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安心番号、マスクアプリ…韓国のシビックハッカー、社会の悩み解決の主役に

登録:2021-03-08 06:29 修正:2021-03-08 10:47
大衆利用施設への訪問客の手書き名簿で 
個人情報が流出するのを懸念し 
市民ハッカー7人、安心番号を開発 
昨年はマスクアプリも登場 
公務員や学生まで様々な人が参加 
 
今自分に必要なものに着目することで 
開発コストを節減し、スピードも速い
マスクを買うために薬局の前に並んだ市民たち。新型コロナの発生初期に、市民ハッカーらが作った公的マスクアプリが、市民らのマスク購入における不便を軽減した=キム・ヘユン記者//ハンギョレ新聞社

 食堂やカフェなど大衆利用施設の訪問客の手書き名簿が、誰でも見られる状態で事実上放置されているのを見て、「迷惑メール送信とテレマーケティング手段に悪用される可能性がある」と懸念する人が多かった。手書きで残された連絡先のうち、ほぼ半数が虚偽の記載で、防疫効果を落としているという指摘もあった。

 「個人安心番号」(以下、安心番号)でこの問題が解決された。安心番号は数字4桁とハングル2文字の計6文字の組み合わせで、「12カ34ナ」のように構成される。携帯電話番号別に一つずつ自動発給され、スマートフォンのQRチェックイン画面で確認できる。大衆利用施設を訪問する時、手書きで連絡先を残さなければならない時は、電話番号の代わりに安心番号を残せば良い。

 安心番号は「シビックハッカー」(Civic Hacker)らの「シビックハッキング」で誕生した。個人情報委員会は「クォン・オヒョン、ソン・ソンミン、チン・テヤン、ユ・ギョンミン、キム・ソンジュン、オ・ウォンソク、シム・ウォニルら、『コード・フォー・コリア』(codefor.kr)で活動しているシビックハッカー7人のシビックハッキングによって安心番号が誕生した」と裏話を公開し、「安心番号を使うたび、社会的問題を解決するために率先してくれた市民たちを思い出してほしい」と述べた。シビックハッカーらがシビックハッキングで安心番号を誕生させた過程を紹介する映像も作られた。

 シビックハッカーとは、社会問題や日常生活の中の不便をデジタル技術を活用して解決するため、直接乗り出した市民開発者たちを指す。「市民ハッカー」とも呼ばれる。シビックハッキングとはシビックハッカーの問題解決行為のこと。「責任感を持って怒りを示す行為」と表現されることもある。コード・フォー・コリアや「コードナム」(codenamu.org)、「ノルチェウム」(nullfull.kr)などの集まりに参加し、共に社会問題と不便事項に怒り、技術を活用して解決する方法を探る。

ユン・ジョンイン個人情報保護委員会委員長が個人安心番号を開発したシビックハッカーらと記念撮影を行っている。左からシム・ウォニル、オ・ウォンソク、ソン・ソンミン、ユン・ジョンイン委員長、クォン・オヒョン、チン・テヤン=個人情報保護委員会提供//ハンギョレ新聞社

 安心番号誕生秘話に登場するコード・フォー・コリアのシビックハッカーは、「スラック」というチャットプログラムを活用し、シビックハッキングを行う。「大衆利用施設の訪問客の連絡先が放置されていることに怒りを覚えていた時、ユン・ジョンイン個人情報保護委員長が代案を探しているという話を聞いた。シビックハッカーたちとの議論を経て、9つのアイデアを伝えたところ、安心番号が採択された。予算があまりないという話を聞いて、シビックハッキングで解決すると伝えた」。コード・フォー・コリアで対外コミュニケーション窓口の役割をするクォン・オヒョン(社会的企業「スローワーク」代表)オーガナイザー(コード・フォー・コリアでは影響力のある活動家をこう呼ぶ)は、ハンギョレのインタビューで「市民が社会問題や生活上の不便な事項について共に悩み、クラウド方式の技術ソーシングを通じて解決するシビックハッキングの典型的なパターンを見せてくれる事例。安心番号のアイデアを出し合って開発に参加した7人の中には、公務員や中学生もいた」と語った。

 コード・フォー・コリアのシビックハッカーらは、昨年2月のマスク品薄の時は、政府に公的マスクのデータの公開を要求し、貫徹させた。また、政府が公開したマスク供給在庫データに基づき、公的マスク在庫量を薬局ごとに確認できるアプリを開発し、市民のマスク購入を支援するとともに、公的マスク供給政策の効用性を高めることに貢献した。クォンさんは「政府がマスクのデータを公開してから4日後にアプリが作られた。いま自分に必要なものに着目するシビックハッキングだからこそ、短時間での開発が可能になった」と話した。

大衆利用施設の訪問客が名簿に手書きで連絡先を書いている/聯合ニュース

 シビックハッキングには、政治・社会問題や生活上の不便な事項を技術を活用して直接解決しようという考えを持つ人なら誰でも参加できる。デジタル技術を知らなくてもいい。市民として自分の問題だと考え、ともに怒り、アイデアと意見を加えるだけでも十分だ。クォンさんは「新型コロナの感染拡大をきっかけにシビックハッキングが大きく活性化している。コード・フォー・コリアに集まり、シビックハッキングをするシビックハッカーだけでも380人にのぼる」とし、「公務員や会社員、大学生、高校生、中学生、主婦など、多様な人々が参加している。悩みを他人と分かち合うために訪れる人も多い」と語った。

 技術の社会的活用の性格を持つシビックハッキングは、災害が発生したり、政治と社会の革新に対する要求が高まっている時に活性化する。韓国では狂牛病(BSE)事態、セウォル号事件、中東呼吸器症候群(MERS)事態、弾劾、ろうそく集会、新型コロナの大流行などがきっかけになった。シビックハッキングを行うシビックハッカーの集まり(ネットワーク)だけでも、全国で数十カ所があるという。政府が発表するデータのうち、表や数値になっているものを町の地図上に表示し、簡単に活用できるようにするなど、市民の目線で不便な部分を直し、変えていく活動を行っている。

コード・フォー・コリアのホームページのトップページ//ハンギョレ新聞社

 シビックハッキングは海外でも活性化している。米国では2009年、創意的でデジタル技術開発能力を備えた市民を公務員とつなぎ、公共の難題を解決するアプリとシステムを作ろうというアイデアで生まれたNGO「コード・フォー・アメリカ」が代表的な事例だ。雪の多いボストンの市民のため、大雪の時も消火栓の場所を見つけやすいように案内するアプリを開発し、ハワイ住民のためには津波警報アプリを作った。ゲーム開発者出身でコード・フォー・アメリカの創立を主導したジェニファー・パルカ氏は講演で「シビックハッキングで政府公務員に緊張感を与えることができる。机上の空論で数年かかることを、市民はわずか数日で解決できる」と述べた。

 日本の「コード・フォー・ジャパン」は大地震を機に、台湾の「g0v (Gov Zero)」はひまわり学生運動(台湾の大学生たちが中国と貿易協定締結を宣言した立法院を占拠して行った座り込み)を土台にしている。30代の天才ハッカーの長官として知られる台湾のオードリー・タン・デジタル担当政務委員もシビックハッカー出身だ。タン委員は、自分の執務室の日誌や訪問者と交わした会話内容などをすべてインターネットに公開し、「開かれた政府」を目指すシビックハッキングの精神を実践している。

キム・ジェソプ先任記者・人とデジタル研究所長(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/science/technology/985797.html韓国語原文入力:2021-03-08 04:59
訳H.J

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