韓国人作家のハン・ガンさん(55)がノーベル文学賞受賞者に選ばれてから、今月10日でちょうど1年を迎える。昨年10月10日木曜日の夕方の発表から3日後の日曜日の正午までの間に、2カ所のインターネット書店を通じて売れたハン・ガンさんの単行本だけで50万部に達したことをはじめ、韓国文学・出版界に多くの変化が起きた。この1年を含め、韓国の読者が最も多く購入したハン・ガンさんの作品は何だろうか。
ハンギョレが出版社の創批、文学トンネ、文学と知性社を取材した結果、最も多く売れたハンさんの作品は『菜食主義者』であることが3日に確認された。先月までで214万部。続いて『少年が来る』(以上創批)が211万部、『別れを告げない』が97万部、『すべての、白いものたちの』(以上文学トンネ)が36万部を記録した。ハン・ガンさんの作品を最も多く出版した文学トンネの関係者は、ハンギョレに「『ギリシャ語の時間』20万部など、その他の図書まで含めて全部で190万部が売れた」と明らかにした。
ノーベル賞授賞以降、インターネット書店の教保文庫などの週単位の販売集計では『少年が来る』が『菜食主義者』をずっと上回っていたことに比べると、1年分の販売数の結果はやや異色だ。5・18光州民主化運動を扱った『少年が来る』は、昨年12月の「尹錫悦(ユン・ソクヨル)戒厳事態」とも結びつき「時宜性」が加わった。ハン・ガンさんは読者に『菜食主義者』が難しければ『少年が来る』を先に読むことを薦めてもいた。実際、今年上半期にこれらの小説がともに200万部に到達した頃には、『少年が来る』が『菜食主義者』の販売数を初めて逆転している。2007年に出版された連作小説『菜食主義者』は、2016年ブッカー賞国際部門受賞(当時のマン・ブッカー賞)とともに作家ハン・ガンに国際的な名声を与えた信号弾であり、決定打となったという点で特別な意味を持つ。『菜食主義者』は2007年の出版後、10年間で2万部売れていたなか、ブッカー賞受賞を機に販売数が爆増。当時ハン・ガンさんは、「2万部ならたくさん売れた」と言い、1年に2千人ほどの読者は「貴重な方々」なので彼らに対し「感謝の気持ちで書いてきた」とし、文学作品は読者になんらかの答えを提示するものだと考えると難しく思えるかもしれないが「問いだと考えればより面白く(どんな本でも)受け入れられる。そんなふうに少しだけ心を開いてくだされば」と語っていた。
ハン・ガンさんの唯一の詩集『引き出しに夕方をしまっておいた』(文学と知性社)はノーベル文学賞受賞後に30万部ほど売れた。現在70刷を記録中だ。通常、詩集の第一刷は1千~5千部だが、ハン・ガンさんの詩集は昨年末の増刷の際、第一刷が3万部。ノーベル賞以前は四半期に1300~1500部ほどが購入されていたに過ぎなかった詩集は、ノーベル賞直後の3カ月間だけで23万部売れている。