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2時間で売り切れた軍供給の尿素水…「マスクのように情報共有を」

登録:2021-11-13 03:22 修正:2021-11-13 07:13
軍部隊の尿素水を緊急投入したにもかかわらず、1日で売り切れ 
「政府の対策は体感できず」…来週の供給難緩和に期待
12日午前、仁川市中区の築港大路のあるガソリンスタンドの前の道路で、尿素水を買いにやって来たトラックが長蛇の列を作っている//ハンギョレ新聞社

 「尿素水が売り切れたのなら教えてくれなきゃ困る。1時間も待ってしまったじゃないか」

 12日午前11時ごろ、仁川(インチョン)港の埠頭に隣接した仁川市中区(チュング)の築港大路にあるガソリンスタンドでは、大声が飛び交っていた。45トントラックの運転手Pさん(43)がガソリンスタンドの従業員に向かって声を荒げていたのだ。Pさんは地方に荷物を受け取りに行く途中、ここに尿素水があるという同僚運転手のメッセージを受け取り、ガソリンスタンドの前で1時間待ったという。

 前日、このガソリンスタンドには軍部隊から供給された10リットル入りの車両用尿素水500本が搬入された。前日に売れ残った150本は、この日午前9時から再び販売された。軽油を100リットル入れれば、1本で1万2000ウォン(約1160円)の尿素水を2本購入できるという条件まで付いていた。しかしPさんの番が来る前に、尿素水はわずか2時間で売り切れた。

 早朝から尿素水を求めるトラック、トレーラー、タンクローリー、ワゴン車などが300メートル以上の列を作っていたためだ。ワゴン車を使って自動車部品の小売業を営むLさん(62)は「車の尿素水を補充しろという警告灯がついたので、焦って光明(クァンミョン)から仁川まで走ってきた」とし「外国に注文した尿素水も配送が遅れているため、今日尿素水が買えなかったら来週から仕事ができないのではないかと心配」と訴えた。

12日午前、京畿道平沢市浦升邑の浦升工団路のガソリンスタンドの様子。尿素水注入器の電源が切れている//ハンギョレ新聞社

 同時刻、国内最大の輸出入港である平沢(ピョンテク)港の周辺のガソリンスタンドも状況は似ていた。平沢港から1.7キロほど離れたガソリンスタンドの現代オイルバンク浦升(ポスン)店には、早朝から尿素水を求めて立ち寄っていくトラックが少なくなかった。

 平沢港近くの6つのガソリンスタンドには、前日に軍の尿素水が15トン、ガソリンスタンド1店舗当たり250本(10リットル入り)供給された。輸出入の物流を止めないよう、港湾立ち入り証が前にはってあるコンテナ輸送トラックに対してのみ供給される物量だ。

 しかし、販売開始から半日で大半の尿素水は売り切れとなった。浦升店のL総務(66)は「前日の朝に事務所の前に積んでおいた尿素水の箱が1つも残っていない。この道路沿いに並んでいる6つのガソリンスタンドが、みな同じ状況」だと述べた。

12日午前、京畿道平沢市浦升邑の平沢港のある物流倉庫にコンテナが置かれている//ハンギョレ新聞社

 平沢港の自動車輸出埠頭の前のあるガソリンスタンドでは、普段は包装のないバルク尿素水1000リットルを保管している2台の尿素水セルフ注入機の電源が切れていた。

 「戦争ですよ、戦争。政府は物量を確保したと言っているけど、まだ現実的に体感できていません」。ガソリンスタンドの従業員は、尿素水セルフ注入機が10日前から空っぽだと語った。前日ここで軍供給の尿素水を3本ようやく手に入れたというトレーラー運転手のキム・ビョッキさん(60)は「10リットルの尿素水が3本なら、1日に800~900キロの長距離を走ればわずか2日分。尿素水がなければ仕事ができないので、1本1万ウォン(約968円)だった尿素水を、最近は5万~7万ウォン(約4840~6780円)しても買っている」と吐露した。

 尿素水不足が続いているのは、トラック運転手の不安が高まったことで在庫が早期に底をついたうえ、最近になって政府が緊急に供給した尿素水も、2~3日に1度は尿素水を充填しなければならない長距離トラックの需要を満たすにはまったく足りていないからだ。

 トラックの運転手たちは、今も報道や同僚たちがかき集めた情報を頼りに尿素水を探し回っていると不満をぶちまけた。あるトラック運転手は「私たちは時間こそ金なのに、1週間以上も尿素水を求めて道路で時間を捨てている。マスクのように各ガソリンスタンドの尿素水の在庫と販売状況をシェアしてほしい」と述べた。

 ただし物流業界全般や建設、運送現場などへは、尿素水不足の波紋は広がっていないようだ。いま手もとに尿素水がなくては働けないトラックの運転手たちが、仕方なしに高い金を払って車を動かしているからだ。

12日午前、京畿道華城市安寧道のバス車庫に、尿素水を入れなければならないディーゼルバスが停まっている//ハンギョレ新聞社

 平沢港のそばで倉庫業と物流業を営む京平物流のチョン・ジュングァン課長は「危機感はあったが、持ち込み車の運転手さんたちが自分で尿素水を確保しているので、特に苦労はしていない」と語った。近隣で4階建ての倉庫を施工中のディアースE&Cのシン・ヒョジン課長も「ミキサー車は普段より運行を少なくしているが、現場の協力会社の社長さんたちは尿素水を1本3万~4万ウォン(約2900~3870円)でも買っているので、工事は正常に進んでいる」と現場の雰囲気を伝えた。

 業界は、車両用尿素水の供給難は来週には徐々に緩和されるとみている。国外で尿素水と尿素水の原材料である尿素の確保量が増えているうえ、現在のところ3カ月分の尿素を確保している国内最大手の車両用尿素水供給メーカーであるロッテ精密化学も、来週からペットボトル入り尿素水の供給を再開する予定だからだ。ロッテ精密化学は、買い占めや売り惜しみを懸念して尿素水10リットル入りペットボトルの供給を一時中止している。ロッテ精密化学の関係者は「外国から輸入する尿素が国内に到着すれば、尿素水製造までは2日もあればよい」とし「車両用尿素水を最大限多く生産し、市中に供給する予定」と述べた。

文・写真/パク・チョンオ、オク・キウォン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/marketing/1019119.html韓国語原文入力:2021-11-12 16:48
訳D.K

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