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韓国の国民的メッセンジャー「カカオトーク」障害3日目…同時にポータルなども停止

登録:2022-10-18 06:49 修正:2022-10-18 08:30
リアルタイムバックアップ体制なしに運営されていた事実が明らかに 
利用者・政府・政界・業界、一斉に「どうしてこのようなことが」 
災害復旧システムの設計方式に応じて費用変わる 
「経営の選択の問題…行政サービス、信じて使ってもいいのか」
SK C&Cの板橋データセンターの火災により障害が発生したカカオは16日、カカオ共同体アラインメント共同センター長でありカカオ各者代表のホン・ウンテク氏を委員長とする非常対策委員会を設立したと発表した。写真は17日午前、京畿道城南市のカカオ板橋アジトの様子/聯合ニュース

 SK C&Cの板橋(パンギョ)データセンターの火災で、「国民的メッセンジャー」といわれるカカオトークが使用できなくなってから3日が過ぎても完全復旧せず、利用者の不便と被害が広がるなか、利用者、政府、政界およびIT業界からは「国民の日常生活の土台であり主要な行政サービスまで代行しているカカオトークが、サーバー(サービス用コンピュータ)の二重化(ミラーリング、2台のサーバーが同機能を他の場所で同時に遂行)体制も備えないまま運営されていたなんてありえない」という指摘が広がっている。関連法・制度の整備や監督を疎かにしていた政府への批判の声も高まっている。

 国会の科学技術情報放送通信委員会のチョ・スンレ議員(野党「共に民主党」)は17日、CBSラジオ「キム・ヒョンジョンのニュースショー」のインタビューで、「カカオはサービス運営に必要なデータをすべてバックアップしていたと言っているが、実際には正常化が遅延した」とし、「これは、システム復旧には至らなかったという意味だが、ならば、いくらデータをバックアップしていたとしても(災害対応の側面では)意味がない」と指摘した。さらに、「カカオトークのサービスは無料サービスなので、災害復旧システム構築のための投資を出し渋っていたものとみられる」と批判した。

 これに先立ち、カカオ対外協力部門のヤン・ヒョンソ副社長は、16日に開かれた記者会見で「盆唐(プンダン)や安養(アニャン)など全国4カ所にデータセンターを分散していたが、火災現場への接近が難しいうえ、サーバー3万2000台が同時にダウンしたのはIT業界の歴史を振り返っても異例なことで、復旧が遅れている」と明らかにした。多数のIT業界専門家は本紙の電話インタビューで、これについて「カカオがシステムオペレーティングに必要なデータをバックアップしておいたのかどうかは分からないが、主要なサーバーがダウンした時、ただちに予備サーバーで代替できるようにするリアルタイムのシステムバックアップ体制の構築を疎かにしていたものとみられる」と口をそろえた。

 業界の専門家はまた「火災は災害対応訓練の際に発生の可能性が最も高いとみられる状況であるにもかかわらず、予測できず対応が遅かったというのでは話にならない」と批判した。ある外国系クラウド企業の関係者は「このような大規模なサービスを運営する企業が、これほどまで二重化作業の手配をしていなかったということは信じられない」と述べた。この関係者は「特にダウムのポータルやウェブトゥーンだけでなく、暗号資産(仮想通貨)の取引所(アップビット)のログインまでカカオトークのアカウントを使うようにして認証システムを統合していたというのに、認証サービスやサーバーを分離しておかず、一度にダウンしたというのはあきれてしまう」と付け加えた。

 韓国の大手IT企業の関係者は「(SK C&Cのような)データセンターの運営企業は、サーバー設置のための空間を提供するのであり、結局、その内部設計をどうするのかは(カカオのような)顧客企業の担当」だとしたうえで、「データとシステムのバックアップをリアルタイムにするのか、1時間または10分に一度にするのかに応じて費用が変わるが、これはすべて個々の企業内部の経営判断を必要とすること」だと付け加えた。別のIT企業のソフトウェアエンジニアは「カカオトークほどのサービスの核心機能は、リアルタイムバックアップ体制を備えておき、火災はもちろん地震や洪水などにも備えておかなければならない。これができていなかったというのは、本当におかしなことだ」と述べた。

 国民生活に密接な行政サービスまでカカオトークなどを通じて行われている状況であるだけに、今回の件で、カカオにサービスを安定的に提供する義務と責任を厳しく課す方法や、制度的な装置が設けられなければならないという指摘も出ている。科学技術情報通信部はこの日午前、「2022年政府イノベーション優秀事例褒賞」の報道資料を公開し、「モバイル電子告知システム」の導入成果を広報した。科学技術情報通信部によると、6月末時点で政府省庁の8カ所、地方自治体285カ所、公共機関47カ所などが各種の請求書や案内文をテキストメッセージやカカオトーク、ネイバーアプリなどで発送している。科学技術情報通信部は「昨年だけで年間1億件の電子告知が流通し、260億ウォン(約27億円)の費用を節減した」と語った。

 嘉泉大学人工知能・ビッグデータ政策研究センター長のチェ・ギョンジン氏(法学教授)は、「結局は政府が行わなければならないサービスを民間が代行したわけだ。だが、政府の行政サービスに問題がある場合、担当者を懲戒したり予算を投入しシステムを変えることができるが、民間事業者に対しては、現時点ではそのような責任を問うことは難しい」と述べた。さらに、「少なくとも、政府のサービスを代行するサービスの場合には、民間企業が運営するとしても、最小限の安定性と信頼性を担保するための基準が設けられなければならない」と付け加えた。

 参与連帯はこの日、声明を出し「プラットホーム企業が提供するサービスが、基幹通信サービスと同程度の公共財の役目を果たすようになった」とし、「付加通信サービス事業者にも、基幹通信サービス事業者(通信会社)に準ずる責任と義務を付与しなければならない」と要求した。参与連帯の関係者は「カカオというプラットホームが市場で現在のような独占的な地位を享受するようになったのは、政府が様々な機会を提供し便宜を図ったことも一役買った」とし、「任せておきながら十分に監督しなかったことが、このような事態を招いた」と批判した。

チョン・インソン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/it/1063042.html韓国語原文入力:2022-10-18 02:41
訳M.S

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