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[ニュースの深層]‘正常化’されたという双龍車平沢工場 覗いて見れば

登録:2013-01-15 22:51 修正:2013-01-16 00:32
2ラインは仕事が減って生活苦…新車開発も延期‘不安な未来’
双龍(サンヨン)自動車と企業労組が無給休職者455人を復職させることで合意した中で、11日午後 京畿(キョンギ)平沢(ピョンテク)七槐洞(チルゲドン)の双龍(サンヨン)車工場が見える金属労組双龍車支部鉄塔座込み場で一人の労働者が電話をしている。 平沢/キム・テヒョン記者 xogud555@hani.co.kr

 8日夜10時、自殺を図った双龍車職員リュ・某氏が働いていた所は平沢工場組立2ラインだった。 5年余り続いてきた‘双龍車事態’の渦中で起きた20件余りの自殺・死亡事件が皆平沢工場の‘垣根の外側’で起きたこととは違い異例的だった。 リュ氏の自殺企図はその間遮られていた平沢工場内部でも容易ならざる状況が続いているという事実が悲劇的にあらわれた事例だ。

■ 稼動率83%の意味

 15日、金融監督院と双龍車によれば、昨年の双龍車平沢工場稼動率(暫定)は83%(1交代基準)だ。 完成車生産工場で稼動率とは生産能力に比べた実際生産量を数値で表現したものだ。

 平沢工場の稼動率は25%(2交代基準)に過ぎなかった2009年以後、2010年67%、2011年85%等へ足早に上昇している。 上昇曲線を描いている稼動率は‘双龍車正常化’の根拠として認識されてきた。 だが‘平均’稼動率は錯覚を呼び起こす。 完成車工場は概して色々な生産ラインに分かれており、各ライン別に生産車種が異なる。 市場の反応が良い車種を生産するラインとそうでないライン間の稼動率格差が広がらざるを得ない構造だ。 双龍車ではその格差が非常に大きい。

 平沢工場には計3本の組立ラインがある。 この内、3ラインは仕事があふれ出て残業と特別勤務が繰り返されている。 3ラインで生産されるレクストンWは2012年初めに発売された車であり、去る一年間に5万台近くが生産された。 新車効果のおかげで稼動率が122%に達する。 反面、大型セダンであるチェアマンと大型スポーツ実用車(SUV)ロディウスが作られる2ラインは4時間勤務、4時間休息が繰り返されるほど正常な稼動がなされずにいる。 昨年のチェアマン販売量は2011年対比で40%ほど減った。 稼動率は37%で前年の半分程度に落ちた。

 自殺を図ったリュ氏が仕事をしたところもまさにその2ラインだ。 彼が残した遺書には次のような内容が書かれている。 「構造調整で給与が削減されて、適時に支給もされなくて…1年、2年 生活は窮乏し、子供たちの学業と病院費など足りない金を借りてまた借りながら暮らしても、米びつが空になり子供たちにラーメン食べさせたことも一度や二度ではなかったそうです。」

 コランドCが生産されている1ラインは2ラインよりは事情がやや良い。 2010年には稼動率が10%に過ぎなかったが、その年末にコランドCを生産し始め2011年75%、2012年89%まで上がってきた。

■ 内需市場の質的変化

 双龍車事態の開始点である2005年1月、中国上海自動車の吸収以後7年余りの間に、内需市場は質的に大きな変化を経た。 輸入ブランドの占有率が2%台(2004年基準)から10%台(2012年基準)へ5倍以上増えた。 現代・起亜車は2011年以後、2年連続で世界5大完成車メーカーに上がった。 去る7年間、双龍車の競争企業等が量的・質的に大きくなってしまったわけだ。

 このような内需市場の変化は双龍車だけでなく現代・起亜車を除く韓国GM・ルノー三星(サムスン)など残りの国産企業等にも莫大な影響を及ぼしている。 2000年代中盤に内需市場の10%を占めていたルノー三星は、昨年占有率が4.2%へ墜落した。 2011年には創社以来初めての赤字を記録した。 希望退職など人材構造調整も本格的に行われ、労・使葛藤を経ている。

 韓国GMは昨年2桁の占有率(10.2%)を記録したが、生産費増加などの影響で生産物量の一部を国外へ移転している。 すぐに主力モデルである準中型車クルーズ後続モデルは韓国では生産しないことが決定された。 この会社もやはり昨年2度にわたり希望退職申請を受け付けて‘ぜい肉’を剥がしている。 両社ともに米国のゼネラルモータースとルノー・日産という世界屈指の完成車メーカーが大株主であるが、変化した市場環境に限界を見せているわけだ。

 双龍車がスポーツ実用車(SUV)専門企業というイメージでプレミアを乗せて売った2000年代初・中盤とは異なる状況だ。 レクストンが最初に発売された当時に掲げた宣伝文句は 「大韓民国1%のための車」であった。 だが、このコピーは今は使われていない。 ドイツ系輸入ブランドの販売担当者は「消費者がレクストン=高級車というイメージを持つことを期待するのはナンセンス」と言い切った。 その上、昨年の12万台販売はレクストンの新車効果から起きたことなので、今年もこのような販売量を維持できるかどうかは不透明だ。 端的な例として2011年に出てきたコランドCはその翌年に販売量が10%ほど減った。 キム・ピルス大林(テリム)大教授(自動車学)は「内需市場で現代・起亜車を除けば双龍車のみならず全ての企業が持続可能性に疑問を抱かれている」と話した。

■ 研究・開発能力 低下・持続可能性 不確実

 完成車の長期成長可能性は研究・開発投資と技術力で垣間見ることができる。 金融監督院公示資料を見れば、双龍車が2005年に上海車に吸収される前には年間研究・開発費が1400億~1600億ウォン内外だったが、2009年に890億ウォンに急落して以来、2011年まで1000億ウォン内外で足踏みしている。 それも固定費に近い人件費が30%ほどを占める。 研究・開発投資が数年間事実上伸び悩んでいる。 現代車が中型セダン ソナタの完全変更モデルを作るのに投じる純粋費用が通常4000億~5000億ウォン水準に達する点を考慮すれば、双龍車の研究・開発投資は現状維持に汲々とした水準といえる。

 他の競争業者と比較してみれば双龍車の研究・開発費のみすぼらしさは際立っている。 2011年基準で現代車は1兆4400億ウォン、起亜車9900億ウォン、韓国GM6223億ウォン、ルノー三星1500億ウォンを注ぎ込んだ。 特に韓国GMとルノー三星の場合、研究・開発の相当部分を親グループのGMとルノーで進めているという点を考慮すれば、実際の研究・開発費はこれよりはるかに多い。 1000億ウォン内外の研究・開発費を執行する双龍車に競争力を備えた車を期待する方が難しいわけだ。

 実際、双龍車には研究・開発の決定版である新車発売計画が当面ない。 2011年10月ドイツのフランクフルト モーターショーで公開したコンセプトカー小型スポーツ実用車 XIV-1(プロジェクト名 X100)が次期新車に予定されてはいるが、開発遅延などにより2014年末あるいは2015年初めになって姿を現す予定だ。 双龍車が2~3年間は‘春の端境期’を過す展望が出てくる理由だ。 三星医療院集中治療室で治療を受けているリュ氏は遺書に「無残業3年、不規則だった給与より一層胸が痛むことは新車開発が一台もできない会社の現実です」と書いた。

 これについて双龍車側はこれからは状況が改善されるという慎重論を展開している。 2010年に双龍車を買収したインド のマヒンドラーグループが昨年10月国会で開かれた双龍車聴聞会で出した投資計画が希望の火種だということだ。 マヒンドラーは2016年までに1兆ウォン程度の追加投資を行う予定だ。 クァク・ヨンソプ双龍車広報チーム長は「昨年から研究・開発費が増え、現在進行中の新車開発研究プロジェクトだけで3ヶある。 X100発売以後、続いて新車級のスポーツ実用車の発売が予定されている」と話した。

キム・ギョンナク記者 sp96@hani.co.kr

https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/569856.html 韓国語原文入力:2013/01/15 20:51
訳J.S(3413字)

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