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「手の中の旅行社」…オンライン旅行会社の快走で旅行業界に地殻変動

登録:2019-10-10 05:40 修正:2019-10-10 11:43
米国大型OTA韓国進出6年で 
国外宿泊70%がオンライン予約 

韓国人、旅行需要多くトレンド敏感 
LCC増え安価な航空券も増加 
海外業者「韓国市場は魅力的」 
攻撃的進出で市場支配力高める 

国内業者、規模拡大で立ち向かうも 
資本力のある海外業者と競争に「脂汗」 

キャンセル・返金拒否など消費者の不安が課題
グラフィック=キム・スンミ//ハンギョレ新聞社

 オンライン旅行会社(OTA, Online Travel Agencies)が旅行業界の版図を揺るがしている。オンライン旅行会社とは、高度なオンラインシステムを基にした価格比較(メタ検索)、ホテル・航空券の予約代行などの旅行関連サービスを提供するオンライン旅行業者のこと。航空券の価格比較検索エンジン「スカイスキャナー」や「KAYAK(カヤック)」、宿泊予約サービス「Agoda(アゴダ)」や「Hotels.com(ホテルズドットコム)」など、オンラインを基盤にした旅行関連サービスが広義のオンライン旅行会社に当たる。

 オンライン旅行会社の始まりは1994年にさかのぼる。ホテル検索サイト「トラベルウェブドットコム」がオンライン予約機能を初めて備えたのを皮切りに、グローバルオンライン旅行会社は単なる予約機能にとどまらず、価格比較、最低価格競争などを通じて成長を続けて来た。韓国には2012年の韓米自由貿易協定(FTA)発効を機にエクスペディアのような米国の大手オンライン旅行会社が進出した。

スマートフォン・LCC…「韓国は魅力的な市場」

 旅行業界においてグローバルオンライン旅行会社の立場からは「韓国は魅力的な市場」と口を揃える。モバイルに慣れている上、体験型旅行、「ホカンス(ホテルでバカンスを過ごすこと、またはそういう人)」など自由旅行を中心に旅行トレンドがよく変わるからだ。旅行需要も多い。昨年の出国者数は2800万人に達するなど、2010年以降9年連続で増加している。あるグローバルオンライン旅行会社の関係者は「韓国は1年間で5000万の人口の半分以上が出国するほど旅行需要が高く、スマートフォン利用率も高いので、インターネット旅行会社が進出しやすい環境。韓国人が『外国でひと月暮らし』、一人旅、ホカンス(ホテル+バカンス)などの多様な旅行トレンドを主導しているということもオンライン旅行会社には肯定的な信号」と語った。

 格安航空会社(LCC)の増加もオンライン旅行会社の成長を促している。格安航空会社が短距離中心の出国需要を引き出したことで自由旅行需要も増えており、これに伴ってオンライン宿泊予約なども増加したという。ある大手旅行会社の関係者は、「国内外の格安航空会社が就航地を増やしたことで特価航空券のような割引が増え、航空券を個別に購入する旅行需要が増えた。このため、インターネット旅行会社も攻撃的に韓国に進出するようになった」と分析する。

世界と韓国のオンライン旅行市場規模//ハンギョレ新聞社

OTA全盛時代…挑戦する韓国業者

 実際、オンライン旅行会社を活用した旅行は一つの流れとして定着した。世宗大学観光産業研究所とコンシューマーインサイトが成人1027人を対象にした調査によれば、昨年第1四半期には、海外旅行の際に宿泊の予約購入先として70%が「旅行商品の予約専門チャンネル」を挙げるなど、オンライン旅行会社の利用が多いことが分かった。宿泊先に直接予約した人は15%、総合旅行会社を利用した人は7%だった。2017年第2四半期にはオンライン旅行会社を通じた宿泊予約は61%に止まっていた。今年上半期のオンライン旅行会社を通じた航空券予約の割合も、2年前に比べて5.4%増加の29.5%を記録した。

 韓国のインターネット旅行会社も規模を拡大している。レジャー・プラットフォーム「ヤノルジャ」は先月、ホテル・レストランの予約アプリ「デイリーホテル」を買収したのに続き、航空券検索アプリ「カヤック」と提携して航空券検索サービスを開始し、現代キャピタルのカーシェアリング・プラットホーム「ディルカ」と組んでレンタカーサービスを加えるなど、総合オンライン旅行会社としての地位を固めつつある。宿泊アプリ「ヨギオッテ」の運営会社「ウィード・イノベーション」は最近、英国系私募ファンド運用会社「CVCキャピタル」に買収された後、中国のインターネット旅行会社「チューナー(Qunar)」の創業者の一人を取締役会の新規メンバーとして迎えるなど、グローバル市場への進出を狙っている。旅行スタートアップ 「マイリアルトリップ」も、スカイスキャナーのチェ・ヒョンピョ韓国総括責任者を航空企画総括責任者として迎え、ワグトラベルはシンガポール法人や日本支社などを置いてグローバル・アクティビティー市場を狙っている。

過度な市場支配力、消費者の不満増加は課題

 ただ、大きな資本を持つグローバルオンライン旅行会社が攻撃的に進出してくることによって市場支配力を過度に高め、新規事業者の参入を阻む恐れがあるとの懸念も指摘されている。韓国文化観光研究院のキム・ヒョンジュ研究員は2017年の報告書の中で「新規参入者の市場占有率は低い反面、既存のオンライン旅行会社の占有率はさらに高まっている状況」と指摘し、「外資系オンライン旅行会社の市場支配力が拡大することにより国内オンライン旅行会社の競争力が低下している。オンライン旅行市場の成長可能性や潜在力などを考慮すると、市場の診断や政策的アプローチが必要だ」と助言した。

 消費者の不満が増えているのも課題だ。韓国消費者院によると、2017年から今年5月までの約3年間に「国際取引消費者ポータル」に寄せられたグローバル宿泊・航空予約代行サイト関連の消費者の不満は2024件で、このうち73%が「キャンセル・返金の遅延や拒否」だった。オンライン旅行会社による消費者の被害などが大きくなる中、文化体育観光部と国内外のオンライン旅行会社、関連団体、韓国消費者院は先月、官民協議体を立ち上げ、消費者保護の実態調査を実施することにした。

シン・ミンジョン記者

グルメツアー…自由日程拡大…既存旅行会社「反撃」
OTA攻勢への対応法

 オンライン旅行会社の攻勢に既存のパッケージ旅行会社は変化を模索している。パッケージ旅行の需要が減って自由旅行へと重心が移ったことで、各旅行会社はパッケージ旅行の長所と自由旅行を組み合わせた商品を次々と発売している。

 ハナツアーは、「知らない人たちと決められた日程を消化する旅は嫌」と考える人を考慮した「私たちだけの単独旅行」という商品を販売している。4人以上が集まれば出発が確定する商品で、専用車両やガイド同行などのパッケージ旅行の長所を生かしつつ、日程・レストランなどを消費者が選択できるようにしたのが特徴だ。航空券を事前に購入し、海外現地ツアーに参加する人が増えていることに着目し、航空券を除いてガイドツアーと宿泊を組み合わせた「ツアーテル」も発売した。ハナツアーの関係者は「10年あまり前から自由旅行が大きな流れとなっており、パッケージ旅行市場が急速に変わりつつある。従来型の旅行会社としてはパッケージ旅行が最も強みのある分野であるため、パッケージ旅行を維持しながら変化をつけている」と語った。

 モドゥツアーはグルメ、趣味、教養などのテーマに基づいた旅行商品「コンセプトツアー」に注力している。カフェ「ブルーボトル」1号店、ワイン農場訪問などを組み込んだ米カリフォルニアへのグルメの旅、タイのバンコクマラソン参加を組み込んだ商品、米国のハーバードやMITのキャンパスツアーなどを組み込んだアイビーリーグ教育の旅、ペット同行商品など、消費者の多様な興味に対応した商品を販売している。モドゥツアーの関係者は、「従来のパッケージ旅行商品が地域中心だったとすれば、最近は現地で何ができるかに重点を置いたテーマ型商品を発売している。嫌われるショッピングやオプションなどを従来のパッケージ旅行から取り除くのも最近の流れ」と述べる。ノランプンソン(黄色い風船)も昨年「ライトパック」を発売し、航空券と宿泊がセットになったエアテルに現地での一日ツアーを加えた「パッケージ型」と、従来のパッケージ旅行から自由旅行日程を増やした「自由旅行型」から、消費者が選べるようにしている。

シン・ミンジョン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/marketing/912614.html韓国語原文入力: 2019-10-09 18:17
訳D.K