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世界最大の「K-半導体ベルト」造成…非メモリ分野まで追いつくか

登録:2021-05-15 10:27 修正:2021-05-15 12:32
世界各国で競争、半導体が「戦略武器」に浮上 
韓国、メモリは強いが非メモリ半導体が弱い 
「業界の要請をほとんど受け入れた」「用水、電力基盤への支援は適切」
サムスン電子平沢工場の全景//ハンギョレ新聞社

 韓国政府が13日、半導体産業支援策(K-半導体戦略)を打ち出した背景には、米国・中国を中心とした世界各国の半導体覇権競争がある。米中など主要国は自国内の半導体技術や製造基盤を確保するためのサプライチェーン構築に熱を上げている。半導体が「産業のコメ」を超えて「戦略武器」として浮上したことで、国家間競争に広がっているという評価が出るほどだ。

■半導体をめぐる国家間のせりあい

 米国は半導体サプライチェーン調査の行政命令を下し、国防授権法を改正した。この法は自国の半導体競争力強化のための補助金、研究・開発(R&D)支援を盛り込んだもので、今年1月に発効した。核心の部分は、半導体生産施設を構築する際、1件当たり最大30億ドルを支援するという内容だ。3月末には半導体製造施設に500億ドルを支援する内容を追加した。

 中国は「製造2025」を通じて半導体の内在化に努力を傾けている。中国に対する米国の制裁後、さらにスピードアップした自立の動きだ。中国の政策は、半導体企業の工程の難易度によって税制優遇を適用することを主な内容としていると、産業通商資源部が伝えた。28ナノメートル(ナノメートルは10億分の1メートル)以下の半導体の工程基盤の生産施設には最初の10年間、65ナノメートル以下には最初の5年間、企業所得税を免除するというものだ。

 欧州連合(EU)もまた、10ナノメートル以下の超微細工程を基盤とする半導体生産拠点を構築し、半導体企業の投資金額の約20~40%の補助金を支援する方策を推進しているという。EUは、半導体の世界シェア20%達成を目標に掲げている。この日、半導体戦略を発表したムン・スンウク産業部長官が「半導体の供給難が深刻化し、半導体をめぐる国際情勢が急変している」と診断したのは、こうした事情を表している。米国のバイデン大統領が先月に続き今月もサムスン電子などを呼び集めて「半導体会議」を開く予定だというのも、同じ流れで考えられる。

 各国政府の要請に応えるかのように、台湾のTSMC、米国のインテルなどの主要企業は、大規模な投資計画を発表している。TSMCは今年から3年間で、計1000億ドルを投資することを決めている。米国内の6つの工場(ファブ)新設に360億ドル、中国南京に28億ドルを投入する内容がここに含まれている。インテルは、ファウンドリ(半導体受託生産)分野に進出するため200億ドルを投資するという計画を発表した。米エヌビディアや英国の半導体設計会社ARMをはじめ、半導体産業内の主要企業間の買収・合併(M&A)も活発だ。産業部によると、昨年1年間のグローバル半導体買収・合併額は1050億ドルを上回り、過去最高を記録した。

■メモリ中心の韓国の半導体環境

 半導体産業に大きく依存している韓国経済の立場としては、対策に取り組むよう背中を押す環境だ。韓国の総輸出で半導体産業が占める割合は20%に達する。国内全体の産業の中で輸出1位を占める第1の産業でもある。輸出トップの座は昨年まで9年連続。国内経済の支えという評価に値する。半導体産業は国際的存在感も高いほうだ。韓国は20年以上、メモリ半導体分野で世界1位を占めている。

 メモリ分野の強国という裏には弱点が絡んでいる。産業部は「大規模装置産業であるメモリ半導体産業は、需要と供給の違いによって2年前後の周期で騰落が繰り返され、景気の変動に不安定だ」と分析する。サムスン電子が、半導体スーパーサイクル(2018年の好況期)の時期に売上基準で世界半導体市場1位に浮上し、メモリ価格下落後の昨年には2位に落ちた事実がこのような事情をよく表わしている。非メモリ半導体分野で韓国が依然として後れを取っているという点は、常に指摘されてきた通りだ。ファブレス(設計専門)分野で韓国のシェアは2%未満(2020年1.5%)だ。

 政府はこれによって、税制・金融支援、人材育成、規制緩和策とともに「K-半導体ベルト」の造成を中心としたサプライチェーン構築と環境造成策をこの日提示した。サムスン電子などの諸企業が、今年41兆8000億ウォン(約4兆500万円)を皮切りに2030年までに510兆ウォン(約50兆円)を投資し、政府はこれを後押しして世界最大・最先端の半導体サプライチェーンを整えるという内容だ。半導体ベルトとは、板橋(パンギョ)と器興(キフン)~華城(ファソン)~平沢(ピョンテク)~温陽(オニャン)の西側、利川(イチョン)~清州(チョンジュ)の東側が龍仁(ヨンイン)で連結される地域だ。京畿道龍仁市に素材・部品・装備に特化した団地を造り、半導体工場と世界で初めて連携したテストベッド(試験評価施設)を構築することにしたのはその一環だ。先端極紫外線(EUV)装備を独占供給するオランダ企業ASMLのトレーニングセンターを誘致し、板橋を韓国型ファブレスバレー(設計専門団地)に造成する内容もここに含まれている。ベルトの中に入っているSKハイニックスは、8インチのファウンドリの生産能力を現在の2倍に増やすことを検討している。

■専門家「初の強度の高い半導体総合対策」

 「今回の対策はちゃんとしている」。 漢陽大学のパク・ジェグン教授(融合電子工学部)はこの日、本紙の電話インタビューで、政府案に肯定的な評価を示した。パク教授は「過去の半導体関連の政府対策は事実上大したものではなかった」とし「今回の案で(半導体への投資に関する)税金控除の水準が台湾の水準まで上がった」と述べた。アン・ギヒョン半導体産業協会専務は、「業界の要請がほぼ受け入れられたようだ。特に大学定員拡大を含む人材育成部分は破格だ」と述べた。

 SK証券のユン・ヒョクチン研究員は、政府支援策のうち用水や電力などのインフラ(基盤施設)支援策に注目し「現時点で最も必要で重要なことをしてくれると考えている」と述べた。台湾の干ばつ、米国の停電事態からも分かるように、半導体産業では用水と電力が非常に重要だという指摘だ。産業研究院のキム・ヤンペン専門研究員も、やはり用水や電力インフラ支援について高く評価した。キム研究員は「教育部、環境部まで含めて省庁合同で発表したという点でより実効性があり、きちんとした政策執行が期待される」と述べた。

キム・ヨンベ先任記者、ソン・ダムン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
hani.co.kr/arti/economy/economy_general/995062.html韓国語原文記事:2021-05-14 02:45
訳C.M

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