本文に移動
全体  > 経済

「顧客にたかる」金融モラルハザード…懲罰的な損害補償など処罰強化を

登録:2019-12-16 02:14 修正:2019-12-16 16:45
[金融規制方式の全面的な見直し求める声] 

金融商品融合・複合事故が多発 
金監院、分野またぎ監督を強化 
「覆面調査官」予算倍増へ 

私募ファンドの事前規制ほぼ不可能 
違反時はCEOも一罰百戒を 
顧客の被害、迅速な補償も重要 
「金融政策と監督の分離が急がれる」
12日午前、ソウル汝矣島の金融監督院前。金融正義連帯と派生関連ファンド(DLF)被害者対策委員会の主催で、紛争調停を糾弾し詳細基準の公開を求める記者会見が行われている//ハンギョレ新聞社

 金融監督当局が、派生関連ファンド(DLF)の大規模損失発生を契機に限界を露呈した現行の金融監督システムを改善する案を準備中であることが確認された。

 15日の金融当局の発表によると、金融監督院はまず、最近金融事故が銀行・証券・資産運用などの複数の金融分野にわたって発生する新たな様相が見られることから、現行の分野別に分かれている監督組織に、分野横断的な「機能別監督」を補うことを検討中だ。前任のチェ・フンシク金監院長時代に作られた銀行担当の副院長と資本市場担当の副院長直属の二つの「監督調整チーム」(健全性・営業行為)の機能を拡大するとともに、副院長らの協議体を強化する方針だ。また現在、監督の死角地帯にある私募ファンド監督の強化に向け、売れ筋商品の性格や危険性などを迅速に把握する機動機能を強化する予定だ。

公募ファンドと私募ファンドの設定額の推移=資料:金融投資協会//ハンギョレ新聞社 

 事前監督を補う手段であるミステリー・ショッピング関連予算を増やし、消費者に対する警報の発令を補完することも検討中だ。ミステリー・ショッピングは、調査員が客を装って金融会社の窓口で相談を受ける評価方式だが、予算は2015年の2億2千万ウォン(約2050万円)から今年は6千万ウォン(約560万円)へと大幅に削減された。来年は2倍ほどに増やし、事後管理も強化する方針だ。消費者警報の発令は、苦情や消費者被害の増加の可能性などを考慮し、弾力的に運用する予定だ。金監院はこのような内容を柱とする改善案を来年の業務計画に盛り込む方針だ。

 しかし、金融市場のモラルハザードが蔓延している状況の中、この程度の対策ではリスク要因を迅速に把握して対応するには限界が明らかで、金融規制のあり方を全面的に見直すべきだと専門家らは言う。

 専門家たちの代表的な主張は事後規制の強化だ。私募ファンドの場合、事前の規制はほとんど不可能なだけに、違反の際は一罰百戒で市場に明確なシグナルを送るべきだという。政策としては、米国・英国などの金融先進国が共通して運営する懲罰的損害賠償制(損害額の数倍を補償させる制度)の導入が第一に挙げられる。法違反時に科される課徴金の金額も大幅に増やすべきとする。韓国の金融分野で、これまでで最も高かった課徴金は、2013年の貯蓄銀行事件の67億ウォン(約6億2600万円)だ。兆単位の罰金を科す米国などとは対照的だ。また、巧妙に制裁を逃れる金融会社の最高経営者にも責任を問う法的根拠を設けることも、大半の専門家が提案している。

 ソウル大学法学専門大学院のチョン・スンソプ教授は、顧客に被害が発生した際、より迅速に補償が受けられるように制度を改善することも重要な課題だと話す。チョン教授は「今は被害補償を受けるためには、監督機関による審査の後に紛争調停を行うが、ここで合意に至らなければ三審制の裁判を経なければならない」とし、「被害者が裁判以外の紛争解決手続きによって、より迅速に損害を回復できるようになれば、金融会社もこれを意識するはずなので、非常に効果的だ」と述べた。同氏は「韓国は監督当局が課徴金を科しても国庫に入るため、被害者は補償を受けられない」とし、米国の「公正な基金(Fair Fund)」制度をベンチマーキングすることを提案した。同制度は、証券監督当局が民事制裁金を受けとり、これを被害顧客に対する補償の財源として活用する方式だ。

 成均館大学法学専門大学院のコ・ドンウォン教授は、「今論議されている対策が講じられれば、今よりはよくなるが、依然として不十分だ」とし、監督当局の市場把握能力向上の努力とともに、金融監督システムにも手を加える、より根本的な対策が必要だと主張する。同氏は「いまのように金融委員会が金融政策と監督権限の両方を持つ組織構造では、金融産業の育成のための規制緩和に重点を置くことになる。しかし、これを牽制する機関がなく、制度的な穴が生まれることになる」とし、金融政策と監督の分離が最重要課題だと指摘した。

パク・ヒョン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/finance/920903.html韓国語原文入力:2019-12-15
訳D.K