最近行われた起亜自動車の「K8ハイブリッド」試乗イベントには、マイナスオプション車が登場した。試乗イベントは新車を初披露する重要な場であるだけに、全ての機能を備えたフルオプション(最高仕様)車を試乗車として出すのが一般的だ。しかしこの日、主催側がマイナスオプション車を披露したのは、車載用半導体を入手するのがあまりも難しく、試乗車からも一部オプションを外さざるを得なかったためだ。車載用半導体とは一体何であり、供給難はいつ頃解決されるのか、一問一答形式で気になるところを探る。
-車載用半導体とは一体何ですか。
「最近の自動車は車輪のついたIT(情報技術)機器と呼ばれるほど、自動機能が多く搭載されています。それで部品の約40%は電子装置を使用します。このような電子装置に入る小さなチップを車載用半導体と言います。車一台あたり約200~400個の半導体が入っています。最近物量が不足しているのは、「マイクロコントローラー(MCU)」という半導体チップです。車にはエンジン・エアバッグなどの各部品を制御する電子制御ユニット(ECU)というミニコンピューターが数十個入ります。このコンピューターをいくつかのMCUで作るので、MCUが足りないと車の生産も難しくなります」
-なぜ半導体が不足しているのでしょうか。
「二つの理由からです。まず、自動車メーカーは新型コロナの影響で車が以前より売れなくなると見込んで部品の注文を減らしました。簡単にいえば、需要予測を誤ったのです。また、車載用半導体は、オランダのNXPセミコンダクターズ、ドイツのインフィニオン・テクノロジーズ、日本のルネサスエレクトロニクスなどの5社が全物量の半分を供給しています。これらの企業の工場が年初、寒波や火災などで一時的に閉鎖され、これらの企業からの注文を受けてMCU全体の約70%を代替生産する台湾のTSMCも干ばつで半導体の生産ができなくなり、供給が大幅に不足したのです。元々MCUは、注文して商品を受け取るまでに3~4カ月程度かかります。現在はこの期間が最長10カ月まで延びているといいます」
-状況はどれほど深刻なのでしょうか。
「韓国企業の現代自動車と起亜自動車、ゼネラル・モーターズ(GM)、フォルクスワーゲンなどの世界の自動車メーカーのほとんどが、工場の稼動を一時的に停止し生産量を減らすなど、困難に直面しています。グローバルコンサルティング会社のアリックスパートナーズは、今年の車載用半導体の品切れで、世界の自動車生産台数が390万台減少し、自動車メーカーの売り上げも1100億ドル減少すると予想しました。年初の見通しよりも生産の支障規模を170万台増やしたのです。それだけ状況が深刻だと言えます」
-自動車価格も上がるでしょうか。
「車載用半導体の価格が急騰し、自動車価格も上昇するのではないかと心配する消費者が多いです。しかし、今すぐ上がる可能性は比較的低いです。自動車メーカーが新車を発売する際に決めていた販売価格を変えるのは難しいからです。ただ、半導体の供給難が続けば、今後の新車や年式変更モデルなどの価格には部品価格の上昇が反映される可能性があります」
-なぜテスラやトヨタは特に難を逃れたのでしょうか。
「完成車メーカーのうち、日本のトヨタと米国の電気自動車メーカーのテスラは、半導体不足問題の衝撃を逃れて話題になりました。まず、トヨタは2011年の東日本大震災で、自動車部品の在庫を最大4カ月分確保するよう在庫管理政策を変え、サプライチェーンの管理を強化したのが役立ったといいます。テスラは従来の納品業者ではない他社が作った新しいMCUの供給を受けて問題を解決したと明らかにしました。テスラの場合、車種が少なく中央集中型システムをうまく構築したのが功を奏したと思います。一般の完成車は各部品に搭載するミニコンピューターが納品業者ごとに異なりますが、テスラはより少ない数のコンピューターを使用し、最初から会社がシステム全体を直接設計していたおかげで、部品の代替も容易だったということです」
-供給難はいつ解決するでしょうか。
「市場では、世界的な車載用半導体の供給不足現象が今年の第3四半期まで続くと予想されています。当分の間、新車を購入する際にはいくつかのオプションを除けばより早く受け取れるということです」
-部品の交換も難しくなりますか。
「既存車の部品供給にはまだ特に影響はないということです。完成車メーカーが従来の発売車両の事後管理用の部品の在庫を比較的余裕を持って確保しているからとのことです」