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アジア未来フォーラム「新興市場主導の世界経済繁栄論は誤り」

登録:2015-10-27 00:57 修正:2015-10-27 06:52
ジャワハルラール・ネルー大ジャヤティ・ゴーシュ教授
ジャワハルラール・ネルー大ジャヤティ・ゴーシュ教授=資料写真//ハンギョレ新聞社

金融収益を狙った資金に楽観的陶酔
韓国など新興国の発展力量は急速減退

 今世紀初め、中国やインドをはじめとする新興経済圏が台頭し、全世界経済を風靡してきた「新興市場主導の世界経済繁栄論」は“楽観的陶酔”に過ぎなかったという分析が出てきた。 28~29日、ソウル広壮洞のシェラトングランドウォーカーヒルで開かれる第6回ハンギョレ「アジア未来フォーラム」の基調演説を行うインドのジャワハルラール・ネルー大学ジャヤティ・ゴーシュ教授の診断だ。ゴーシュ教授は新興開発途上国経済を主に研究してきた世界的な発展経済学者だ。

 現在、新興市場(エマージングマーケット)は後退中だ。 指標が示している。 国際通貨基金(IMF)は今月初めに発表した経済展望で、今年の新興国全体経済成長率は昨年より悪いだろうと予測した。 新興国の成長率減退は最近5年間続いている。 微弱ながら改善の兆しを見せている米国など先進国経済と対照的だ。 資金も流出している。 昨年までは資本アカウントが純流入であったが、今年は流出額が流入額を上回る展望が優勢だ。 ゴーシュ教授は事前に出しておいた基調演説文で「新興国の資本アカウントが純流出に反転したことは最近20年で初めての出来事だ。米国の金利引き上げが現実化すれば、資本流出はより一層速まる公算が大きい」と話した。

新興国の資本流出入推移 //ハンギョレ新聞社

 何が起きているのだろうか。2008年のグローバル金融危機で先進国経済が停滞している間に、全世界の経済成長を牽引したのは新興市場だ。 規模も成長潜在力も大きい4カ国をまとめて「BRICs」(<ブリックス>ブラジル・ロシア・インド・中国)と賞賛した。BRICsに連動する多くの金融投資ファンド商品が韓国でも他国でも出てきて、一時は新興市場への資本純流入額が年間5千億ドルに達していた。 しかし現在、ブラジルとロシアは景気低迷を免れなくなり、中国の李克強首相も最近「経済成長率7%死守を言ったことはない」と今年の成長率下落を覚悟していることを明らかにした。

 要するに、現在の新興国経済は、信用供給の拡大・縮小を通じて景気循環を説明した経済学者ハイマン・ミンスキーの用語を借りれば“楽観的陶酔”から抜け出して、“急反転”に入った局面だ。 興味深いことは、相対的に資本主義の成熟度が低い新興国経済がどうして金融リスクと不安定性に急速に露出したかだ。 ジャヤティ・ゴーシュ教授はこの点に目を付けた。 ゴーシュ教授は現在新興国が直面している危機を理解するには、当初は新興国に集まった“期待”の実体を解剖しなければならないと話す。 韓国の経験に照らしてみても、低開発国が経済発展を企てるには初期資本の蓄積が必須だ。 そのためによく外国から資金を持ってくることになる。 韓国もやはり対外援助も受け、外債を発行し道路や鉄道など経済・社会的インフラを構築して経済成長の礎石とした。 しかし、2000年代以後に新興市場に急速に集まってきた資金は、その性格が違っていた。 工場を作る直接投資よりは主に金融部門に留まり、多様な資産間または国家間の収益率格差を通じて利益を得たとゴーシュ教授は指摘する。

 もちろん、新興国に入ってきた資金の相当部分が実物経済に投資されもした。 しかしこの投資は、人々の生活上の必要(有効需要)を反映するというよりは金融的差益を創り出す目的で行われた。 新興国が最近になって若干の時差を置いて共通して不動産および資産・証券市場の“バブルに依存したブーム”を体験しているのは偶然ではない。 2008年の経済危機で先進国が停滞している間に新興市場でのこのような資産バブルが世界経済を支える重要なつっかい棒の役割を果していた。

 これと関連してゴーシュ教授は、先進国で利益を得られなくなった資金が新興国にむやみに流入できた環境に注目しなければならないと一喝する。 外部的には前例のない“金融世界化”の流れが、内部的には外国投資家に資本市場を目一杯開放してきた資本アカウントの自由化がこれを後押ししたという話だ。 一連の金融自由化措置は、韓国をはじめとする新興国経済の体質を完全に変えた。 今や企業はあえて多くの人を雇用して商品を作るよりは、金融的技法を通じて容易に利益を得ようと考える。 折しも迫っていた世界経済大沈滞で実物部門の投資収益率が思わしくない状況では“金融”領域に進出することこそが個別資本としては合理的な選択でもあった。 金融の本領が資金仲介にあるだけに、金融的発展が経済の効率性を高めリスクを減らす役割もした。

 しかし、急速な金融化は韓国をはじめとする新興国経済に大きな雷管として登場した家計・企業の“負債急増”を派生させた。 実物的成長が伴わない状況で借金主導の新興国経済は明確な限界を持たざるをえない。 今や借金は経済の効率性向上と成長の産物というよりは、むしろ経済成長自体が借金に依存することになる。

 ゴーシュ教授はこれを「負債主導成長」(debt-driven growth)と呼ぶ。 経済の中心が金融側に傾いて、外からのショックにより外国人資金が突然大挙流出することも頻繁に起きる。 すなわち外部衝撃に対する新興経済の脆弱性も高まらざるをえない。まさにこれが世界経済を威嚇している“新興国発危機”の本質だとゴーシュ教授は診断する。 ゴーシュ教授は「経済成長をこのような形で引っ張って行けば、新興国には未来がない」として「新興国に重要なことは、経済の生産構造を高付加価値産業中心に再編して持続的な成長の土台を作ること」と話す。 過去10年余り続いてきた新興国経済の金融化、ひいてはそれを通じた一時的成長は、長期的な成長潜在力を蚕食する結果を生むという話だ。

キム・ゴンヒ・ハンギョレ経済社会研究院研究委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/714527.html 韓国語原文入力:2015-10-26 19:35
訳J.S(2611字)

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