韓国電力(韓電)が予備妥当性(予妥算)評価で収益性など事業性がないと判断され留保されていた国外の石炭火力発電所事業を再度推進しており、議論が予想される。議論が拡散して事業が白紙化された場合、発電所の施工を受注した斗山重工業は深刻な財務危機に陥る可能性が高い。
共に民主党のキム・ソンファン議員は15日、ハンギョレの電話インタビューで、韓電がインドネシア現地の石油化学業企業と合弁会社を設立し、石炭火力発電所を建てることにした事業計画を公開した。これによると、韓電はインドネシア・ジャカルタ周辺に1GW規模の石炭火力発電所2基(ジャワ9・10号機)を建てる事業を推進している。全体事業費は約3兆5千億ウォン(34億ドル)だ。韓電は現地石油化学企業の「バリト・パシフィック」と合弁会社(BWT)を設立した後、同社は再び国営電力会社の子会社である「インドネシアパワー」とともに発電事業会社(IRT)を設立する。韓電は600億ウォン(約57億円)を出資し、合弁会社の株式30.6%(発電事業会社基準実質持分率15%)を確保するとともに、合弁会社が劣後債を発行して調達する予定の2500億ウォン(約237億円)も支給保証する予定だった。
同事業計画には、韓国開発研究院(KDI)がブレーキをかけた。昨年11月、KDIはこの事業計画をもとに収益性など事業の予備妥当性調査を行った後、事業性の不足を意味する「グレーゾーン」に分類した。これにより、韓電は同月の取締役会にこの事業案件を上程できなかった。業界では事実上、事業推進が白紙化されるのではないかという見通しも示された。
しかし、韓電が同事業を再度推進したことで議論になっている。韓電は、投資規模を当初の計画より120億ウォン(約11億円)減らすことを骨子とする事業計画の変更を通じて、KDIの予備妥当性評価の結果を迂回する案を進めている。公共機関が事業予備妥当性評価を受ける義務は、事業費500億ウォン以上の事業に限定されている。韓電は22日、変更された事業計画を取締役会に上程する予定だ。
キム・ソンファン議員側や一部の専門家らは、便法による推進のほかにも、韓電が負担しうる潜在費用もかなり高いと見ている。まず、同事業に資金を供給することにした金融機関の1社である英スタンダード・チャータード銀行が昨年末、突然「脱石炭化宣言」をしたため、今後計画された資金を供給しない場合、韓電が負担することになる。また、発電所の施工受注をした斗山重工業が提示した施工費が類似事業の75%水準に止まっており、工事費がさらに膨らむ恐れもあるという。
キム議員は「政府の監督を回避するため、持分の投資額を縮小して事業を推進するのは、予備妥当性評価制度を無力化させ、関連法律の趣旨まで無視しようとする常軌を逸した行動だ」とし、「韓電は投資計画を撤回すべきだ」と主張した。エネルギー転換フォーラムのヤンイ・ウォニョン事務処長は、「損失が予想される事業に投資するのは背任行為で、訴えられかねない深刻な問題だ」と主張した。
事業にブレーキがかかった場合、火の粉は斗山重工業に飛ぶことになる。同社は発電所の施工と関連し、1兆5千ウォン(約1400億円)台の発注を受ける予定だからだ。斗山重工業は、数年間受注不足に悩まされ、財務状況が大きく悪化した状況だ。昨年第3四半期までの累計受注額は2兆1千億ウォン(約2千億円)水準に止まっている。それだけに、今回の発電所事業は斗山にとって非常に切実な課題だ。
このような理由で、一部では韓電の事業再推進の背景に斗山側の利害関係も作用しているという疑惑も持ち上がっている。ヤンイ・ウォニョン事務処長は「韓電の無理な事業の推進は、国内特定企業の事業を支援するためとしか見えない」と指摘した。
韓電側はこれに対し、「予備妥当性評価が発電所の平均稼働率の適用などにおいて、韓電の契約内容などをきちんと反映していない」と説明した。予備妥当性評価を信頼できないという意味だ。また、持ち株の規模を縮小して事業再推進に乗り出した理由については、「当該事業は十分な収益性があると判断して推進している」という原則的な立場のみ示した。