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「韓国市民が内乱を克服するのを見て無気力を振り払いました」

登録:2025-05-01 08:56 修正:2025-05-01 10:02
済州4・3平和賞を受賞の「ノーベル文学賞作家」スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチさん
済州4・3平和賞を受賞したスヴェトラーナ・アレクシエーヴィチさんが29日、済州市内のホテルで行われた4・3平和賞受賞者記者会見で語っている=ホ・ホジュン先任記者//ハンギョレ新聞社

 「ヤシの木の葉は成長し続けます。(扇のような)古い葉の上に新しい葉が生えるのを見ました。それを見ながら、過去の葉は何なのだろうか、そして今日私たちが新たに得た葉は何なのだろうかと考えました」

 ノーベル文学賞作家のスヴェトラーナ・アレクシエーヴィチさんは、4月28日に済州空港に降り立って最初に目にしたヤシの木を見て、このように考えたと語った。済州4・3平和賞授賞式に出席するために済州を訪れた同氏は、「幾重にも重なった葉は記憶であり、このような記憶は残念ながら苦しみによって伝えられている」、「私たちが過去を記憶すべきなのは、悪を目撃した時、一人で孤独に立ち向かうのではなく、市民の力で立ち向かうため」だと語った。

 元記者のアレクシエーヴィチさんは『戦争は女の顔をしていない』、『ボタン穴から見た戦争』、『亜鉛の少年たち』、『チェルノブイリの祈り』などの作品で、第2次世界大戦やソ連-アフガニスタン戦争を体験した女性、子ども、兵士、戦死者の家族の証言を記録してきた。歴史と文学、ジャーナリズムの境界を崩した「声の小説」という固有の作風を開拓したアレクシエーヴィチさんは、2015年にノーベル文学賞を受賞している。

トランプ、プーチンの影響力と戦争で
「悪が支配しているような催眠にかかり
抵抗できない無気力に陥っていたが」

12・3に立ち向かう市民を見て希望感じる

 29日に済州市内のホテルで行われた4・3平和賞受賞者記者会見で、アレクシエーヴィチさんは「米国のトランプ大統領とロシアのプーチン大統領が力を合わせて全世界に影響力を及ぼそうとしているのをみると、私も『悪が総体として全世界を支配している』という催眠にしょっちゅうかかる」として、悪に圧倒されたようにみえる民主主義に対する苦悩を打ち明けた。現在ドイツのベルリンに住んでいるが、ウクライナの攻撃基地として利用されている故郷ベラルーシの新聞を毎日読んでおり、「民主主義は実は抵抗する力もないものだったのか」という無気力に陥ったという。

 だが、市民の力で12・3内乱を克服した韓国を見て、「民主主義には不義に立ち向かう抵抗の力がある」ということを改めて思ったと語った。「今、私たちをつなぎとめるものは市民の抵抗とその共有だということを、韓国社会は全世界に非常によく示してくれました」

済州4・3平和賞受賞者のスヴェトラーナ・アレクシエーヴィチさんが4月29日、済州市内のホテルで演説している=ソ・ボミ記者//ハンギョレ新聞社

 韓国をはじめとする全世界的に極右勢力の扇動する暴力と嫌悪があふれている時代だが、同氏は「悪に直面し、後ずさりしてあきらめるのが早すぎるのではないかと考えてみるべきだ」と話した。唯一の突破口としては「恐怖心から驚いてあちこち動き回る群衆に合流するのではなく、(状況から)少し離れて判断し、考える力を育む」ことを勧めた。

 悪に適応しない日常の実践も強調した。独裁政権に立ち向かった2020年のベラルーシの市民革命では、同氏は70歳を超えていながら民主化デモに参加した。同氏は「朝起きてテレビをつけ、モーニングコーヒーを1杯飲みながら、『今日もロシア軍の爆撃があって19人が死亡、うち5人は子ども』だというニュースを見る」として、「それでも、私たちは生きている人格なので、『こんなことはおかしい』と考える抵抗の精神を思い起こし続けなければならない」と市民に訴えた。抵抗は外だけでなく内へも向かわなければならないということだ。「昨日はひどいニュースを聞いてぞっとした自分が、今日はひどいニュースを聞いた時にそれほどぞっとしていなければ、それはもう適応してしまったということです。自分自身を保存するための抵抗というのも重要です」

「民主主義には抵抗の力があるということ
韓国社会が全世界に示した」
悪に適応しない抵抗と実践を強調

 一方、一貫して市民の抵抗を強調してきたアレクシエーヴィチさんは、韓国の解放空間で不義に抵抗した末に、4・3事件で犠牲となった済州島民の痛みの歴史を記憶していた。2019年の初訪韓の際、韓国のある作家が「アカの島」だというレッテルを貼られて苦しんだ「赤い島」済州について教えてくれたという。「済州島は積極的な抵抗の精神を持つ神話の島です。こんにち、このような積極的な抵抗精神こそが私たちにとって非常に重要です。作家としてそれをどのように発展させ、ずる賢い悪に立ち向かえるのかについて、答えを探すために済州にやって来ました」

 この日、済州4・3平和賞を受賞した同氏は、30日に済州4・3平和公園を訪ね、犠牲者を追悼した。1日には済州文学館でブックトークを開催し、済州道民と交流する。

ソ・ボミ、ホ・ホジュン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/area/jeju/1195198.html韓国語原文入力:2025-04-30 19:05
訳D.K

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