8月の消費者物価指数が1年前より下落し、史上初の“マイナス物価”が現実化した。長引く景気低迷と需要不振のため、デフレ(物価下落)を懸念しなければならない状況に至ったわけだ。しかし、物価管理当局である企画財政部と韓国銀行は、「供給面の変動性の影響が大きい」とし、デフレの状況とは程遠いと線を引いた。
3日、統計庁が発表した「8月の消費者物価動向」によると、8月の消費者物価指数は104.81で、前年同月(104.85)比0.0%の上昇率を記録した。公式的な物価上昇率は小数点第二位を四捨五入して0.0%になったが、小数点第三位まで計算すると、0.038%下落し、事実上マイナスを記録した。これは1965年統計作成以来、歴代最低値だ。その前には1999年2月、0.2%上昇したのが最低だった。対前年同月比の物価上昇率は、今年1月に0.8%を記録した後、7月まで0%台半ばを維持してきた。
8月の全体商品の物価は前年同月比1.3%下落したものの、サービス物価は1%上昇した。商品の中で、農畜水産物物価は7.3%下落し、全体の物価上昇率を0.59%ポイント引き下げた。穏やかな気候条件などで生産量が増加した結果だ。国際原油価格の下落傾向に石油類価格も6.6%落ち、0.15%ポイントの下落効果をもたらした。サービス物価のうち家賃は0.2%下落したが、個人サービスは1.8%上昇した。季節などの要因によって価格の影響を大きく受ける農産物や石油類を除いた「コア(物価)指数」は0.9%上昇した。
統計庁は、消費者物価が史上初めてマイナスを記録したことについて、「一時的な現象」だと分析した。昨年の猛暑による農産物価格の上昇のボトムアップ効果や油類税の引き下げなど、政府政策が影響を及ぼしたということだ。イ・ドゥウォン統計庁物価動向課長は「調査対象460品目のうち32%の151個の価格が下落し、昨年8月に下落した品目(122個)より多いが、大半が農畜水産物や石油類」だとし、「商品およびサービス全般の持続的な物価下落と定義されるデフレとは違う」と述べた。
専門家らはデフレの定義にこだわる状況ではないという立場だ。パク・ボギョン慶煕大学教授(経済学)は「0%台半ば前後の低物価が続く現状況だけでも、デフレに対する警戒心を持たなければならない」とし、「金利の引き下げなど単発的通貨政策を超える韓国型量的緩和を検討すべき時期」だと指摘した。韓国開発研究院(KDI)のキム・ソンテ経済展望室長は、「国際原油価格の下落など供給要因が混ざっており、直ちにデフレと断定することはできないが、少なくともデフレを経験する確率がさらに高まっていることは事実だ」とし、「需要不振と景気低迷から抜け出せる政策手段を総動員し、生産性の低下を食い止められる長期的な構造改革も並行しなければならない」と述べた。
国内総生産(GDP)デフレーターの急落振りも、このような危機意識を裏付けている。同日、韓国銀行は第2四半期の国内総生産デフレーター増加率が前年同期に比べてマイナス0.7%で、3期連続でマイナス行進を続けていると発表した。3期連続のマイナスは、通貨危機時の1998年第4四半期以来初めてだ。しかも、昨年第4四半期は-0.1%、今年第1四半期は-0.5%に続き、下げ幅が徐々に大きくなっている。GDPデフレーターは、名目GDP額を実質GDP額で分けて求めるが、国内で起きた全ての経済活動を包括して算出する物価指数だ。国民経済の無気力症が進行しているという意味だ。
しかし、物価管理当局はデフレへの懸念を一蹴した。キム・ヨンボム企画財政部1次官とユン・ミョンシク韓銀副総裁は同日朝9時、ソウル中区の銀行会館でマクロ政策協議会を開き、「最近の低物価基調は供給側の変動性拡大によるもの」だと強調した。キム次官は「変動性が大きな供給面の要因と庶民負担の緩和に向けた政策の要因を除いた物価上昇率は1%前半台を維持している」とし、「供給面の基底効果が緩和される年末からは物価上昇率が0%台の後半になるだろう」と見通した。
世界経済全般で低物価現象が現れているだけに、経済構造の変化による長い流れの物価変動を観察すべきだという指摘もあった。ユン副総裁は「グローバル化、技術進歩など構造的な影響が拡大し、景気とインフレーションの関係がこれまでより弱まったものと分析される」とし、「韓国の場合、対外開放度が高く、情報通信(IT)技術の普及とオンラインでの取引拡大が速く、人口の高齢化も急速に進んでいるため、構造的な要因の影響がより大きい」と指摘した。
これについてパク・ボギョン教授は、「デフレとは見なせないという物価当局の安易な反応が、かえって市場に誤ったシグナルとして作用しかねない」と述べた。キム・ソンテ室長も「世界各国が低物価であることは確かだが、韓国のように深刻なところはない」と反論した。実際、今年7月基準で、米国の物価上昇率は1.8%、英国2.1%、フランス1.3%、ドイツ1.1%などと韓国より高い水準を維持している。