本文に移動
全体  > 経済

来年の最低賃金、事実上削減レベル

登録:2019-07-13 07:13 修正:2019-07-14 12:08
最低賃金委員会、2.87%引き上げの「使用者案」採択 
成長率・物価上昇率の合計に及ばず 
 
今年よりも時給240ウォン上がった8590ウォン 
外国為替・金融危機を除けば引き上げ率が最低

 2年連続でアクセルを踏み込んだ最低賃金が、今度は急ブレーキをかけ、速度調節に出た。最低賃金委員会は、今年2年連続で二桁の上昇率を記録したが、来年は10年ぶりに最も小幅の2.87%だけ引き上げることにした。経済成長率の展望値と物価上昇率の合計にも及ばない2.87%は、事実上削減に当たるという批判の声もあがっている。

 最低賃金委員会は、前日から始まり12日未明の5時30分まで続いた全員会議で、来年分の最低賃金の時給を8590ウォンに決定した。労働者委員たちが6.3%引き上げて提示した8880ウォン(約816円)と、使用者委員らが打ち出した8590ウォン(約790円)を票決に付し、15対11(棄権1)で使用者案が採択された。8590ウォンは今年8350ウォンから240ウォン(引き上げ率2.87%)が上昇した金額で、給料(1カ月で209時間)基準では、今年の174万5150ウォンから5万160ウォンが上がった179万5310ウォン(約16万5千円)になる。

最近10年間の最低賃金引き上げ率の推移(単位:%、資料:雇用労働部、最低賃金委員会)//ハンギョレ新聞社

 所得主導の成長を掲げた文在寅(ムン・ジェイン)政権が発足して以来、最低賃金上昇率は16.4%(2018年)、10.9%(2019年)など2年間で29%上がったが、3年目には2.87%に急落した。これは、通貨危機を迎えた1998年9月~1999年8月分に適用された2.7%、金融危機直後の2010年分に適用された2.75%に次ぐ、歴代3番目に低い引き上げ率だ。

 2.87%は韓国銀行の今年の経済成長率展望値2.5%と物価上昇率1.1%を合わせた数値にも及ばない。この数値ほど賃金が上がらなければ、実際の購買力は維持できないという点で、これより小幅な賃上げに対し「実質賃金水準では削減された」(チョン・ビョンユ韓信大学教授)という指摘もある。最低賃金委員会は、この日議決された最低賃金の影響を受ける労働者は137万~415万人(影響率8.6~20.7%)と推定されると発表した。韓国労働社会研究所のキム・ユソン理事長は「最近改善したことが分かった低賃金労働者の状況が、来年再び悪くなる可能性がある」と分析した。政府は、今年4月現在、中位賃金の3分の2以下にある低賃金労働者の割合が、2018年6月初めて20%を下回ったと発表した。

 これに先立ち、政府は今年から最低賃金法違反の有無を見極めるいわゆる「算入範囲」に、ボーナスや各種福利厚生費などを入れる制度を適用し始め、「あげたふりして奪い返す最低賃金」という批判を受けた。福利厚生費などの最低賃金認定比率は毎年増え、2024年には全額が認められる。最低賃金上昇率の半減効果が大きくなるのだ。例えば、今年は定期ボーナスの25%を差し引いた金額を算入範囲計算に入れるが、来年に差し引かれる割合が20%になる。福利厚生費(7%→5%)も同じだ。

2020年適用の最低賃金が、今年より2.9%値上がりした時間あたり8590ウォンに決定された。バク・ジュンシク最低賃金委員長(左)とクォン・スンウォン淑明女子大学経営学部教授が12日、世宗市の政府世宗庁舎の最低賃金委員会全員会議室で投票結果を背景にブリーフィングを行っている/聯合ニュース

 こうした結果は、政府与党側が最低賃金上昇による中小零細商工人の困難と雇用減少に対する懸念を掲げ、これまで提起してきた「速度調節論」の効果と見られる。低賃金労働者という“弱者”と零細商工人という“弱者”の戦いというフレームが作動したのだ。ホン・ナムギ副首相兼企画財政部長官は先月「来年度の最低賃金引き上げ水準が最小化されなければならない」と述べた。パク・ジュンシク最低賃金委員長も同日のブリーフィングで、「最近厳しい経済・社会環境に対する正直な省察の結果だと思う」と述べた。

 しかし、パク委員長さえ「私が思った以上低く決定されたことに驚いた。個人的に残念だ」と述べるほど、2.87%の数値が与える影響は小さくない。これによって、文大統領の任期内最低賃金1万ウォンの公約達成は事実上困難になったものとみられる。2022年までに1万ウォンを達成するためには、来年分の8590ウォンを2年間で16.4%上げなければならない。韓国労総は同日に声明を発表し、2.87%引き上げ案を「惨事」とした上で、「最低賃金1万ウォンを通じた二極化の解消や労働尊重社会の実現も不可能になった」と指摘した。

 政府の所得主導成長論が減速する分岐点と見る専門家もいる。これまで韓国型失業扶助制度の導入や勤労奨励税制(EITC)拡大など、所得主導成長論を支える様々な政策を実施してきたが、とりわけ最低賃金が「すべては最低賃金のせい」という保守勢力のターゲットとなってきた。キム・ユソン理事長は「最近、公共部門の正規職化政策も、無期契約職の返還後の処遇改善や民間部門の拡散については手を拱いているなど、文在寅政権の労働市場政策が全般的に後退している」と指摘した。

 今月18日の全面ストライキを予告した全国民主労働組合総連盟は、同日に発表した声明で、2.87%を「所得主導成長の廃棄宣言」と規定し、「最小限の期待さえ踏みにじられた、憤った低賃金労働者とともに、労働改悪の粉砕に向けて全面ストライキを含む全面的な闘争を組織する」と明らかにした。

チョン・ジョンフィ記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/society/labor/901647.html韓国語原文入力:2019-07-12 21:28
訳H.J

関連記事