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特許の障壁を積み重ねる中国…現地韓国企業は非常事態

登録:2015-04-02 07:19 修正:2015-04-02 11:44
米国を抜き世界一の保有国に

昨年440万件出願、韓国の10倍
誰が出願したのかも把握できない
紛争になれば莫大な被害
簡単に出される実用新案
中国専門の弁理士不足も深刻

中国と韓国の特許出願。 (単位:件数)資料:特許庁 //ハンギョレ新聞社

 2010年、スマートフォンの指タッチを認識する手袋を中国のオンラインショッピングモール、アリババで売り始めた韓国の中小企業に、突然、特許権利侵害警告状が舞い込んだ。この手袋の「実用新案特許権利者」を主張する中国の3、4業者と個人が同時多発に送り付けたものだった。アリババから一方的な販売契約解約通知を受け“餌食”にされた状況を遅れて把握し、会社の法務チームを動員して特許権攻防に乗り出したが、ついに手袋の事業からの撤退に追い込まれた。対抗すべき中国側の相手が多すぎ、膨大な時間的・金銭的費用の負担を考慮し、正式な特許紛争審判を経ずに途中で諦めてしまったのだ。関連する実用新案特許を予め中国で出願しておかなかったのが禍根となったが、すでに手遅れだった。中国に進出した多くの韓国企業を威嚇する「中国特許リスク」が現実のリスクとして登場している。

 中国は特許出願件数で2011年に米国を抜き世界最多の特許保有国に浮上した。中国特許局(SIPO)の資料によれば、昨年中国で出願された知的財産権は、特許92万件、実用新案87万件、デザイン56万件、商標200万件に達する。すべて合わすと実に440万件だ。昨年11月までの累積で中国の特許出願は500万件(内国人74%、外国人26%)、特許登録は150万件を突破した。韓国に比べ中国の特許出願・登録が圧倒的で攻勢的であるのが一目瞭然だ。韓国の知的財産権(特許、実用新案、デザイン、商標)の出願は2013年に合計43万件。1948年以後2013年までの累積で特許・実用新案出願391万件、ここにデザインや商標まで合わせば出願784万件(登録累積387万件)だ。

 中国でとてつもない特許出願・登録の洪水が続くなか、いったい誰がどんな特許を出願したのかさえまともに把握するのが難しい状況にある。源泉特許技術の競争以前に圧倒的な特許物量そのものを基盤とする“特許の怪物”中国が恐るべき脅威として登場している。情報通信技術振興センターのイ・ジェファン首席は「豊富な資金がある中国企業・個人が外国で特許権を買いとっている。中国の爆発的な特許急増に対応するため、韓国企業が多数の関連技術特許を早く確保しておかなければ特許紛争に簡単に巻き込まれてしまう」と警鐘を鳴らす。

 手袋の事例が示すように、中国の特許リスクのなかでも当面の脅威は実用新案(製品形状・構造)にある。中国は簡単な審査だけで実用新案権を簡単に出願・登録させる「専利」(特許)制度を運営している。中国の実用新案出願が昨年87万件(韓国1万件)に達した事情には、こうした背景がある。韓国企業が昨年中国に出願した実用新案は254件に過ぎない。

 特許庁国際協力課イ・ジョンギ書記官は「実用新案は製品ごとに類似することもあり特許権侵害を訴え出ることが容易で、これを狙って金銭を得ようとする姑息な手段で、中国のあらゆる実用新案権保有者(企業・個人)が中国に進出した外国企業に特許侵害訴訟を手あたり次第に提起する可能性が濃厚だ」とした上で、「中国で実用新案紛争を経験している韓国の中小企業は中国の取引先から不利益を被るのを恐れ、韓国特許庁への申告を敬遠している」と付け加えた。

 もちろん量的な側面とは異なり、中国の源泉特許技術水準は韓国、米国、日本に比べまだ低い。中国の2013年の全特許出願のうち海外出願(韓国、米国、日本)の比重が2.5%に過ぎないほど低い事実がこれを裏付ける。

 しかし安心はできない。韓国知識財産仲介所のソン・サンヨプ所長は「どの雲から雨が降ってくるのか、戦争中ならどこに砲弾が落ちるかしれない。中国の膨大な特許保有件数は韓国企業にとってそんな状態にあると言える」と話す。その上、特許権紛争審判では源泉特許保有だけでなく関連特許をどれだけ多く保有しているかも判決に大きく影響する。中国の圧倒的な特許攻勢を警戒すべきもう一つの理由だ。中国特許の専門担当部署を置く大企業とは異なり、中小企業はほとんどが無防備状態だ。チシムIP&カンパニーのユ・ソヌォン代表弁理士は「韓国の開業弁理士約6000人のうち中国語が可能な中国専門家は10人ほどにしかならない。企業は中国特許の専門弁理士を探しているが絶対的な供給不足にある」と語った。

チョ・ケワン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2015-04-01 21:56

https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/685084.html 訳Y.B

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