グーグルやアップルなど、世界のいたるところで事業を展開し、税負担を減らしてきた超大型グローバル企業に対する課税強化の基本案に130カ国が合意した。企業が相対的に税率の低い国に利益を集中するやり方で税負担を減らし、国家は自国への企業誘致のために先を争って税率を下げるという現象を遮断するための最低税率「グローバルミニマム税」の導入も合意に至った。
グローバル企業への課税が緻密に
経済協力開発機構(OECD)は1日(現地時間)、オンラインで139カ国が参加する「包摂的枠組み(IF、Inclusive Framework)」での論議を通じて、「デジタル税合意案」について130カ国から支持を得ることに成功したと発表した。アイルランド、ハンガリー、エストニアなど9カ国は合意に反対した。
合意案によると、課税対象は売上高200億ユーロ(約2兆6000億円)以上、営業利益率10%以上の企業。一例として、年間30兆ウォン(約2兆9500億円)稼ぎ、3兆ウォン(約2950億円)以上を残した企業が課税対象となるということだ。グーグルやアップルはもちろん、サムスン電子、SKハイニックスなどの韓国企業も含め、100社あまりがこれに当たると企画財政部は推定している。
課税は、営業利益率が10%を超過する利益分のうち20~30%に対して行われる。例えば、売上高が50兆ウォン(約4兆9100億円)で営業利益が10兆ウォン(約9820億円)の企業の場合は、基準利益率10%(5兆ウォン)を超える利益分である5兆ウォンの20~30%に当たる1兆~1兆5000億ウォン(約982億~1470億円)を「課税対象利益」とするということだ。ただし税率は今回の合意案では示されなかった。
今回の合意案のもう一つの特徴は、課税ができる国を課税対象企業の売上が発生したところと定めた点だ。特定企業が韓国、米国、日本、中国の4カ国で事業を行って利益を得た場合は、この4カ国が課税対象利益を一定の比率(配分率)で分けて課税権を行使することになる。ただし、今回の対策には具体的な課税配分率は盛り込まれていない。
このほかにもOECDは、同日の議論に参加した130カ国がグローバルミニマム税(最小15%)導入にも賛成したことを明らかにした。グローバルミニマム税の導入は、法人税率が低い所を探し歩く「税金ショッピング」を防ぎ、さらに企業による投資誘致などのための各国の税率引き下げ競争を遮断するという趣旨で議論が進められた。今年に入って米国のジャネット・イエレン財務長官が導入を公に求めていた。
「100年ぶりの国際租税原則の変化」…韓国への影響は小さい見込み
合意案について企画財政部は「100年間続いてきた国際租税原則の大変化」と評価した。1928年に国際連盟(国連の前身)がまとめたモデル租税条約を皮切りとした、二重課税の防止、法人税引き下げなどの投資促進中心の国際租税の大枠が変わるということだ。今回の合意が、複数の国による共同課税および法人税引き下げ競争の遮断を焦点にしているためだ。
このような変化のルーツは、2008年のグローバル金融危機にさかのぼる。危機克服の過程で金をつぎ込んだことで財政が悪化した米国などの先進国を中心に、税収拡充の必要性が提起された。この過程で、税源を食い荒らすグローバル企業各社の活動に各国政府が注目しはじめたのだ。今回の合意に向けた国際的な議論が始まったのも、金融危機の衝撃がまだ消えていない2012年のことだ。さらに昨年からのコロナ禍拡散のために支出が再び大きく増えたことによる財政の悪化も、議論に拍車をかけた主な背景の一つだ。議論された課税対象が当初のグーグルやフェイスブックなどのデジタル企業から消費財、電子、製薬などの業種へと大きく広がったのも、このような脈絡からだ。
国際通貨基金(IMF)のクリスタリナ・ゲオルギエバ専務理事は最近「歴史的には戦争が租税政策の革新の原動力だった」とし「今はコロナ禍と気候変動という危機が国際租税制度を再考し、修正する機会を提供してる」と述べている。
ただし、今回の合意が韓国の税収などに及ぼす影響は大きくはなさそうだ。合意による税収の増加要因と減少要因は似たようなものと評価されるからだ。具体的には、国内の法人税収の最重要税源であるサムスン電子やSKハイニックスからの税収は減る可能性がある一方で、グーグルやアップルなどの国内で稼ぐグローバル企業からの税収が追加される可能性があるからだ。企画財政部のチョン・ジョンフン租税政策官は「1、2社の国内企業からの税収を他国に配分し、残りの98~99社の国外企業から韓国が税収を得る構造となる。まだ細部の基準が決まっていない、もしくは確定していないため、(税収の実益を)正確に推定するのは難しい」と述べた。
グローバルミニマム税の導入も、現在の韓国の法人税の最低税率が15%であるため、直接の影響が及ぶ可能性は低いと思われる。ただし、国内企業が税率の低い租税回避地に移転したり、利益を集中させたりする誘因は縮小するため、韓国の税収にとっては否定的な効果より肯定的な効果の方が大きいとみられる。企画財政部も「国家間の法人税引き下げ競争が減り、グローバル企業の国内への誘致に肯定的な影響があるだろう」と評価した。
今回の合意案は10月の主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)で最終確定される。来年に各国で法改正作業を行い、施行は2023年からとなる。