世界の鉄鋼産業に保護貿易の嵐が吹き荒れている。中国の過剰供給による廉価輸出が各国の輸入障壁を高める原因になっているが、反ダンピングと相殺関税措置の対象となるのは、国内企業も例外ではない。生産量の半分を輸出してきた国内鉄鋼業界は、保護貿易主義の拡散により非常事態に入った。
米商務省は5日(現地時間)、韓国製の熱延鋼板に最高61%の反ダンピング・相殺関税率を課すことを最終決定した。米国政府は日本やブラジルなど残る6カ国の鉄鋼メーカーにも関税を課す予定だが、輸出の比重が高い国内企業はかなりの打撃を受けることになった。
昨年、韓国は米国に熱延鋼板115万トンを輸出した。金額にすると7億ドル規模だ。このうち、ポスコの製品が75%を占める。ポスコは今回の判定と関連し、「世界貿易機関(WTO)への提訴など法的措置を講じる計画」としたうえで、「米国への輸出量は他の輸出先に販売するなどの方法で被害を最小化する」方針を明らかにした。
これに先立ち、米商務省は韓国を含めた5カ国のメーカーの冷延鋼板に反ダンピング・相殺関税を課した。今年5月には中国製の冷延鋼鈑に522%もの反ダンピング関税を課した。 熱延鋼板を圧縮して作る冷延鋼板は、自動車や家電製品などに使われる高級鉄鋼材だ。
輸入鉄鋼製品に対する規制を強化しているのは米国だけではない。欧州連合(EU)や日本、インドも自国産業を保護するため、貿易障壁を高めている。欧州連合執行委員会は最近、中国製の冷延鋼鈑に22%、ロシア製品に36%の反ダンピング関税を課すことを決定した。 これに先立ち、欧州連合は昨年、韓国や中国、日本、ロシア、米国から入ってくる電気鋼板に反ダンピング判定を下した。
各国が貿易障壁を高めている背景には、世界的な生産過剰と自国産業を保護しようとする政策基調がある。金融危機が発生した2008年以降、安価な中国産の鉄鋼が押し寄せ、これによる保護貿易主義の傾向は最近さらに強まっている。今年、欧州連合は域外メーカーの鉄鋼製品に対する強力な輸入監視制度を導入した。
過去には、米国が輸入鉄鋼製品にセーフガード(緊急輸入制限)措置を取った際、韓国の対米鉄鋼輸出は1年間で30%以上も急減したことがある。ポスコのクォン・オジュン会長は6日に役員や従業員らに送った電子メールで、「世界経済が悪化し、最近、一部の先進国も保護貿易主義の基調を示している」としたうえで、「各国の輸入規制の動きを注視しながら、現地の鉄鋼業界や通商当局との対話チャネルを強化し、事前対応力を高める」ことを求めた。
国内メーカーは対策作りに腐心しているが、各国が貿易障壁を強化する場合、これといった打開策がないというのが問題だ。産業研究院のチョン・ウンミ上席研究委員は「今の新保護主義の根底には、世界的な鉄鋼過剰設備という需給構造とともに、稼働率を維持しようとする鉄鋼メーカーの利害がある」と指摘し、「鉄鋼材に対する新保護貿易主義は構造的な問題であるため、しばらく続くだろう」と見通した。一部からは、米国と欧州連合の輸入規制が中国製の鉄鋼に照準を合わせていることから、比較的に関税賦課率が低い韓産製品が有利になる可能性もあるとされている。
にもかかわらず、各国が保護貿易の基調を引き続き強化すれば、対外依存度が高い国内企業としては、輸出にかなりの負担を抱えることになる。これまで、ポスコや現代製鉄などは冷延鋼板や熱延鋼板を無関税で米国に輸出してきた。 鉄鋼協会の関係者は「全体の鉄鋼輸出で米国が占める割合は13%と高くはないが、保護貿易の基調がほかの他の国にも広がっているのが懸念材料だ」と話した。
「産業のコメ」と呼ばれる鉄鋼は前・後方連関効果が非常に高い産業である。それだけに鉄鋼産業の危機は造船や自動車、電子、建設など他の産業にも否定的影響を及ぼすことから、懸念が高まっている。米国とEUの高い障壁に直面した安価な中国製品が国内市場に流入するのも国内メーカーの脅威になっている。今年6月、国内の鉄鋼輸入量は中国製品の輸入の急増により、昨年同月より31%も増えた。
韓国語原文入力: 2016-08-07 16:19