韓国国内の主要上場企業の大株主である国民年金が、機関投資家としての議決権行使に積極的に取り組むという趣旨で、来年「スチュワードシップ・コード」(議決権行使指針)の導入を公式化した。このため国民年金が投資した企業の価値が毀損されかねないと判断されれば、重点管理対象会社に指定し名簿を公開するなどの細部指針が用意される見込みだ。
保健福祉部は1日、第7回国民年金基金運用委員会を開き、「国民年金責任投資・スチュワードシップ・コード研究」に関連する内容を中間報告し議論した。パク・ヌンフ福祉部長官は「スチュワードシップ・コードの採択は、投資収益の保護を通じて基金の中・長期的収益性を向上させる目的であり、すでに米国や英国など海外20カ国以上の先進国で導入している世界的流れ」だとし、制度導入の必要性を公式化した。パク長官はこの日の会議の後、記者たちと会った席で制度の導入時期について「早ければ来年下半期になるだろう」と述べた。昨年末現在で国民年金は、サムスン電子など韓国の上場企業276社で株式持分5%以上を保有している。
この日基金運用委に報告された「中間報告」の内容は、今年7月から高麗大学産学協力団が作成したもので、先月15日に政策討論会を経た。主な内容を見れば、国民年金は投資対象会社の経営成果など財務的要素の他にも、環境経営、社会責任経営、企業支配構造のような要素を点検しなければならない。このような点検の結果、企業価値が毀損される恐れがある場合には、まず理事会との対話を推進するものの、憂慮される問題が解消されなければ重点管理対象会社に指定して名簿を公開することとした。また、企業の支配構造と関連した憂慮が提起された上場企業に対しては、社外重役と監査候補を推薦する方案も含まれた。理事の違法行為などによる被害がある時は、直間接的な救済のために株主代表訴訟や証券関連損害賠償訴訟も提起することにした。
国民年金の社会責任投資委託規模を拡大することにし、段階的に国内委託運用資産の規模の30%まで増やすという目標も立てた。今年7月基準で責任投資委託ファンドは約6兆2千億ウォン(約6300億円)規模(株式委託の10.8%)に達する。1段階で今後1~2年以内に20%まで増やし、5年後には30%に拡大する方針だ。
これと共に、国民年金が政権の影響に振り回されることがないようにするため、現行の議決権専門委員会を「受託者責任委員会」(仮称)に拡大・改編し、この委員会で株主権の行使と社会責任投資関連事項の全般を決められるようにする方案も研究結果に含まれた。
福祉部はこの日の基金運用委で、社会責任投資専門委員会を設置する方案についても報告した。社会責任投資の観点からモニタリングを強化し、環境・社会・支配構造の側面で問題がある企業に対する投資制限や変更を基金運用委に勧告する役割を受け持つことになる。
韓国最大の機関投資家である国民年金が、スチュワードシップ・コードの導入を公式化したことに伴い、他の年金基金や資産運用会社の参加も拡大するものと予想される。スチュワードシップ・コードを導入した機関が、これまでの機械的賛成者から抜け出して株主総会の案件に積極的な議決権を行使するのはもちろん、投資会社の長期的価値向上のために経営陣と額を突き合わせるならば、企業の支配構造改善にも転換点になるだろうと専門家たちは見ている。