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[記者手帳]“どん底”に向かう仕事の競争から抜け出すには

登録:2015-09-06 23:45 修正:2015-09-07 06:48

 私たち韓国人は本当に狂ったように仕事をする。いや、しなければならない。先月9日、経済協力開発機構(OECD)が発表した報告書によれば、韓国の労働者は年間2163時間(2013年基準)仕事をする。加盟国の中でメキシコ(2237時間)に次ぎ2番目に労働時間が長い。日本の1979年(2126時間)の水準よりも長い。

 家で夕食をとれる人生どころか、休暇のある人生も韓国人とは縁が薄い。オンライン旅行会社エクスペディア・ジャパンは2008年から世界主要国の18歳以上の就業者を対象に、有給休暇をどの程度使ったかを調査してきた。 昨年12月、2014年の調査結果(25カ国7855人を対象に8~9月調査)を発表し、エクスペディア・ジャパンは「日本が7年連続最下位に終止符を打った」と興奮した。最下位は年間14.6日の有給休暇のうち7日を使い、消化率が48%に終わった韓国だった。 ブラジル、フランス、スペインでは30日ある有給休暇を100%使いきり、オーストリアの就業者も25日ある休暇を全て使った。

 なぜそうなのか? 労働者は単位時間当りの報酬が少ないので、超過勤労でこれを埋め合わせようと考える。 雇い主は被雇用人の数を減らそうとする。

 労働改革が最大の話題になっている今、“労働時間短縮”問題が相対的にないがしろにされることは理解し難い。 政府はホコリをかぶった古いレコードのように“大企業投資活性化”に焦点を合わせている。 投資のために解雇を容易にして、賃金削減を簡単にできるようにして、派遣勤労の許容幅を広げて、期間制勤労者を使い続けられる期間を延ばそうという。 そんな風に賃金コストをさらに下げれば仕事が増える可能性は希薄になる一方だ。 企業収益が増えるだけだ。 反面、家計所得は減少し、将来に対する不安はより一層高まり、消費沈滞の谷はさらに深くなるだろう。

 解決法は皆が知っている。 一定時間を越える延長勤労と休日勤労に対する割り増し補償を“懲罰”的水準まで高め、労働時間を減らし雇用数を増やすことだ。 当面の最大交渉議題はこれでなければならない。

 それで問題が全て解決するわけではない。 なぜ韓国の労働者は貧しくなるのだろうか? 良い職場の正規職職場から押し出された人々の間での就職競争は極めて激しい。 2014年、韓国の65歳以上男性の42.1%が働いていて、女性も23.5%が仕事をしている。 雇用先進国に比べれば、他の年齢帯での雇用率は低いのに、唯一老人雇用率は男女共に2倍を超す。 年金所得が極めて少なく貧しいためだ。

 一度仕事を失った人は再充電したり、新たに技術を習得する余裕はない。 それまでの給与の半分に過ぎない失業給付があるとはいえ、僅か数カ月支給して終わりだ。 だから失業給付を受けている間にもどんな仕事でもしなければならない。 最低賃金を受け取れない労働者が多いのは、法に違反した雇い主に対する処罰が極めて軽い一方で、最低賃金未満の仕事でも我慢して耐えなければならない人が多いためでもある。

チョン・ナムグ経済部長 //ハンギョレ新聞社

 朴槿惠(パク・クネ)大統領は、大統領選候補時期に「すべての高齢者に所得に関係なく毎月20万ウォン(約2万円)を差し上げます」と公約した。 重要な約束だったが、すぐに発言を覆して大幅に後退した。 基礎年金の拡充が急務だ。 約束を守って、支給額をさらに増やしていかなければならない。 朴大統領は先月6日に対国民談話で「失業給付を現在の平均賃金の50%水準から60%に引き上げて、失業給付の給付期間も30日延長する」と明らかにした。 焼け石に水というだけでなく、それが労働市場改編の交渉カードだというので呆れる。 だが、望ましい方向であることは明らかだ。失業給付の水準を画期的に高めることだ。 そうしてこそ労働者どうしが繰り広げる「どん底に向かう競争」から抜け出すことができる。

チョン・ナムグ経済部長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/707616.html 韓国語原文入力:2015-09-06 18:22
訳J.S(1788字)

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