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「初任給350万円、週44時間」光州型働き口は共生の一歩となるか

登録:2018-12-05 10:17 修正:2018-12-05 13:57
6日、光州市と現代自動車が投資協約式を予定 
国外へ出た国内製造業工場への回帰のきっかけになるかに関心 
軽自動車販売の低迷への懸念…一部では「エコカーの前進基地にすべき」
先月30日午前、現代自動車蔚山工場の労働組合事務所を訪問したイ・ヨンソプ光州市長(左から1番目)一行が、ハ・ブヨン現代自動車労組委員長(右から1番目)など労組幹部らと「光州型働き口」問題について協議している=蔚山/聯合ニュース

 4日、光州市(クァンジュシ)と現代自動車の新設法人合作投資交渉が暫定妥結し、「光州型働き口」を通じて労使共生型の持続可能な経済システムの礎石を築こうという文在寅(ムン・ジェイン)政府の構想は辛うじて暗礁に乗り上げる危機を免れた。しかし、依然として光州型働き口完成車工場で生産する車種や、国内の自動車産業の現状をめぐり、選好や判断はまちまちだ。今回の光州型働き口交渉に参加していない全国金属労組現代自動車支部の反発も負担になっているのは変わらない。

■地方自治体主導の社会的大妥協

 今回の暫定交渉妥結は、地方自治体が初めて労・使・民・政の大妥協を引き出した雇用創出ということに大きな意味がある。光州市と現代自動車は4日、国会予算案成立を控え、暫定的に交渉を終えた。両側の交渉は先月1日、「光州型働き口合意文」が出た後に急速に冷え込み、一時は取消の可能性まで取り上げられた。韓国労総光州本部など、地域の労働界から包括的な交渉全権を委任された光州市交渉団は6月、暫定合意案をもとに最終交渉案を調整してきた。両者は国会予算案処理前に暫定合意案を劇的に導いた。光州市が光州型働き口と関連して政府に要請した予算は2912億ウォン(約295億円)規模だ。

 最終交渉案の具体的な内容は伝えられていない。光州市の関係者は「光州市と現代自動車の間で暫定作成した合意書には、新設法人の賃金水準や委託物量などの内容は含まれていない」と明らかにした。ただし、労働者の平均初任給は年3500万ウォン(約355万円)水準、適正な労働時間は週44時間(隔週土曜日8時間勤務)で合意した可能性が大きい。最後まで核心争点だった「5年間団体交渉をしない」という内容は、労働界の意見を部分的に受け入れたという。

 光州型働き口は、国内初の社会的大妥協モデルに挙げられる。このモデルは、ユン・ジャンヒョン元光州市長が2014年6月、地方選挙の公約として初めて提案して注目された。2000年代初頭、ドイツのフォルクスワーゲン社で別途のアウト5000という法人を新設し雇用を創出したことを念頭においてのプロジェクトだった。専門家らは「委託生産という点で光州型働き口モデルは東煕オートと外見的には似ているが、下請会社を置かずに正社員を採用し、福祉インフラを提供する点が異なる」と説明している。

■期待効果

 光州の雇用環境は非常に劣悪だ。1人当たりの地域内総生産(GRDP)も2200万ウォン(約220万円)で、全国平均の70%にすぎないのが実情だ。昨年の純流出者8118人のうち、66%が20~30代の若者層だ。働き口がないからだ。光州型働き口が成功すれば、直・間接的に1万2000件余りの働き口が創出される見通しだ。

 光州型働き口モデルがほかの都市にも適用されるだろうという期待も少なくない。韓国GMが廃業した群山(クンサン)や、造船業の景気が低迷している慶尚南道巨済(コジェ)などが、第2の光州型働き口の導入を検討しうる地域として挙げられる。産業界の一部では、欧州や米国、日本のように国外へと出た製造業工場が国内にまた戻ってくるリショアリング(Reshoring)のきっかけになれるのかに注目している。エルゴノミックスのペク・スンリョル代表は「少々税制の恩恵を与えるからといって海外へ出た製造業工場が戻ってくるのは難しい。賃金と労使関係の革新モデルが定着すれば、長期的に海外へ出た国内製造業工場を戻らせることができる」と述べた。

■残る問題は

 光州型働き口政策が、地方自治体が直接投資する初の事例だということは少なからぬ負担となっている。一部では「新設法人の工場で生産する予定の軽自動車SUVの販売が振るわない場合、光州市が迂回投資した590億ウォン(約59億円)と金融界から引き入れる4200億ウォン(約426億円)の投資が、そのまま市民の負担となる可能性がある」と懸念している。このため、長期的にピッコウル国家産業団地を「エコカー生産前進基地」に変える必要があるという主張も出ている。

 全国金属労組現代自動車支部と民主労総など、労働界の一軸では光州型働き口モデルに反対していることも変数となっている。ハ・ブヨン金属労組現代自動車支部長はこの日、緊急声明書を出し「光州型働き口は、自動車産業施設が有り余っているため、過剰重複投資でみんなが共倒れする道」だとし、「自動車産業に危機と破綻をもたらす光州型働き口が合意されるなら、全面ストライキを強行する」と警告した。

チョン・デハ、シン・ドンミョン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/area/873066.html韓国語原文入力:2018-12-04 22:28。
訳M.C

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