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ついに仮釈放されるサムスン電子副会長…「トップ不在危機論」は貫かれた

登録:2021-08-10 02:17 修正:2021-08-10 08:01
投資額171兆ウォン「K半導体ベルト戦略」 
170億ドルの米ファウンドリへの投資を「加速」 
新たな経営アジェンダとビジョンを掲げ 
大規模な買収合併に乗り出す可能性も 
 
イ・ジェヨン副会長、違法継承などの裁判が残っているうえ 
トップ不在にもかかわらずグループの業績は良好 
しばらく「低姿勢」続くか
//ハンギョレ新聞社

 トップ不在危機論はひとまず通じた。

 サムスン電子のイ・ジェヨン副会長の仮釈放決定は、米中「技術覇権戦争」で半導体の世界市場が激変する中、サムスンのトップ不在で「K半導体」の地位が揺らいでいるという主張が受け入れられた結果とみられる。財閥トップの司法処理のたびに提起される「トップ不在危機論」が、やはり文在寅(ムン・ジェイン)政権でも通じたという評価が出ている。

■サムスンの投資計画、加速の見通し

 今月13日にイ・ジェヨン副会長が出所すれば、サムスンの投資計画は加速する見通しだ。この過程で投資規模も増額される可能性がある。イ副会長にとっては、収監前後に発表した様々な投資計画をスピーディーに調整・執行し、トップとしての存在感を示す必要があるからだ。

 サムスングループの主力系列会社であるサムスン電子は今年5月、政府の「K半導体ベルト戦略」に関連し、2030年までにシステム半導体分野に171兆ウォン(約16兆4000億円)を投資することを発表している。また同月の韓米首脳会談直後、米国に170億ドル規模のファウンドリ(半導体委託生産)への投資計画を発表している。いずれも政府の産業・外交政策と密接に結びついた経営計画であるため、サムスンの計画実践は現政権の成果として現れる構造となっている。

 サムスンが破格の買収合併に乗り出す可能性もある。今年第1四半期の現金性資産が約128兆ウォン(約12兆3000億円)に達するほど、サムスン電子の手に握られている実弾には十分な余裕がある。サムスン電子は先月末の第2四半期の業績発表会で「3年以内に意味ある合併買収を行う」と述べ、大規模な合併買収を示唆している。

■新アジェンダ示すか

 財界の一部では、イ副会長が新たな経営アジェンダやビジョンを打ち出す可能性もあるとの見方も出ている。投資調整や規模拡大は新鮮味のない局面転換法だとの理由からだ。前例もある。

 かつて裏金事件で起訴された故イ・ゴンヒ会長は、大統領による特別恩赦後に経営に復帰する際に、新たな経営価値と危機論を同時に提起した。2010年3月に経営に復帰したイ会長は、1年後に「若い組織論」を掲げ、サムスングループの幹部経営陣の平均年齢を引き下げる一方、抜擢人事を大幅に強化した。イ会長の息子で当時は副社長(最高運営責任者)だったイ・ジェヨンの社長昇進を合理化するための布石だとの解釈もあったが、イ会長の若い組織論は財界全般に広がり、新たな風を巻き起こした。

 またイ会長は、太陽電池、バイオ・製薬、発光ダイオード(LED)などの5大有望事業の発掘の必要性も力説した。中国の急速な追い上げを受けるとともに日米の先進的な産業再編が進められていたため、サムスンが韓国の未来の主要産業を作り出すだろうという期待を抱かせた。当時、イ・ゴンヒ会長は「今が本当の危機だ。サムスンもいつ、どうなるか分からない。今後10年以内にサムスンを代表する製品はなくなるだろう。最初からやり直さなければならない。前だけを見て進もう」と述べた。

■当面は低姿勢との予想も

 財界のこのような予想とは逆に、イ副会長が経営の前面に立つのは難しいだろうとの見方もある。仮釈放の身であるため、政府が就業制限措置を解除しなければ法的制約があり、違法継承疑惑などに関する裁判が進行中であることも負担になるからだ。また、トップの不在危機論とは裏腹に、同氏の収監期間にもサムスン電子が相次いで驚くべき実績を上げていることも、イ副会長の「低姿勢」の予想がなされる背景の一つとなっている。

 漢陽大学のイ・チャンミン教授(経営学)は「(相次ぐ司法リスクにより)サムスンの中で立場が狭くなったイ副会長に必要なのは自粛の時間」とし「市民社会と多くの専門家がイ副会長の行動を注視し続けているだけに、性急な復帰はイ副会長の仮釈放に対する世論をむしろ悪化させうる」と述べた。

ソン・ダムン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/marketing/1007029.html韓国語原文入力:2021-08-09 19:02
訳D.K

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