80インチ以上に大きくし画質は4倍鮮明に…、横長画面を縦にして見て、見ない時は画面を巻いておく…。
他の家電製品に比べておとなしいと見られてきたテレビ市場だが、今年下半期はいつにもまして忙しい。世界のテレビ市場を牛耳っているサムスン電子とLG電子は「さらに大きく、さらに鮮明に」の競争に本格的に突入し、プレミアム市場の拡大に乗り出し、低価格による競争力を前面に出したTCLなど中国企業の攻勢はさらに強まる展望だ。市場調査企業IHSマーケットの資料によれば、昨年の全世界のテレビ出荷量は2億2100万台だった。スマートフォン(14億3100万台)のように購買周期が短くなく、大きな注目を浴びることはないが、高価なうえに一度買えば5~10年は使うだけに、技術力とトレンドを詳しく確認する必要がある。
さらに大きく
最近のテレビ市場は、大画面化にフォーカスされてきた。IHSマーケットの資料によれば、40~49インチテレビの全世界出荷量の割合は、2017年の33.8%から昨年は30.6%に下がった。一方、50インチ台の比重は22.2%から25.7%に上がり、60インチ台も5.9%から7.1%に増加した。平均で見れば、今年第1四半期には40インチ台の後半まで上がってきた。
大画面化は世界トップ2のサムスンとLGが牽引した。今年第1四半期、サムスン電子は全世界占有率(数量基準)18.8%で1位、LG電子は12.8%で2位だった。中国の低価格製品の物量攻勢に、サムスンとLGは2000ドル以上の製品の割合を大幅に膨らませ、高級化戦略を固めている。大きくなるほど価格は急に上がる。サムスン電子のプレミアムUHDテレビの基準で、49インチは出庫価格が92万ウォン(約8.4万円)だが、65インチは219万ウォン(約20万円)で二倍以上だ。両社は80インチ台を超えて最近は98インチ製品も出庫を増やしている。
“大画面化”戦略は、消費者の目をひきつけ財布を開かせるが、前に立ち塞がる壁も侮れない。リビングの大きさには限界があるためだ。82インチテレビをリビングに置けば、対角線の長さが2メートルを超す。業界では、100インチ以上は“無理”ということに共感している。
さらに鮮明に
最近火花が散っているのは“8K(8000)”に代表される超高画質競争だ。テレビの解像度はHD(1366×768)→FHD(1920×1080)から“4K”と呼ばれるUHD(3840×2160)へと進化を繰り返してきた。後者になるほど画素数が多く鮮明だ。そして価格も高い。現在のテレビ市場は4Kが中心だ。昨年、全世界の出荷量基準で44.75%が4Kだった。一段階下のFHDは24.13%だった。解像度技術の発展は大画面化と相まって進行中だ。
世界のテレビメーカーはすでに8Kを展望している。8Kは、4Kより4倍鮮明だ。シャープが2017年12月に世界で初めて8Kテレビを出した後、サムスン電子が昨年8月にQLED 8Kテレビを発表した。今年第1四半期にシャープは4800台余り、サムスン電子は1万300台余りを販売した。まだ“開始”段階である。LG電子は、サムスン電子とは異なりOLEDパネルを使った8Kテレビ(88インチ)を7月1日に出すことにし、予約を受けている。
これに中国企業らも挑戦状を突きつけている。今月11日、中国の上海で開かれた「CES(電子製品博覧会)アジア2019」で、TCLとハイセンスはブースに8Kテレビを出した。参入業者が増えれば価格は下がるはずだ。今年下半期に8K戦争が本格的に繰り広げられると見られる。IHSマーケットは、8Kテレビの市場規模が2020年には142万8300台、2022年には504万5900台に急増すると見通した。企業らが8Kを踏み石としてテレビ市場の“クォンタムジャンプ”(爆発的発展)を狙っている理由だ。
だが、8Kへの“飛躍”は、当面は難しく見える。映像コンテンツに後押しされていないためだ。注目されるのは2020年東京五輪だ。日本は、来年の五輪中継を8Kで送出するとして準備中だ。世界的スポーツイベントはテレビ市場にとって大型の好材料だ。
さらに自由に
多様な“変奏”製品も下半期に待機している。世界初の“ローラブル”(巻ける)OLEDテレビをLG電子が年末に出す。見ない時は巻いて画面を片づけられる。LGディスプレイのパネル技術力を基にプレミアム市場を狙っている。サムスン電子は今月1日から“もっと縦に”テレビを販売している。「テレビは横」という固定観念を破り、縦に回して見ることができるようにした。モバイル・コンテンツになじむ“ミレニアル世代”をねらった。
サムスンとLGが中・高価製品に重心を移しているなかで、その空席は安い中国製品が埋めている。TCLの全世界占有率(数量基準)は、2017年は7.1%、昨年は8%、今年第1四半期には10.8%に増え、初めて2桁を占めた。TCLは特に北米市場で急成長し、今年第1四半期には26.2%の占有率でサムスン電子(21.8%)を上回り初めて1位に上がった。一部では、米中貿易戦争でテレビに対する関税引き上げの可能性が提起されている状況で、TCLが“在庫”拡大を甘受してひとまず出荷量を増やしたためという解釈も出ている。
サムスンの“QLED”か、LGの“OLED”か
神経戦の中、昨年販売はQLEDがリード
QLED? OLED?
テレビの購買で悩んだ消費者ならば一回ぐらいは聞いたことのある話だ。
QLEDはサムスン電子が主力で押している製品だ。LCD(液晶表示装置)パネルと光源の役割のバックライト(後方照明・backlight)の間に量子ドット(クォンタムドット)素材フィルムを入れ、画質をアップグレードした。OLED(有機発光ダイオード)はLG電子が主導してきたテレビの種類だ。有機物質が自ら発光するため、LCDvとは違いバックライトが必要ない。おかげで黒をよく表現でき、厚さもQLEDテレビより薄い。“ローラブルテレビ”をLGが最初に出せたのもそのためだ。その代わり、QLEDテレビにはOLEDより価格競争力があり、大画面化しやすい。サムスンはOLEDに対して“burn-in現象(画面に残像が残る現象)がある」と言い、LGはQLEDに対して「LCDに過ぎずOLEDとは次元が違う」と強調し、神経戦を行っている。
IHSマーケットの調査によれば、昨年の全世界でQLEDテレビは268万8000台、OLEDテレビは251万4000台が販売された。昨年、LCDテレビでサムスンは18.9%(数量基準)の占有率で1位、LGは11.7%で2位であり、OLEDではLG(62.2%)、日本のソニー(18.9%)の順だった。サムスンは最新スマートフォンにOLEDディスプレイを採択しているが、OLEDテレビは作っていない。