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韓国の高齢者たち、健康の許す限界まで「バーンアウト労働」

登録:2019-04-22 09:54 修正:2019-04-27 08:05
クォン・ジョンヒョンKDI研究委員の報告書を入手 
高齢者、生計のため仕事を辞められず 
65~69歳の中卒男性は勤労余力が「ゼロ」 
70~74歳は-1%ポイントで 
限界を超えて働いている 
高齢者福祉の議論に重要な示唆
中卒以下の高齢男性労働者の勤労余力//ハンギョレ新聞社

 韓国の70歳以上の低学歴の高齢者らは、健康の許す最大値を超えて過度に生計労働に従事しているという研究結果が出た。老後保障制度の不備で、高齢者が休みたくても生計のために働くしかない現実が、既存の調査よりもいっそう具体的な分析方法を通じて立証された。

 21日にハンギョレが入手した韓国開発研究院(KDI)のクォン・ジョンヒョン研究委員の報告書「高齢者の健康と引退年齢調整研究」によると、60歳以上の高齢男性の「勤労余力」が非常に低い水準だとあらわれた。勤労余力とは、高齢層の経済活動の参加の度合いと健康状態の特性をもとに、この年齢層が「さらに働ける程度」を表す概念だ。報告書は定年前の年齢である55~59歳を基準に、他の要素は排除して健康状態がこの年代の労働に及ぼす影響力を導出した後、これを高齢層に同じく適用し、高齢者層の健康水準による仮想の「推定雇用率」を算出した。これを実際の高齢者雇用率と比較してあらわれる差が「どれくらいさらに働けるか」を示す勤労余力だ。勤労余力が低いということは、それだけ多く働いているという意味だ。

 クォン研究委員の分析結果によると、中卒以下の高齢の男性のうち、70~74歳の年代の実際の雇用率(40%)は推定の雇用率(39%)よりむしろ高く、勤労余力が-1%ポイントだった。これは健康水準を超えて働いていることを意味する。65~69歳の中卒男性は実際の雇用率と推定雇用率(それぞれ52%)が同じで、勤労余力が0%だった。健康が許す限界まで働いているという意味だ。60~64歳の中卒男性の場合は実際の雇用率(66%)が推定雇用率(67%)より低かったが、差は1%に過ぎなかった。

全体の高齢男性労働者の勤労余力//ハンギョレ新聞社

 全体の高齢男性を見ても、勤労余力は低かった。60~64歳男性は2%ポイント、65~69歳は4%ポイント、70~74歳は4%ポイントだった。クォン研究委員は「60歳以上の高齢男性は現在、健康水準からみてすでに飽和レベルで労働活動に参加しており、さらなる勤労余力の存在を確認しがたい」とし、「老後保障制度の未成熟のような制度的要因や、それに伴う高齢者の貧困問題のためと判断される」と明らかにした。

 ただ、学歴が高いほど勤労余力も相対的に大きいことが分かった。高卒は3%ポイント(60~64歳)から9%ポイント(70~74歳)であり、大卒以上は8%ポイント(60~64歳)から23%ポイント(70~74歳)だった。

 クォン研究委員は「高齢男性が主に働く職場は賃金水準が低く、雇用の不安定性が高い」とし、「高齢者を対象に社会保険と福祉を強化し、社会経済的地位による健康格差を補完する政策の支援が必要だ」と述べた。同研究は、現在社会的に議論となっている定年延長や年金制度の見直しの過程で、望ましい方向性を模索するために、実際の高齢者の健康状態や勤労余力がどのレベルなのかを把握する趣旨で行われ、近く公式発表する予定だ。

勤務余力とは?

高齢層の経済活動参加の度合いや健康状態の特性をもとに、この年齢層が「さらに働ける程度」を示す概念。具体的に引退以前の特定年齢層(例えば55~59歳)を基準にし、他の要素は排除して健康状態だけがこの年代の労働に及ぼす影響力を導出した後、これを高齢層(60~74歳)に同じく適用し、仮想の「推定雇用率」を算出する。この推定雇用率から実際の高齢者雇用率(高齢者雇用人口/高齢者人口)を引いた数値が「勤労余力」だ。したがって、この値が0なら健康が許す限界まで、マイナスなら健康水準を超えてまで働いているという意味になる。

イ・ギョンミ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/890923.html韓国語原文入力:2019-04-22 08:38
訳M.C

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