政府が8日、来年の予算1兆ウォン(約990億円)以上を追加配分する方針を明らかにした「生活SOC(社会間接資本)」事業は、生活密着型施設の拡充が主な内容となっている。国民がその効果を肌で感じられる事業であり、生活の質の改善はもちろん、地域経済の活性化および雇用創出にも役立つという期待が込められている。現政府は大規模な土木工事を中心としたSOCの予算を大幅に減らし、福祉予算を増やすと強調してきた。しかし、景気減速局面が本格化したことを受け、国民の実感度が高い小規模な建設事業を通じて、ある程度景気浮揚の効果を狙むものと見られる。
同日、企画財政部が発表した資料によると、10大地域密着型生活SOCの拡大事業(前年比1兆ウォン以上投資する予定)には文化・生活体育施設や地域の観光インフラ、都市再生分野、農漁村の生活環境の改善、スマート農業、老朽化した産業団地の再生およびスマート工場、福祉施設の整備、生活安全インフラの構築、大気汚染への対応、新再生エネルギーの拡充などが含まれる。大半が従来の分類ではSOCに含まれなかった事業だ。例えば、障害者やホームレス、片親家庭のための福祉施設のうち、老朽化した施設を整備する事業は、本来は福祉分野に含まれており、都市の森作りは農林分野の予算に属する。
オ・ウンシル企画財政部(企財部)予算管理課長は「土木事業のような従来のSOC事業と一部重なるものの、概念においては全く異なる。ただ、社会の全般的な環境を変えるのが広い意味のSOCと言えるなら、今回含まれた事業もそのような面があるため、『生活SOC』と名付けた」と説明した。文在寅(ムン・ジェイン)大統領も今月6日、首席・補佐官会議で生活SOCに対する果敢な投資を求めると共に、「従来のSOCとは異なり、土木に対する投資ではなく、人に対する投資」だと強調した。
政府が生活SOCの拡充を打ち出した背景には、建設景気の減速や雇用指標の悪化など、最近の景気状況があると見られている。短期的な景気浮揚の効果を出すのに、建設事業が与える影響が少なくないからだ。韓国建設産業研究院が韓国銀行の国内総生産(GDP)の資料をもとに算出した第2四半期「建設投資が誘発した働き口数」は92万7144件で、昨年第2四半期の93万3782件より6638件も減少した。第2四半期建設投資が前年同期に比べ、4.2%減少するなど、建設景気の減速傾向が明らかになったことによるものだ。政府も生活SOCが民間投資など総需要を増やすための政策であることを明確にしている。企財部側は同日、「小規模インフラ事業を活性化することで、雇用の増加につながるだけではなく、インフラの建設・運営段階で民間投資が増える可能性もある」点を生活SOC事業の期待効果に挙げた。
専門家らは生活環境の改善や安全のための予算を拡大することは評価しながらも、生活SOCが過去無分別に進められてきたSOC事業を増やす道具になることは警戒すべきだと指摘した。ソン・テユン延世大学教授(経済学)は「政府が既存の予算編成方向を変更せず、景気を刺激しようと生活SOCという概念を持ち出したようだ」としながらも、「ただし、過去の無分別なSOCとは異なり、国民生活便益の増進などの効果が明らかな事業を中心に進めるべき」だと話した。
生活SOC予算の増額と別に、政府は2019~2021年のSOC予算を年平均7.5%減らすことにした既存計画の見直しも行っている。企財部は「大型建設事業が含まれたSOC削減方針の見直しは別に進められている」と明らかにした。これに先立ち、キム・ドンヨン副首相兼企財部長官は2日、「SOCが地域経済に及ぼす影響が大きく、雇用の安定を考慮し、予算の絶対額を引き上げるまではいかなくとも、(削減計画を)縮小するのは検討する必要がある」と述べた。