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[ニュース分析]経済政策で34回言及された「K」の悩み

登録:2020-01-04 10:17 修正:2020-01-04 11:42
[ハンギョレ21] 
韓流(K)、国家ブランドだが国家主導には警戒感… 
文化産業だが過度な商業性には反感

 2020年。政府の経済政策の方向性に再び「K」が登場し始めた。Kコンテンツ、Kビューティー、Kフードをまとめて3Kと名づけた。これと連携してKカルチャー・フェスティバルを年2回開くと再び強調した。消費対策の中心は、これまた3Kと連携したコリア・セールフェスタだ。中小企業の国外進出に向けたブランドK拡散戦略も樹立する。Kが政策のあちこちに散らばり漂っている。

2008年5月、李明博元大統領が歌手兼芸能企画者のパク・ジニョン氏と話している=大統領府写真記者団//ハンギョレ新聞社

政府「コンテンツ・ビューティー・フードの『3K』で経済活性化」

 文在寅(ムン・ジェイン)政権発足後、消費者対策は主に所得の拡充と国民の余暇支援政策だった。中小企業対策は公正な環境の構築に概して集中した。だから、消費と中小企業対策の場にだしぬけに現れた「K」の氾濫は、やや意外だ。何か特別な理由でもあったのだろうか。「特別なきっかけはない。3Kが最近流行で、これを経済活性化につなげようと思った」(コ・グァンヒ企画財政部総合政策課長)。実際、特別注目もされなかった。文在寅政権が取り上げるのに慎重だっただけで、韓流、K、大韓民国ブランドのような話は30年近く呪文のように繰り返されてきた。当然大事だが、あえて口にするのは照れ臭い修辞、見せる側も読む側も特別な意味はなく流してしまう接頭辞の「K」は、2020年の経済政策の方向性で34回繰り返される。

 1994年。ソテジワアイドゥルが「もういいよ、もういいよ」(「教室イデア」)と叫んだ。文化が、権威主義を打ち砕くようだった。偶然にも同年、金泳三(キム・ヨンサム)大統領は次のように指示する。「付加価値の高い文化産業を育成し、一般工業製品に文化の服を着せ、国際競争力を向上させよ」(1994年1月、大統領業務報告)。これは力を失った権威主義の座を、グローバル化と市場主義、柔らかな国家主義が埋めていく姿だ。文化で築き上げる一流国家。韓国だけの目標ではなかった。1990年代初め、日本で文化を売りにして国家の力を育てる「軟性国家主義」(ソフト・ナショナリズム)の概念が登場した(ウォン・ヨンジン『韓流政策と軟性国家主義』)。英国のトニー・ブレア政権は衰退する製造業に代わるデザイン、音楽、ソフトウェアのような文化産業を国家レベルに拡大し、「クール・ブリタニア」を宣言した(キム・オジン『創造経済の政治経済学』)。文化は産業になり、グローバル化時代の国家のアイデンティティを成す重大な地点に立った。本来の文化の持つ多様性、自然さ、自主性といった価値が、商業化やナショナリズムにふさわしい組合せであるかどうか、悩みの種はあった。だが本格的に語られることはなかった。

 1990年代後半または2000年代序盤。「たしか私が12歳の頃、(ダンスミュージックデュオの)CLONが台湾に来ました。まだ韓国音楽が大衆的でなかった頃で、すごくクールだと思いました」。台湾の台北でソフトウェア会社に通うリウ・チンウェイさん(35)にとって、「ずっと昔に」初めて接した韓流は自分を際立たせるとてもクールなものだった。S.E.S.やH.O.T.のアルバムを買い集めた。2000年代序盤になると「映画『猟奇的な彼女』がヒットして、韓流は皆が見て歌うものになった」。フェイスブックのメッセンジャーで「ハンギョレ21」のインタビューに応じ、その時代を語るリウさんの返信には、気恥ずかしさを込めた「……」記号が多い。

 だんだん関心は冷めていった。新しいものはすぐに大衆的なものになり、大衆的な成功戦略に沿う似たような姿と敍事が繰り返された。「もしかしたら、台湾にそのような大衆文化ばかりが韓流として紹介されているからかもしれません。ただ、似たり寄ったりの歌手やドラマを見ていて興味がなくなりました。『韓国が最高』みたいな全般的な雰囲気も心地悪かったし。私の好みの問題かもしれません」

2016年4月、朴槿恵前大統領が俳優のソン・ジュンギ氏とKスタイルハブ開館行事で挨拶している=大統領府写真記者団//ハンギョレ新聞社

企業式マーケティング・私益追求の場となった韓流

2001年、とうとう政府は「文化産業ビジョン21」と、それに続く「韓流産業支援育成策」を通じて「韓流」という単語を国家レベルの体系的な事業の中に組み入れる。映画『猟奇的な彼女』、ドラマ『冬のソナタ』などの大ヒットが起こった。ただ、思いがけない国外の反応のために悩みが生じだ。「H.O.T.が2000年に中国で公演した後、現地社会で大きな反響が起きました。その衝撃はそのまま韓国文化に対する警戒につながったため、その後、韓国芸能人の公演そのものが禁止されました。…相手を刺激せず、自尊心を傷つけず、一緒に感じて共有する方法で行くべきでした」(イ・チャンドン元文化部長官の2018年「韓流と文化政策」インタビューより)

 2008年以降。文化産業という名前はコンテンツ産業に代わり始めた。かつて製造業がそうであったように、国が資源を集めてコンテンツ産業を支援し、成果創出を強調するムードがあった。学界から批判の声が上がった。「(前政権が)最小限の文化的公共性を文化政策の理念として追求したのに対し、(李明博(イ・ミョンバク)政権は)文化を『コンテンツ商品』に矮小化して特定の文化商品、つまり韓流コンテンツの輸出を伸ばすために国を『ブランド化』するなど、露骨な企業式マーケティング戦略を展開した」(チェ・ヨンファ、「李明博政権の企業国家プロジェクトとしての韓流政策」)

 朴槿恵(パク・クネ)政権の「創造経済」に移り、Kコンテンツの範囲は食べ物・教育・スポーツなど社会の全分野へと広がった。その過程で明るみに出た私的な利益追求(Kスポーツ財団設立の不正など)が問題になり、朴槿恵は不名誉なかたちで大統領の任期を終えた。そして、一時「K」は政府の経済政策の前面に出ることができなかった。双方向コミュニケーション、文化産業の公正性を強調した「良い韓流」基調程度が文在寅政権の国政課題に盛り込まれたにすぎない。

 再び2020年の直前。韓流の成果は無視はできない。半分近くがゲーム産業のおかげではあるが、2018年の文化コンテンツ輸出額は75億ドル(約8兆7千億ウォン)で、韓国のもう一つの自慢だった家電輸出額(72億2千万ドル)を上回った(輸出入銀行、「韓流文化コンテンツ輸出の経済効果」)。ただし、数字では表現されない複雑な悩みは依然として残っている。「一定の線がある。国家ブランドを前面に出しても、過度に国家的企画のように見えてはならず、商業的価値は重要だが、商業性に重点を置いたように見えてはならない線。絶えず警戒しながら進めなければならない」(ウォン・ヨンジン西江大学教授)

 経済政策の方向性で取り上げられた予算のついた韓流事業を扱う国会予算政策処の評価にも、同様の懸念が混じっている。「韓流成長国を中心に韓流の攻撃的な進出、過度な商業性などに反感が生まれているという点を考えると、政府主導の韓流拡大政策の妥当性や有効性については議論が必要であると判断される」(国会予算政策処、2020年度予算案分析)

2018年10月、文在寅大統領がフランス・パリで歌手の防弾少年団(BTS)、俳優のキム・ギュリ氏と言葉を交わしている/聯合ニュース

「企画」で包み隠せない社会の成熟の裏付けが必要

 台湾のリウさんは、韓流を活かした観光活性化や輸出対策をどう考えるだろうか。「効果はあり得るでしょう。私にはあまり面白みはないけれど」。そのあと、社会と文化の本質に対する考えを込めた意外な返答がきた。「人々は韓国のポップス文化が不自然だと感じています。ニュースで見る韓国は過度に競争的で幸せそうに見えないのに、韓流では同じように装飾された(幸せな)様子ばかり出てくるから。文化には自然さと多様性が大事で、そのためには社会がまず正直になり、多様性に寛大になるべきではないでしょうか」。もはや企画だけでは包み隠せない、社会の成熟が自然に流れ出る韓国文化。韓流消費第1世代のリウさんは、韓流商品を超えて韓国社会の可能性を問うている。

パン・ジュンホ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/922837.html韓国語原文入力:2020-01-01 18:13
訳C.M

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