・レンデルス司法担当委員が個人情報保護委員会を訪問し、韓国とEU間の自由なデータ移転に対する協力強化の方法を議論している=個人情報保護委員会提供//ハンギョレ新聞社

 米国や英国などが、国民の個人情報が中国に流出することを防ぐとして、政府レベルで「TikTok」などの中国のオンラインサービスの利用を禁止しているなか、韓国政府も国民の個人情報の国外移転についての悩みが深まっている。米国と欧州連合(EU)が、TikTok問題については自国民の個人情報保護を盾にしながらも、他国民の個人情報を自国に吸収することについては主導的に道を開いているためだ。国内法で原則的に禁止されている個人情報の国外移転が、国際協定によっては無防備に可能になる構造であるため、「デジタル通商圧力」に対する懸念の声が出ている。

 個人情報保護委員会は19日午後、ソウル中区(チュング)の銀行連合会で「個人情報とデジタル通商」をテーマに「個人情報未来フォーラム」を開催した。個人情報委員会のコ・ハクス委員長は「最近、最も悩みが多い領域は、国民の個人情報の国境間の移転」だとしたうえで、「EUに会うと米国と親しいのか言われ、米国に会うとEUと議論中なのかと尋ねられ、あたかも母親が良いか父親が良いかと問われるようで困難だ」と明らかにした。協定をめぐる圧力を遠回しに表現したわけだ。

 先月改正された個人情報保護法によると、新たな同意なしに個人情報を国内から国外に移転することは原則的に禁止されている。だが、国家が国際協定や条約などを結ぶ場合は例外的に許容される。このように「個々の国家の法的手続きとは関係なく、個人情報を国外に移転できる環境」を作るために、米国やEUなどが国家間協定を主導しているのだ。

 「金・張法律事務所(Kim & Chang)」のチョン・ヨンジン弁護士は、フォーラムでの提案を通じて「すでに米国も、自由貿易協定(FTA)のように巨大な協定でなく、自分たちにとって必須ないくつかの要素だけを取った枠組み作り(フレームワーク)を行っている」と説明した。昨年4月、米国商務省の主導で、アジア太平洋経済協力(APEC)が開発した「越境プライバシールール(CBPR)」を独立させ、米国・韓国・日本・シンガポールなど9カ国の加盟国の企業を対象に認証を与えているのが代表的だ。アップル、シスコ、IBMなど60社あまりの巨大IT企業がこの認証を受け、韓国内ではネイバーやNCソフトなどがこれを取得した。認証企業の間では情報セキュリティーレベルが高いと認められ、現地の法律順守の有無の確認手順なしに個人情報をやりとりすることが可能だ。

 EUが主導する「個人情報の移転に対する十分制認定」は英国や日本などが対象だ。韓国は2021年末にEUから十分制認定を受けた。十分制認定を得た国は、EU加盟国の国民の個人情報を国内に持ち込む場合、個々の企業レベルでの承認手続きが免除される。EUは同じ方式で加盟国の企業が韓国国民の個人情報を受け取ることが可能な水準の協定を望んでいる。最近でもEU欧州委員会の司法担当委員が韓国を訪問し、この問題を協議したことが分かった。

 フォーラムでイ・サンヨプ教授(高麗大学)は「TikTokの事例のように、国家安保の観点でプラットホームを規制したり、反対にデータ移動の自由化を主張する状況がある」としたうえで、「韓国は先進国からデータ主権を保護できるよう制限し、他方ではデータ競争力を開発するツートラック戦略が必要だ」と述べた。

 「情報主体からの疎外」に対する懸念も出ている。進歩ネットワークセンターのオ・ビョンイル代表は「個人情報の国外移転問題を通商政策の流れだけでみると、国益という名のもとで企業の立場だけを貫徹することになり、問題が大きい」と指摘した。個人情報保護委員会のカン・ジョンファ委員(韓国消費者連盟会長)は「国民は自分の情報が国外に移転されるという認識も持ちにくく、問題点もよく分かっていない状況」だと指摘した。産業通商資源部のコ・ジャンウォン・デジタル経済通商課長は「様々な意見を聞き、個人情報委員会と議論していく」と述べた。

 コ・ハクス委員長は「法改正によって個人情報の国境間の移動に対する変化の可能性が高まり、世界的にも転換期であると同時に混乱期」だとし、「先例自体がほとんどない領域であるのに加え、韓国の立場をどう持っていくのかの基準にするほどの研究もほとんどなく、学界の関連研究が急がれる」と述べた。

イム・ジソン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/1088707.html韓国語原文入力:2023-04-20 15:42
訳M.S

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