世間の予想を裏切って三星(サムスン)家遺産相続紛争が1審で終わる可能性が高まっている。 去る1日イ・ゴンヒ(71)三星電子会長の完勝で終えられた1審宣告直後までイ・メンヒ(82)前第一肥料会長側では控訴を既定事実化していたが、わずか10日も過ぎずに雰囲気が急変している様子だ。 11日法曹界・財界などの話を総合すれば、イ・メンヒ前会長側は控訴放棄を検討しているとのことだ。 控訴は1審判決の2週間後である来る15日まで可能だ。
控訴放棄の動きは何より名分のためだ。 昨年2月イ・メンヒ前会長は「父親(イ・ビョンチョル元三星会長)が生前に第三者名義で信託した財産をイ・ゴンヒ会長が他の相続人に知らせずに単独名義に変更した」として訴訟を提起した。 イ・メンヒ前会長は昨年4月報道資料を通じて「(イ・ゴンヒ会長が)兄弟間に不和だけを加重させてきたし、常に自分の欲望だけを手にしてきた。 真実を明らかにして誤りを正すことが私の(訴訟の)目的だ」と明らかにした経緯がある。 秘密資金ではないかという疑いを受けたイ・ゴンヒ会長の借名財産を相続財産と認定した三星秘密資金特検結果が訴訟の理由になったという点で、‘不当な相続と継承を正す’ということが訴訟の名分だった。
1審判決直後イ・インヒ(85)ハンソルグループ顧問が乗り出して、こういう‘名分’が退色した。 イ・ビョンチョル前会長の長女であるイ・インヒ顧問は 「今回の判決で家が和やかになることを願う」と話した。 これはイ・ゴンヒ会長の完勝結果にイ・メンヒ前会長に承服しろという圧迫の性格が濃厚だ。 イ・インヒ顧問は昨年訴訟が提起された直後には「イ・ビョンチョル前会長が死亡した1987年に相続問題はすでにすべて整理された」という原則的立場を明らかにした経緯がある。 訴訟提起以後、イ・ゴンヒ会長が兄弟の中で初めてイ・インヒ顧問に米国ハワイで会い、現在までハンソルグループは三星グループとの取引が増え反射利益を得ているという評価を受けている。
1審判決を下したソ・チャンウォン ソウル中央地裁部長判事も「先代会長が残した遺志には一家が和合し和やかに生きていくよう願う意もなかっただろうかと考える」と判示した。 これは訴訟当事者全員に該当する話だが、敗訴した側が裁判結果を受け入れ、これ以上混乱を作るなという意とも解釈できる。 結局、1審訴訟結果が出たことにより当初訴訟を提起する時‘誤りを正す’という名分より‘家の和睦’という名分がより一層力を得ることになったわけだ。
名分だけでなく実利的次元でも控訴の可能性が低いという分析が少なくない。 CJグループが三星グループとの取引利益まで放棄しながら訴訟に乗り出したものの、控訴にともなう損失がより一層大きくなりうるためだ。 まず1審結果で相続財産と認められた部分は除斥期間満了で問い詰められなくなったし、残りは最初から相続財産ではないという判断が出てきた。 したがって控訴してみても実益が大きくないという事情もある。 巨額の印紙代も考慮の対象だ。 1審の印紙代だけで127億ウォンに達し、2審も180億ウォンを越え合計300億ウォン以上がかかることになる。 金額や出処が負担になるという指摘が出ている。
イ・ゴンヒ会長側は勝者の余裕を享受している。 昨年末、米国ハワイと日本東京に出て行き帰国して、今年1月には国内で新年祝賀会と誕生祝いを終えたイ・ゴンヒ会長は、1月11日ハワイに出て行った後1審宣告直前の1月22日から去る6日まで東京に留まった。 宣告結果は息子のイ・ジェヨン 三星電子副会長をはじめチェ・ジソン 三星未来戦略室長(副会長),チャン・ジュンギ室次長(社長),キム・チョンジュン戦略1チーム長(社長)等が東京を訪問して報告した。 イ会長は去る6日からはハワイに滞留中だ。 三星家をはじめとして財閥家の元老たちは寒い冬をハワイなど暖かいところで過す場合が多い。
キム・ジンチョル記者 nowhere@hani.co.kr