「5兆ウォンのK-POP揺さぶる」「YGの株価下落」
「芸能業界全体への罵倒があってはならない」
バーニングサン事件で出てきた記事
被害者の規模、正確な実像など
まだちゃんと把握できてもいないのに
「K-POPの萎縮」「一部の問題」と盛んに言い
マスコミがすべきことはより多くの検証と批判
芸能界の男性連帯・女性嫌悪を断ち切るべき
「文化体育観光部と韓国国際文化交流振興院が最近発表した海外の韓流実態調査によると、アジア、米州、欧州、中東、アフリカなど各地で韓国を連想するイメージとして真っ先にK-POPを挙げた。(中略)このため、国内の芸能界で起こった今回の論議が、韓流を通じたマーケティングや各種の付帯事業にも影響を及ぼすのではないかという懸念が提起されている」(2019年3月14日「アジア経済」、『5兆ウォンの“K-POP産業”が揺さぶられる…韓流に打撃はないか』チェ・デヨル、キム・フンスン記者)
国中が「バーニングサン・ゲート」とSNSのグループチャット内で交わされた醜悪な対話に驚愕している間にも、一方ではK-POP産業の未来を憂う記者がいる。経済紙らしくタイトルも産業全体の規模を取りあげて提示した「アジア経済」の記事は、“5兆6000億ウォン”規模にもなる巨大産業に成長したK-POP産業が、一連の“論議”のために揺らぎかねないという懸念を伝えている。何が言いたいのかは分かる。チョン・ジュニョンがすでに性関係を不法撮影した映像をグループチャットに流布した疑いについて「自分のすべての罪を認める」と言ったにもかかわらず、あえて“容疑”や“論議”という表現を使ったのは理解できないが。
ここらで終わりにしよう?
「アジア経済」が“5兆ウォン”という金額を論じて懸念を示した翌日、「中央日報」は記事を通じてもっと具体的な数値を提示した。「K-POPの地位も揺らいでいる。2000年にH.O.T.が中国の北京で初の単独公演をして登場した『韓流』が、今年防弾少年団が9万席規模の英国のウェンブリーで公演するような世界的規模に成長するまでに、約20年の時間がかかったが、ここひと月の間に急激に崩れている。(中略)ビッグバンのV.I(スンリ)の所属会社だったYGエンターテインメントの株価は、15日基準で3万5000ウォン(約3400円)台まで落ちた。V.Iが引退を発表した11日の1日だけで、時価総額1109億ウォン(約108億円)が減った後も引き続き下落し、現在6520億ウォン(635億円)水準だ。2018年連結基準の売上高は2858億ウォン(278億円)で、2017年の3498億ウォン(約340億円)に比べ18.3%下落したのに続き、今年はさらに下落する可能性もある」(2019年3月15日「中央日報」、『性犯罪スキャンダルに続く嘘の悪影響…築き上げたK-POPが崩れる」ミン・ギョンウォン記者)
一面数字で埋め尽くされた「中央日報」の記事は、韓流が北京からウェンブリーに至るまでいかに長い時間がかかったかを振り返り、その成果がどれほど巨大であったかを具体的に示した上で、それが一瞬にして崩れ落ちる光景を切に描写する。時価総額が一日で1109億ウォン減り、18.3%下落し、さらなる下落の可能性もあり…そう、何が言いたいのかは分かる。
ある記者らは「バーニングサン・ゲート」を見る大衆の視線を心配する。「テンアジア」の3月18日付記事の最後の段落はこう始まる。「また別の大衆文化団体の関係者は『芸能界全体に常識を外れたもう一つの裏面があるように見る視線が心配だ』とし、『一部の犯罪と逸脱行為で芸能産業全体が罵倒されることがあってはならない』と憂慮した」(2019年3月18日「テンアジア」、『V.I、チョン・ジュニョンのグループチャットの“津波”…荒れ果てた芸能界はどうなる』ノ・ギュミン記者)
ストレス解消のためにクラブに遊びに行った女性たちは、自分もいつでも犯罪の対象になりうるという事実に憤っている。V.Iとチョン・ジュニョン、チェ・ジョンフン、イ・ジョンヒョン、ヨン・ジュンヒョンのファンだった女性たちは、自分の懐から出た金が性売買の費用に、デートレイプの薬物GHB(違法ドラッグ)の購入費に使われたのではないかと憤っている。事件を注意深く見守っていた彼らは、業界内ではすでに2年ほど前から問題のグループチャットについての噂が流れていたという「SBS funE」のカン・ギョンユン記者の言葉に憤っている。このように憤ることが多いのに、一体どの団体の関係者なのかも分からない匿名の情報員は「一部の犯罪と逸脱行為で芸能産業全体が罵倒されることがあってはならない」という言葉で“鎮静”を求めている。ここまでくるともはや、何が言いたいのかわからない。
総合してみよう。芸能界はグループチャットに対する噂が2年も出回っている間にも自浄できなかったのに、V.Iが「若い年で華やかな富を築き成功した事業家」というイメージでテレビで活躍するように放置したのに、この事件にかかわったことがすぐに明らかになった男性芸能人が一人や二人でもなく4つの所属会社にわたり5人にもなるのに、それらすべてがようやく明らかにされ始めた時点で、早くも「5兆ウォン」にもなるK-POP産業が「揺さぶられ」「崩れ」「荒れ果て」たという記事が出ている。「一部」の悪い芸能人がいただけで、「芸能産業全体が罵倒されることがあってはならない」という必死の弁明が出てくる。一体誰が素直に同意できるだろうか。
本当に一部の問題なのか
もちろん、私は記事を書いた記者に他意はなかったと信じたい。関連した芸能人が性犯罪や麻薬、暴力、権力との癒着などで業界全体が被った被害がどれほどかを書くことで、彼らがどれほど大きな過ちを犯したかを強調しようとする善意だろうと信じたい。業界人たちに、このように一瞬でつぶれることもあるので、心を入れ替えて自浄せよというメッセージを投げかけたかったのかも知れない。しかし、直接・間接的な被害者がどれほどであり、その被害をどのように補償するかについての議論も始まっていない状況で、産業が萎縮するという記事がまず出るのは、かなり順序が間違っている。これが一部の問題なのか、芸能界全般の構造的な問題なのか把握もできていないのに伏せておき、一部の問題であるだけだという抗弁まで出れば、本来の意図が何だったのかとは関係なく、このように読まれるのではないか。「一部の問題だから、ここらでもう掘り下げるのはやめてくれ。このままでは私たちもみな終わりだ」。
私も信じたい。本当に「一部」の問題なので、今回問題になった人だけうまく間引きすれば、芸能界も良い所だと信じたい。ところが、男性芸能人と同業をしたことのある人の話を聞くと、そうでもないようだ。「V.Iのカカオトークの内容が罪になるなら、大韓民国の男たちはみな罪人じゃないか」。 「週刊京郷」と電話インタビューをしたクラブ・バーニングサン代表のイ・ムンホの言葉だ。「性売買がなされたわけでもなく、ふざけただけ」という前提だが、イ・ムンホの世界観の中の「大韓民国の男性たち」はみな、グループチャットに集まって違法撮影した性関係の動画をシェアし、重要な客を接待するために性を使おうという話を交わし、みんなで女性らを強姦しようという話を“冗談”として交わす存在だ。「V.Iの親友」として事業を共に行い、芸能人らとの親交を深めた人の話だ。
マスコミ記者から私のようなコラムニストまで、この分野で文を書く者はみな少しずつは、今回の「バーニングサン・ゲート」に対する責任があるはずだ。男性芸能人が放送を通じて見せるイメージを、記事やコラムを通じて立て続けに増幅させ、検証されていないファンタジーの壁を固めた責任だ。その責任のためにも、マスコミは韓国の芸能界の構造的問題についてより多く指摘し、より多くの検証と改善を求める義務がある。K-POP産業がどれほど萎縮し、再建のためにはどれだけ長い時間が必要かについて考えるのは、その全ての作業が一段落した後でも遅くない。「まさか芸能界全般にこんなことが蔓延するものか」と反問する人もいるだろうが、V.Iとチョン・ジュニョン、チェ・ジョンフン、イ・ジョンヒョン、ヨン・ジュンヒョンがそのような暮らしをしていたということも、事が起こるまでは分からなかったではないか。
この道の果てに「問題を起こした数人を処罰した後、再び韓国の芸能界を以前のように消費できる私たち」のようなものはありえず、あってはならない。芸能界に対する疑いの視線は過度ではなく、その疑いを克服して自浄を証明しなければならない義務が業界にある。いま、隣で「このままではK-POPも韓流もつぶれてしまう」と心配することこそ、韓国の芸能界が再び古い男性連帯と女性嫌悪の道に転落することを傍助することだ。