サムスン電子のイ・ジェヨン副会長が仮釈放されてから半月が過ぎても、彼をめぐる「就業制限」違反問題は解消されないまま、喉に刺さった小骨のように残っている。
仮釈放とイ副会長の就業制限規定についての大統領府と法務部の説明と釈明は、批判をかえって大きくしており、これには仮釈放後に直ちにサムスン電子の社屋を訪れ、経営陣から業務懸案の報告を受けたとされるイ副会長の行動も理由を与えている。イ副会長が絡んだ問題は、他の複数の財閥トップたちの就業制限違反例まで再び焦点化し、財界全般の問題へと発展してもいる。
イ副会長はサムスン順法監視委員会のキム・ジヒョン委員長の言葉通り、「何もしないとも言えず、何かをすれば規定違反との批判にさらされざるを得ず、どうすることもできないジレンマ」に陥っている。
キム委員長は20日、本紙の取材に対し「通常の仮釈放とは異なり、(イ副会長の仮釈放の)事由として『経済状況、ワクチン、半導体』などが言及されて複雑になり、解くのが難しい高次方程式になってしまった」と述べた。仮釈放決定に関してパク・ポムゲ法務部長官が「国家的『経済状況』とグローバル経済環境を考慮したもの」と述べたのに続き、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が「国益のための選択であり、『半導体』と『ワクチン』分野での役割」を期待していると述べたことを指しているのだ。法務部は今年2月、特定経済犯罪法違反でイ副会長を就業制限対象者と明示し、会社側に通知している。
振り返ってみると、仮釈放直後のイ副会長の行動は少なからぬ疑問を残した。一例として、仮釈放直後にこれ見よがしに会社に直行したこと。仮釈放決定そのものからして多くの批判を巻き起こしたうえ、就業制限対象だったため、どうしても道理にかなっていないように映った。仮釈放に好意的な世論調査結果や、大統領と法相の肯定的な発言を念頭に置いた一種の戦略的・戦術的行動だったのだろうか。もしそうだったとしたら、大きな勘違いとしか思えない。
パク・ポムゲ長官が「(イ・ジェヨン副会長が)無報酬、非常勤状態で日常的に経営参加することは就業制限の範囲内にある」と述べたことは共感を得にくく、「経営復帰を助けるために法の趣旨を歪曲した詭弁」(経済改革連帯、23日論評)との強い反発を招いた。就業制限規定は経済犯罪の再発を防ぎ、犯罪行為と密接な関連を持つ企業に対して一定期間影響力を行使できないようにすることで、その企業を保護するという目的があるからだ。
ザ未来研究所のキム・ギシク所長は、もつれた問題を解決する糸口の一つとして「財閥オーナー(支配株主)の混在する二つの地位」を分けて眺め、それに合わせて法を解釈して行動することを提案している。
イ副会長のような財閥トップは、経営者であると同時に支配株主だ。就業制限は経営者の資格を制限するに過ぎない。登記の有無、常勤か非常勤か、報酬のあるなしとは関係なしに、経営活動を行うことは制限される。大株主としての資格は制限されない。株主総会で議決権を行使したり、代理人である取締役会を通じて会社全般にわたる重要な意思決定に参加したりすることはできる。
現実においては両領域の境い目は明確でなく、曖昧なところがありうるが、法務部の法解釈くらいは、このような基準と基本にもとづいて行うのが理にかなっていると思われる。サムスンとイ副会長側の行動もこれに合わせるべきであり、無報酬・非常勤・未登記との理由で就業制限の対象ではないなどという主張を繰り返していては、さらに拡大する批判や非難から抜け出すことは難しいと思われる。