キム・サンジョ公正取引委員長は、文在寅(ムン・ジェイン)大統領がサムスン電子の国内工場を訪問し、イ・ジェヨン副会長に会ったことについて、「産業政策的努力の一環」だとし、これをめぐり「財閥改革の意志が後退した」という声が上がっていることについて、「不適切だ」と述べた。最近、財閥が支配構造の改善に向けた努力に消極的な態度を示していることについて、「現政権の任期5年間、政策基調は続く」と強調し、「必要な決定を遅らせてはならない」と警告した。
キム・サンジョ委員長は5日、ハンギョレとの電話インタビューで、「大統領がサムスン電子を訪問し、イ・ジェヨン副会長に会ったのは、革新成長に向けて5年、10年後の基盤を整えるため、産業政策的努力の一環として、政府として当然やるべきこと」だとし、「これを改革意志の後退と言うのは不適切だ」と述べた。さらに、「この2年間、大統領の話を聞く機会が多かったが、改革に向けた意志が変わったり、後退したと感じたことは一度もなかった。ある意味では私よりさらに強固だと感じるほどだ」と述べた。
キム委員長は、政府が支配構造の改善に向けた財閥の内部改革を促すだけで、積極的に取り組んでいないという指摘に対し、「誤解があるようだ」と述べた。キム委員長は「自発的な努力だけで成果を出すのは難しい」としたうえで、「現行法の厳正な執行と企業自らの変化を誘導すること、そしてこの二つを補う法制度の改編という三つの改革方法を結合しなければならない」と述べた。さらに、財閥たちの自発的な支配構造の改善について、「集中発注の解消や循環出資の解消など、肯定的な変化の始まりとして評価できる部分もあるが、最近、政府の政策基調の変化や後退が取り沙汰されたことを受け、静観する姿勢を取る企業もある」と懸念を示したうえで、「私が公正取引委員長に在職している間、または現政権の任期5年間は、政策基調が続く。企業は必要な決定を遅らせてはならない」と強調した。
キム委員長は革新成長の推進と関連し、大企業中心の成長戦略への回帰をめぐる議論について、「サムスンの非メモリー半導体や水素電気自動車をはじめとする未来の車、バイオなど産業領域の中心的な主役は大企業や財閥企業だと言えるため、そのような懸念が生じたものと見られる」とし、「しかし、このような産業は一社や二社の企業で成功できる課題ではなく、周辺の多くの中小企業とスタートアップがともに調和し、産業生態系を形成しなければならない」と説明した。さらに「政府はこうした課題を推進しながら、少数の大企業と財閥中心の経済政策ばかり展開するのではなく、関連する多様な企業による生態系を育成するため、努力している」と付け加えた。
キム委員長はまた、インターネット専門銀行の特例法に対し、銀産分離(財閥の銀行所有禁止)を緩和したとの批判の声があがっていることについて、「KTは、談合の疑いで公正取引委員会によって告発された瞬間、KTバンクの株式を現在の10%から34%に増やすことが不可能になった」とし、「インターネット専門銀行が銀産分離の緩和という主張は間違っている」と強調した。公正取引委員会は最近、KTを談合の疑いで検察に告発し、金融当局はKTのKTバンクに対する限度超過保有株主(大株主)の承認審査を引き続き中断することにした。インターネット専門銀行特例法における大株主適格性審査の条件上、公正取引法違反で罰金刑以上の刑事処罰を受ければ、5年間は銀行の大株主になれない。
キム委員長はまた、政府の3大経済政策の軸の中で、所得主導の成長の代わりに革新成長が強調されているという指摘について、「昨年下半期から経済状況が楽観的でなく、政府政策も経済活力の向上に重点を置かざるを得なくなった」とし、「経済環境によって政策の微調整が行われる過程を、政策基調の後退として捉えるのは誤解」だと述べた。