ハンギョレ社会政策部で保健・福祉分野を担当するチェ・ソンジン記者です。近頃私が取材しているのはサウジ医療輸出の成果が大袈裟に誇張された“事件”です。朴槿恵（パク・クネ）大統領の中東歴訪の成果を検証する過程で露呈し、すぐ取材をかけました。
保健福祉部が4日に出した報道資料があります。朴槿恵大統領中東歴訪を機に韓サウジ製薬企業間で2000億ウォン（約220億円）規模の契約を結ぶ成果を成し遂げたとする内容でした。サウジに工場を作り韓国の医薬品も売ると2000億ウォン台になるというのです。注意深く読み進めると、以下の内容が目につきました。
＜JWホールディングスは今後5年間に抗癌剤などを輸出し、BCワールド製薬は鎮痛剤など医薬品をサウジのSPCを通して輸出する契約を締結した。特にJWホールディングスはサウジのスダイル地域に設立予定の韓国特化の製薬団地内に輸液工場を作る内容の了解覚書(MOU)を締結し、今後韓国の製薬産業が中東・北アフリカ市場を開拓する道を開くことになった＞
思わず首を傾げました。見覚えがある内容だったからです。さっそく福祉部HPで最近5年間の報道資料を検索しました。すぐ出てきました。わずか8カ月前の昨年6月25日に出された「韓サウジ特化製薬団地造成」に関する政府発表でした。
何かと言うと、福祉部とサウジ製薬会社のSPCが政府・企業間の了解覚書を結び、「サウジのスダイル地域に2億ドル(2000億ウォンと表記)規模の抗癌剤、輸液剤、複製薬、循環器治療剤工場など4つの製薬工場を5年以内に設立するプロジェクト」でした。そこへ数社の韓国製薬会社も参加していました。これを4日発表された報道資料と比べてみた私は苦笑いするほかありませんでした。結論から先に言うと、政府は殻だけ残った事業を大統領中東歴訪用に“リサイクル”したのでした。
昨年6月に福祉部とSPCが主導した韓サウジ製薬団地事業の中心は抗癌剤工場です。SPCから先に韓国政府に近づき要求したのが抗癌剤工場を作る韓国製薬会社の紹介だったのです。
日東製薬が話に飛びつきました。残った3工場のうち輸液剤工場はJWホールディングスが引き受けました。2社とも政府の斡旋でSPCと了解覚書を結ぶに至ります。他の2工場は名乗り出る国内製薬会社がなく、結局、「韓国の技術力で4工場の設立を推進する」とした政府の韓サウジ製薬団地事業は半分だけで出発することになったのです(これとは別にPCワールド製薬がSPCと医薬品輸出に関する了解覚書を結んだのが当時の発表に含まれています)。
問題はその半分さえまともに維持できなかったという事実です。日東製薬は今年の初めその事業から撤退しました。韓国政府が“2億ドル規模”と発表して始めた大風呂敷の韓サウジ製薬団地事業は、中心分野である抗癌剤工場設立計画は歪み、複製薬および循環器治療剤工場を引き受ける製薬会社も現れず、中心分野ではない輸液剤工場一つだけが残りました。それさえも了解覚書履行の段階です。
韓サウジ製薬団地事業はその後どうなったかと言うと、8カ月が過ぎ2000億ウォン規模の「サウジ医療輸出」となって華々しく登場します。朴大統領中東歴訪成果の話に戻ります。JWホールディングスの輸液剤工場設立計画は了解覚書を一度更新し、それだけで「1500億ウォン規模」として生まれ変わりました。飛車角を失っているというのに1500億ウォンというのですから驚きです。
これだけでは不足だと思ったのか、政府は先に紹介したようにJWホールディングスとBCワールド製薬がそれぞれSPCと医薬品輸出のための(了解覚書でなく)合計2件の正式契約を結んだと発表しました。明らかな嘘であり契約件数の誇張です。政府発表日の段階で、JWホールディングスはSPCと了解覚書以外に別途の正式契約を結んだ事実がないのです。
国内4製薬会社の医薬品輸出規模が500億ウォン台になるという政府の主張にも根拠がありません。輸出物量や個別品目の単価が合意されて初めて予想輸出額は出てきます。ところが4製薬会社側からは、了解覚書や契約書を作成して具体的物量や単価は決めていないと答えました。
韓国政府の態度は違います。無責任にもざっと「該当業者から聞いた」内容を朴大統領中東歴訪の成果に組み入れたのです。JWホールディングスの輸液剤工場1500億ウォンと医薬品輸出額500億ウォン、合わせて2000億ウォン台のサウジ医療輸出という発表は、こうしてなされたのです。少し長くなりましたが、これでもそのまま記事にしなければならないのでしょうか?
韓国語原文入力:2015.03.13 21:49
